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2020年2月 7日 (金)

著作権法41条の時事の事件の報道のための利用に当たると認められないとされた事例

東京地裁H31.4.16    
 
<事案>
Xが、未発表であったX創作に係る楽曲の一部をYらが共同してXの許諾なくテレビ番組内で放送⇒Xの公衆送信権及び公表権を侵害したと主張し、
Yらに対し、民法719条及び著作権法114条3項に基づき、
損害賠償金の連帯支払を求めた。 
 
<争点>
①本件楽曲の放送は時事の事件の報道のための利用(著作権法41条)に当たるか
②正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか
③公表権侵害による慰藉料の額 
 
<判断>  
●争点① 
Y主張:
本件楽曲は、視聴者がXによる覚せい剤使用の事実の真偽を判断するための材料であって、捜査機関がXを覚せい剤使用の疑いで逮捕する方針であるという事実の事件を構成するもの。
vs.
本件楽曲は、捜査機関がXが対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定であるという時事の事件が報道された際に放送されたものであるものの、本件楽曲はその主題となるものではないし、かかる時事の事件と直接の関連性を有するものでもない時事の事件を構成する著作物に当たるとは認められない

Y主張:
本件楽曲は、Xが執行猶予期間中に更生に向けて行っていた音楽活動の成果物であって、「Xが有罪判決後の執行猶予期間中に音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という時事の事件を構成するもの。
vs.
本件番組中におけるXの音楽活動に関する部分は、捜査機関がXに対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定であることを報道する中で、ごく短時間に、断片的に紹介する程度にとどまっており、本件楽曲の紹介自体も、Xがそれまでに創作した楽曲とは異なる印象を受けることを指摘するものにすぎず、それ以上にXの音楽活動に係る具体的な事実の紹介はない

同部分が「Xが有罪判決後の執行猶予期間中に音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という「時事の事件の報道」に当たるとはいえない。
 
●争点② 
Y主張:
本件楽曲の公表は、捜査機関が覚せい剤使用の疑いでXに対する逮捕状を請求する予定であることを報道する差し迫った状況において、有罪判決後のXの音楽活動や更生に向けた活動等を具体的に報道するととともに、Xによる覚せい剤使用の事実の真偽を判断するための材料を視聴者に対して提供することを目的として行われた
⇒著作権法41条の趣旨の準用、正当業務行為その他の事由により違法性が阻却される。
vs.
①本件番組ではXの音楽活動にごく簡単に触れたに止まり、
②具体的な事実の紹介もなく、
本件楽曲がXによる覚せい剤使用の事実の真偽を判断するための的確な材料であるとも認められない
⇒Yらの主張は前提を欠く。
 
●争点③
①Xが本件楽曲を創作した目的に即した時期に本件楽曲を公表する機会を失った
②本件楽曲が、捜査機関が覚せい剤使用の疑いでXに対する逮捕状を請求する予定であるという報道に関連して紹介された⇒その視聴者に対してXが本件楽曲を創作した目的とは相容れない印象を与えることとなった

公表権侵害に対する慰謝料の額は100万円が相当

Xは、本件番組において、Xが覚せい剤の使用により精神的に異常をきたしたかのような報道をされたことにより、精神的苦痛を受けた旨主張
vs.
本件請求はあくまで本件楽曲に係る公表権侵害を理由とするもの⇒公表権侵害の方法・態様として評価し得る事情の限度で考慮するにとどめるのが相当
 
<規定> 
著作権法 第四一条(時事の事件の報道のための利用)
写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる
 
<解説>
本件は著作者人格権のうち公表権のみが侵害された事例。
著作者人格権のうち氏名表示権や同一性保持権の侵害、あるいはこれらの権利と公表権の侵害について慰謝料を認めた裁判例はあるが、
公表権のみの侵害について慰謝料を認めた先例は見当たらない。
判例時報2426

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