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2020年2月 7日 (金)

投資名目で行われた美容機器付音響機器等の連鎖販売取引等

名古屋地裁H31.4.16     
 
<事案>
株式会社であるY1との間で、平成23年9月18日から同年12月17日にかけて4回にわたり、連鎖販売取引の一環として美容機器付音響機器等の売買契約を締結したXが、Y1、Y2(Y1の代取)及びY3(Y1の元取締役であり、Y1の会長を名乗っていた者)に対し、
主位的には不法行為又は会社法429条1項に基づき
予備的には不当利得(特定商取引法(法)40条1項に基づくクーリング・オフによる解除、詐欺、錯誤)又は使用者責任に基づき、
売買代金相当額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。 
 
<主張>
①Y1の事業(連鎖販売取引)が無限連鎖講の防止に関する法律で禁止されている無限連鎖講に当たる⇒4回の取引はいずれも無効
3回目及び4回目の取引は、Y1の従業員らからY1に対する投資である旨の説明を受け、出資のつもりで行ったもの⇒違法
②各取引の際に交付された書面には不備があり、法37条2項に規定する書面が交付されたとはいえないクーリング・オフによる解除が認められる。
 
<判断>
●①について 
本件で行われた連鎖販売取引自体は公序良俗に反しない
but
投資名目で行われた取引については、真実は連鎖販売取引(したがって、Xは新規会員を勧誘しなければ支出した金額を回収することができないこととなる)
これをY1に対する投資であるとして、あたかも毎月分配金が得られるかのように事実と異なる説明をし、Xを誤信させた点については違法
このような勧誘行為は会社ぐるみで行われていた⇒Y1については民法709条、Y2及びY3については共同不法行為の責任を認めた。
 
●②について 
クーリング・オフ制度の趣旨を踏まえ、契約書面には、連鎖販売取引の仕組みの基本である特定負担や特定利益について、最大もらさずすべての記載を尽くすことはもちろん、新規加入者においてその内容が理解できるように記載されていることが必要。
本件では、各取引の際に交付された書面には記載されていない特定利益が発生していたり、源泉所得税と事務手数料が控除されていたりするなど、
特定利益の内容をとして必要な事項が記載されていない上、
特定利益を計算するための前提である会員の資格取得方法に関する記載が不十分であるなど、
その記載から特定利益の内容を加入者が理解することは著しく困難であり、重大な不備に当たる

実質的に契約書面と評価できず、法40条1項の定めるクーリング・オフ期間が経過していない⇒クーリング・オフによる解除が認められる
 
●損害額 
Y1からXに支払われた金員を損益相殺として損害額から控除することは民法708条の趣旨に反し許されない
but
前記①で違法とは評価されなかった取引(2回目の取引)によってY1からXに支払われた金員(2万円)については、その分をXの損害額から控除するのが相当。
 
<解説> 
●契約書面(法37条2項)における特定利益の記載の程度 

特定利益:
「その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあっせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあっせんをする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部」(法33①)

契約書面においては、特定利益に関する事項、具体的には、
①特定利益の計算の方法、
②前記①のほか、特定利益の全部または一部が支払われないこととなる場合があるときは、その条件、
③前記①②のほか、特定利益の支払の時期及びその方法その他の特定利益の支払の条件
を記載しなければならない。
(特定商取引法施行規則29条5号、30条1項7号)
判例時報2426

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