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2020年2月18日 (火)

看護師の注意義務違反⇒損害賠償請求が認められた事例

東京地裁H31.1.10    

<事案>
X1(平成4年生まれ、手術を受けた当時20歳)が、Yの設置する病院(「本件病院」)において中顔面定型性に対する手術中に気管切開術を受けた後、一般病棟において、気管切開カニューレから痰の吸引を行う際に容態が急変⇒救急措置を受けた蘇生したものの、低酸素脳症による遷延性意識障害の後遺症を負った⇒X1及びその両親であるX2、X3が、
①前記後遺症が生じたのは、本件病院の看護師らに吸引を行う際に監視義務違反があり、また、
②本件病院の医師ら及び看護師らに急変後の救急措置義務違反及び気管切開術に関する説明義務違反があったため

Yに対して、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として、
X1については3億2022万2938円、
X2及びX3については、各300万円並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求めた。
 
<争点>
本件病院の医療従事者に過失があったか否か 
 
<判断> 
看護師が気管吸引時にアセスメント(患者の顔貌、呼吸数、胸郭の動き、皮膚の色、疼痛や呼吸苦の訴えの有無等を確認することを含む。)を実施し、監視することを怠った過失を肯定。 

①X1の状態は、痰により気道が狭窄又は閉塞する危険⇒気管吸引を実施する必要があった。
②日本呼吸療法医学会平成19年に作成した「気管吸引のガイドライン」の記載内容を前提にすると、本件病院の医療従事者は、気管吸引を実施しない状態であっても実施した状態であっても、患者が低酸素血症から低酸素脳症に至るリスクが相応にあることを考慮し、気道閉塞の有無を確認し、あるいは、気道閉塞に至らないようにアセスメントをするべき義務あった。
but
看護師P5、P6は、再吸引を実施するにあたり、1回目の吸引に協力的であったX1が、激しく抵抗しており、かつ、酸素飽和度計がはずれてSPO2(酸素飽和度)を知り得ず、呼吸困難と吸引への抵抗との区別がより困難になっている状況において、同人の顔貌を観察する、呼吸苦の有無を尋ねて観察するといったアセスメントが十分にできないことを踏まえ、
異常な事態であると判断して吸引を中止することも、応援を要請することもしなかった
看護師P5、P6には義務違反があった

・・・・の行動をとっていれば、X1が低酸素脳症に至ることはなく、X1に不可逆的な脳障害が生じることはなかった高度の蓋然性がある

看護師P5、P6の過失とX1の後遺障害である遷延性意識障害、低酸素脳症との間の因果関係も肯定
判例時報2427

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