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2020年2月 1日 (土)

冬季に凍結していた道路で大型トレーラーが滑走したため発生した交通事故⇒道路の設置又は管理の瑕疵が争われた事案

名古屋地裁H30.3.6    
 
<事案>
X1(運送会社)の従業員が運転していた大型牽引貨物自動車(大型トレーラー)が、Y(滋賀県)の管理する国道を走行中、凍結路面で滑走し、道路を塞ぐ格好で停車⇒後続車両6台が次々に衝突

X1が、Yに対し、道路の設置、管理に瑕疵があったと主張し、国賠法2条1項に基づき損害賠償を請求。 
 
<主張>
X1:
本件道路の設置又は管理に瑕疵⇒
主に
①本件装置の誤作動(降雪のない状態で散水を続けた)
②本件道路の排水能力の欠如
③グルーピング舗装は凍結防止策として不十分
 
<判断>
●最高裁判決等⇒
国賠法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠き、他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいう。
道路管理者は、自動車運転者に社会通念上要求される一般的な運行態度を前提として、予見し得る道路の危険性の有無や程度に応じた管理を行なえば足り、それにもかかわらず発生した危険については、管理者に設置又は管理上の瑕疵について責任を問うことはできない。

●本件融雪装置:
本件装置が誤作動することは考えにくいというYの主張を容れ、
①本件事故現場付近において降雪がない状態で本件装置が誤作動したとは認められない
②本件装置が、降雪が止んだ後も気温が1度になるまで散水を継続する点についても、路面凍結を防ぐため合理的なもの

本件装置の設置及び作動によって、本件道路が通常有すべき安全性を欠いているとはいえない。

●本件道路の排水能力:
①本件道路の排水能力は、本件装置による散水量よりも多量となる降雨流入量を想定して設置されている
②本件道路の傾斜度、水抜き穴の排水量、道路脇に設置されている排水路の排水能力について検討

排水能力の点でも本件道路は通常有すべき安全性を欠いていない。 

●グルービング舗装等:
降雪があった場合に本件装置が作動して散水すると、水分が付着して、道路の凍結状態を生ずるおそれがある
but
Yは、それを防止するため、排水機能を備えたグルービング舗装を行い、凍結防止剤を散布するなどの種々の対策を講じている
⇒事故防止対策は十分機能しており、グルービング舗装が劣化しているとはいえない。 
①冬季に平均気温が氷点下になる地域においても除雪方法として散水融雪装置によることも排除されていない
②本件道路では路面凍結による事故の頻度が高いとは言えない
③他にも散水融雪装置の設置より高額の費用を要するロードヒーティングを本件事故現場付近に優先して設置しなければならないほど、凍結による事故発生の危険が本件道路にあるとは認められない

ロードヒーティングによる凍結防止策をとっていないことをもって、本件道路が通常有すべき安全性を欠くものではない。
 
<解説>
国賠法2条1項の「瑕疵」について
最高裁:
国賠法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、
当該営造物の使用に関連して事故は発生し、被害が生じた場合において、当該営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは、その事故当時における当該営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべき

被害者の行動との関係における設置管理者の責任のあり方:
当該事故が営造物の通常の用法に即しない行動の結果生じた場合において、その営造物として本来具有すべき安全性に欠けることなく、前記行動が設置管理者において通常予測することのできないものであるとき
⇒当該事故は営造物の設置管理の瑕疵によるものであると言うことはできない。

最高裁H22.3.2:
道路の設置又は管理の瑕疵を判断する場面において、「そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり」と判示
予算的制約面も考慮要素とすることを肯定
判例時報2425

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