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2020年2月 2日 (日)

元県副知事による県職員採用試験における合格口利きの疑惑と、それについての名誉毀損が問題とされた事案

那覇地裁H30.12.11    
 
<事案>
元県副知事であるXによる教員及び学校事務職員採用試験における合格口利きの疑惑について、

X:Y(元県教育長)に対し、Yが本件口利きの事実を記載した内容虚偽の文書を作成して県に提出するとともに、当該事実に係る情報を新聞社に提供するなどしたために、自身の名誉が毀損された⇒不法行為に基づく損害賠償を求めた。 

Y:反訴として、Xが前記文書の内容が虚偽であるなどとする記者会見⇒自身の名誉が毀損された⇒不法行為に基づく損害賠償及び謝罪広告を求める。
前記文書の内容が虚偽であるとして本訴事件を提起し、Yを名誉毀損罪で告訴したXの各行為は、いずれも不法行為に当たる⇒不法行為に基づく損害賠償を求めた。
 
<争点>
①本件口利きの事実の真実性の有無
②X及びYによる名誉毀損行為の有無
③謝罪広告の要否
④Xによる本訴事件提起と告訴の違法性 
 
<判断>
本件口利きの事実は真実
Xの記者会見によってYの名誉が毀損⇒Xの不法行為責任を認める
but謝罪広告の必要性は否定
Xによる本訴事件の提起と告訴についても、著しく相当性を欠き違法⇒不法行為の成立を肯定 
 
<解説>
●本件口利きの事実の有無については、当事者であるX及びYの他にはこれを直接見聞きしたとされている者はいない
本件口利きについての直接証拠であるYの供述の信用性を子細に検討し、結論としてその信用性を肯定。 
 
●Xによる名誉毀損の有無 
Xは記者会見の場において、本件口利きの事実を記載したY作成の文書を虚偽であるとして、「Yの説明は真実ではなく作り話である」旨述べている。

本判決:
Xの言論の自由にも一定の配慮を示したものの、結論として、Xの行為は、一般人をしてYの品行・徳性について疑念を抱かせ得るものであり、違法な名誉毀損行為

判例:
自己の正当な利益を擁護するために、やむを得ず他人の名誉・信用を毀損した場合でも、かかる行為は、その他人の行った言動に対比して、その方法・内容において適当と認められる限度を超えない限りは違法性を欠くとされている。
 
●謝罪広告の要否 
Yの謝罪広告の請求は棄却。
民法723条の趣旨が、金銭による損害賠償のみではてん補できない、毀損された人格的価値に対する社会的、客観的評価を回復することを可能ならしめる点にある(最高裁)

謝罪広告の請求を認めるには、金銭による損害賠償のみではてん補できない程度に名誉が毀損されていることが必要
but
本件ではその程度に至るまでの名誉毀損は認められないとしたものと思われる。
 
●Xによる本訴事件提起及び告訴の違法性の有無 
判例上:
訴えの提起については、提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときには、不法行為を構成。

本判決は、同最判の趣旨を本訴事件提起のみならず告訴にも及ぼしたもの。
判例時報2425

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