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2020年2月20日 (木)

指定暴力団の構成員による殺人未遂⇒使用者責任・共同不法行為責任(肯定)

福岡地裁H31.4.23     
 
<事案>
ア事案:
指定暴力団の構成員に刃物で襲撃されたX1⇒組長ら幹部であるYらは前記構成員を指揮監督して本件暴力団の威力を利用した資金獲得活動に従事させており、本件襲撃はX1の親族に関わる工事の利権獲得を目的に行われたもの
⇒民法715条の使用者責任等に基づき、Yらに対して損害賠償を求めた。

イ事案:
本件暴力団の構成員にけん銃で襲撃された元警察官X2が、本件襲撃は本件暴力団の幹部であったYらが共謀して、前記構成員に指示して行わせたもの
⇒民法719条の共同不法行為責任に基づき、Yらに損害賠償を求めた。
 
<規定>
民法 第七一五条(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
 
<ア事件判断> 

(1)本件暴力団の指揮命令系統及びYらの地位
(2)X1とYらとの関係
(3)本件襲撃に至る経緯
(4)本件襲撃後のYらの言動
を事実認定した上で、
本件襲撃が本件暴力団の事業の執行として行われたものといえるか、及びYらが同事業の執行における使用者といえるか、をそれぞれ認定。


(1)本件暴力団の指揮命令系統及びYらの地位 
①本件暴力団は、総裁(組長)のY1を頂点とし、会長のY2のもとに、直若(Y2との間で擬制的親子関係を結んだ構成員)である下部組織の組長及び同下部組織に属する構成員から構成されるピラミッド型階層組織となっており、
②本件暴力団の決定事項は理事長のY3らによって構成される執行部によってなされて末端構成員まで周知されることとなっていた。
③本件暴力団には構成員から運営費が上納されていたが、その使途はY2が決定し、Y3ら試行部や下部組織の組長・構成員はその決定に従っていた。

◎ (2)X1とYらの関係
◎ (3)本件襲撃に至る経緯
◎ (4)本件襲撃後のYらの言動


(1)ないし(4)の認定
⇒本件襲撃は、会長のY2の指示の下、本件暴力団の資金獲得を目的としてKを畏怖させ、地元業界団体に関わる利権を得ようとしてなされたもの
本件暴力団の事業の執行として行われた


Yらが同事業の執行における使用者といえるか 
本件襲撃を指示した会長のY2だけでなく、総裁のY1や理事長のY3についてもい、使用者の立場にあったと認定。

Y1(総長):本件暴力団で唯一Y2よりも上位の地位にあり、Y2がK(X1の父)に対して「Y2自身の考えでなく本件暴力団の方針として」危害を加えると示唆
⇒Y1は、Y2を含めた構成員をその指示の下に資金獲得活動に従事させていたといえる。

Y3:Y2の意を受けるなどして執行部の決定事項を下部組織の末端構成員まで周知させており、また、実行犯の属する下部組織の組長として本件襲撃を行わせたものと推認される。
 
イ事件

(1)本件暴力団の指揮命令系統
(2)X2とYらとの関係
(3)本件襲撃に至る経緯
を事実認定し、本件襲撃についてYらの指示があったのかを認定。
 
(1)本件暴力団の指揮命令系統⇒ア事件と同じ
(2)X2とYらとの関係
(3)本件襲撃に至る経緯
 

(1)ないし(3)の認定に加え、
Y1やY2の決定の下、本件暴力団が警察の捜査を極力回避する方針を徹底しており、本件襲撃は同方針に反するものであるにもかかわらず、実行犯の属する下部組織の組長であるY3が叱責や懲罰を受けた形跡がない。

本件襲撃は、Y1が決定し、これを順次Y2、Y3、Y4に指示して行わせたものといえる

Yらの行為はいずれも不法行為に該当し、これらの行為が関連共同して行われている共同不法行為に該当
 
<解説>
両事件とも、本件各襲撃についてYらの指示があったことを立証する直接証拠がない中で、
①本件暴力団の指揮命令系統及びYらの地位、
②X1、X2とYらとの関係、
③本件襲撃に至る経緯等
の間接事実から、Yらの指示を認定

ア事件では、暴対法31条の2に基づく請求が、
イ事件では、民法715条に基づく請求及び暴対法31条の2に基づく請求が、
それぞれ選択的併合として提起。
いずれの請求も認容する余地があるものの、民法715条に基づく請求ないし民法719条に基づく請求の認容額を超えない⇒具体的な認定を行わなかった。

<規定>
暴対法 第三一条の二(威力利用資金獲得行為に係る損害賠償責任)
指定暴力団の代表者等は、当該指定暴力団の指定暴力団員が威力利用資金獲得行為(当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為をいう。以下この条において同じ。)を行うについて他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 当該代表者等が当該代表者等以外の当該指定暴力団の指定暴力団員が行う威力利用資金獲得行為により直接又は間接にその生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得ることがないとき。
二 当該威力利用資金獲得行為が、当該指定暴力団の指定暴力団員以外の者が専ら自己の利益を図る目的で当該指定暴力団員に対し強要したことによって行われたものであり、かつ、当該威力利用資金獲得行為が行われたことにつき当該代表者等に過失がないとき。
判例時報2427

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