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2020年2月19日 (水)

医師の注意義務違反との因果関係を否定。自己決定権侵害を肯定。

神戸地裁H31.4.9     
 
<事案>
XがYの設置する病院において頭部MRAの検査を受けた⇒診察を担当したP2医師が未破裂脳動脈瘤を見落とし、本件脳動脈瘤の治療に関する説明を受けられなかった⇒①直ちに本件脳動脈瘤に対する治療を受けられず、又は②経過観察及び本件脳動脈瘤に対する適時の治療を受けられなかった
⇒その後本件脳動脈瘤が破裂して、くも膜下出血を発症し、後遺障害を負った(予備的には、外科的治療を選択する機会を奪われた)
⇒P2医師の使用者であるYに対し、使用者責任又は債務不履行責任に基づき、損害賠償金7553万8979円及び遅延損害金の支払を求めた。
 
<争点>
P2医師が本件脳動脈瘤の存在を見落としたこととXがくも膜下出血を発症したこととの間に因果関係が存在するか?

P2医師に注意義務違反がなく、XがP2医師から本件脳動脈瘤の治療方法に関する説明を受けたとして、本件脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を発症し、後遺障害が生じなかったであろうことを是認し得る高度の蓋然性があったか

Xが直ちに外科的治療を選択し、又は、経過観察を続け、経過観察中に、本件脳動脈瘤に対する外科的治療を選択した高度の蓋然性があったかどうか 
 
<判断> 

①未破裂脳動脈瘤に関する医学的知見によれば、Xの本件脳動脈瘤のように無症候性の未破裂脳動脈瘤に対する外科的治療は、脳卒中治療ガイドラインにおいて、外科的治療の検討が推奨される一定の基準が定められていたものの、その推奨グレードは低い
②本件脳動脈瘤と同様に後交通動脈分岐部に動脈瘤が存在し、最大径が7ミリ未満の動脈瘤の年間破裂率は0.58%であり、Xの本件診察時の年齢からすると本件脳動脈瘤の破裂リスクは9.3%と考えられる

本件脳動脈瘤が発見され、適切な説明を受けたとしても、Xが、本件脳動脈瘤につき、保存的治療(経過観察)を選択した可能性も相当程度あった

外科的治療を選択する高度の蓋然性があったということはできない。 

脳動脈瘤の増大は時間の経過に対して一定の傾向を有するわけではなく、不規則・不連続に起こるもの⇒経過観察における画像検査時に、本件脳動脈瘤の増大が確認され、外科的治療が選択されたであろう高度の蓋然性があったとはいえない。

Xが経過観察中に外科的治療を選択した高度の蓋然性あったとはいえない。

P2医師の注意義務違反ないしYの債務不履行と本件脳動脈瘤の破裂によるXのくも膜下出血によって生じた結果発生との間には相当因果関係はない。
 

本件脳動脈瘤が発見されていた場合には、Xは、医師から、原価的治療と保存的治療(経過観察)のいずれを選択するかについて、これを熟慮の上判断することができるように、本件脳動脈瘤の破裂リスクと治療リスクなど、各治療方法について説明を受けることができていたはず。
but
P2医師が本件脳動脈瘤の存在を見落としていたことにより、外科的治療を選択する機会を奪われ、Xの自己決定権が侵害された

合計330万円の損害賠償を認めた。 
 
<解説> 
訴訟上の因果関係の立証は、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るもので足りる(最高裁)。 
以上の規範は、医師の注意義務違反と患者の死亡等の結果との間の因果関係についても適用される(最高裁)。

判例時報2427

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