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2020年2月25日 (火)

クローン病患者の術後の出血性ショックについて病院側の責任を肯定した事例

福岡高裁H31.4.25    
 
<事案>
Y1大学の開設、運営する病院においてクローン病の治療のために回腸結腸吻合部切除術等の手術を受けたX1とその親族らが、
X1に術後の出血による出血性ショックが生じ、それに伴う低血圧によって脳に障害が残ったのは、執刀医であったY2、主治医であったY3、Y4、Y5、担当看護師であったY6の術後管理などに過失があったことによるもの⇒
不法行為に基づき、連帯して、
X1につき5億4995万6797円、X2及びX3につき各880万円、X4及びX5につき各1100万円、X6及びX7につき各550万円およびこれらに対する遅延損害金の各支払を求め、
X1が、選択的に、診療契約上の債務不履行により、Y1大学に対し、同様の金員の支払を求めた。
 
<争点>
本件手術の術後管理について主治医であるY3ないしY5に過失があったか。
その関係で重要なのは、X1について、本件手術後の出血及び出血性ショックを予見することが可能であったか。
 
<判断>

①X1はクローン病に罹患しているところ、クローン病の特徴の1つとして突然の大量腸管出血があり、ときには致死的出血に至る場合もある
②多くの場合、出血の徴候を把握することは極めて困難であり、出血源の同定すら困難な場合が少なくない
③クローン病の既手術例においては術後1%以上の割合で再出血が発生するとの報告もある。
④X1は、過去2回に及ぶクローン病の手術歴があり、本件手術の術中に6046mlもの出血があった。

Y3ないしY5らにおいて、本件手術の急性期にX1が出血を来すことを予見することは可能であったというべきであり、本件手術後の急性期においては、術後出血を念頭に置いた術後管理が求められていた
術後の出血により比較的急速に血液が失われると、重要な臓器や組織への血流が不足し、組織での酸素代謝が障害される出血性ショックに陥るおそれがあることを念頭に置いた術後管理を行う必要があった
 

具体的にどのような術後管理をすべきであったか?
初期の出血性ショックでは収縮期血圧の低下が見られない場合があり、脈拍数(心拍数)が120回を超える一方で、収縮期血圧が90以上の場合には、脈拍数(心拍数)や収縮期血圧の経時的変化をより綿密に確認し、中等度ショックを示す収縮期血圧の低下が見られた場合(90か少なくとも80を下回った場合)には、直ちに医師に連絡するように指示を行うべき。
but
①本件で行われた医師の指示は、収縮期血圧を80から140の間で維持し、80以下となった場合には、いったん昇圧剤であるイノバンを増量し、それでも70台を継続する場合には、主治医に連絡するという内容。
②かかる指示は、脈拍数(心拍数)について何ら触れておらず、それ以外に口頭での指示もされておらず、初期の出血性ショックでは収縮期血圧の低下を認めない場合もある。

その指示は不適切なものであった。
判例時報2428

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