手術後の準強制わいせつ被告事件が無罪とされた事案
東京地裁H31.2.20
<判断>
●Aに対して麻酔薬が投与された時刻、投与された麻酔薬の種類及び量、手術終了後のAの言動等を認定し、2名の専門家の証言に基づいて
①Aに対する手術は述語せん妄の危険因子とされる乳房手術であった
②Aには通常より多量の麻酔剤が投与された
③Aは手術に起因する疼痛を感じ、かつ、Aに対する鎮痛剤の投与は通常より少量であった
⇒
Aはせん妄状態に陥りやすい状態であった。
<判断>
●Aに対して麻酔薬が投与された時刻、投与された麻酔薬の種類及び量、手術終了後のAの言動等を認定し、2名の専門家の証言に基づいて
①Aに対する手術は述語せん妄の危険因子とされる乳房手術であった
②Aには通常より多量の麻酔剤が投与された
③Aは手術に起因する疼痛を感じ、かつ、Aに対する鎮痛剤の投与は通常より少量であった
⇒
Aはせん妄状態に陥りやすい状態であった。
麻酔覚醒時のAの動静等
⇒Aがせん妄状態に陥り、性的幻覚を体験していた可能性が相応にある。
このような幻覚は鮮明であって、訂正しがたい確信を持っているとされている
⇒Aの証言が具体的で迫真性に富み、Aが一貫した供述をしていることをもっていしても、Aの証言の信用性に疑義を差し挟む余地が広がる。
●Pの鑑定手法:
①Pはアミラーゼ試験の陽性反応の結果やリアルタイムPCRによるDNA定量検査の結果をワークシートに手書き記載しているところ、同ワークシートには消しゴムで消して上書きした痕や消しゴムで何らかの記載を消した痕が残されている。
②実験結果の検証可能性確保や刑事裁判に向けた証拠についての紛糾を避けるためにも鉛筆での記載はふさわしくない。
③ワークシートの記載の中には、日時が前後して記載されたことがうかがわれるものがある。
④Pは、鑑定時に本件付着物からDNAを抽出した液の残余を、検察官からDNA定量検査の結果が重要であることを知らされた後に廃棄しているところ、この行為は、DNA定量検査の結果の妥当性を端的に検証する手段を失わせたもの。
⇒
検査者としてのPの誠実さには疑念がある。
●Pが採用した方法はアミラーゼが微量でも含まれれば陽性反応を示す点で鋭敏度が高いとする専門家証言⇒唾液以外の体液に由来するアミラーゼにより陽性反応がもたらされる可能性も否定できない。
本件付着物から被告人1人分のみのDNA型が検出。
検察官請求の専門家証人:2名の混合DNA量の比率が100対1以上の場合⇒すべてのアレルにおいて1名分のDNA型しか顕出されない。
本件付着物から被告人1人分のみのDNA型が検出。
検察官請求の専門家証人:2名の混合DNA量の比率が100対1以上の場合⇒すべてのアレルにおいて1名分のDNA型しか顕出されない。
弁護人請求の専門家証人による実験⇒陰性コントロール対照資料である、なめられた理しなかった女性の乳首から採取した試料から女性のDNA型が検出されない場合もあった⇒本件付着物に含まれる被告人のDNA量にかかわらずA(被害者)のDNA型が検出されなかった可能性は残る。
本件付着物に含まれる被告人のDNA量が多量であるという点:
本件付着物に含まれる被告人のDNA量が多量であるという点:
検察官請求の専門証人:
本件付着物中の唾液の量が多量であり、それは会話による唾液の飛沫の付着などでは説明できない。
本件付着物中の唾液の量が多量であり、それは会話による唾液の飛沫の付着などでは説明できない。
弁護人請求の専門家証人:
唾液の量ではなく口腔内の細胞がどのくらい含まれているを考慮しなければならない。
口腔内細胞の塊が唾液の飛沫に含まれることはある。
⇒
口腔内細胞が含まれた唾液が会話により飛沫し、本件DNA定量検査の結果をもたらした可能性があることを排除することはできない。
口腔内細胞が含まれた唾液が会話により飛沫し、本件DNA定量検査の結果をもたらした可能性があることを排除することはできない。
⇒
被告人は無罪
判例時報2426
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