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2020年2月10日 (月)

育児休業後のパート契約への変更、その後の解雇の効力・不法行為

東京地裁H30.7.5      
 
<事案>
原告が、
①第1子妊娠後、事務統括から降格され、第1子出産後の復帰時に時短勤務を希望したために有期のパート契約に変更されたことは、妊娠、出産に伴う不利益取扱いであること、
②同パート契約の締結により継続勤務年数が途切れたことを理由として有給休暇の申請を拒否されたため、年次有給休暇日数の確認を求める利益があること、
③第2子の出産のため産休・育休を取得することを申し出た際、被告会社の取締役であったY2から退職を強要され、行政の協力を得て産休及び育休を取得して職務復帰後、業務を取り上げられ、孤立させられたことが就労環境整備義務違反又は不法行為に該当すること、
④解雇又は雇止めは無効であり、不法行為にも該当すること
等を主張し、

①労働契約上の権利を有する地位の確認、
②解雇後の賃金、事務統括手当及び賞与の支払を求め、
③債務不履行(就労環境整備義務違反)又は不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料等の支払を求めた。
 
<判断> 
●年次有給休暇請求権の確認の利益 
①原告が既に退職扱いとされていること、
②原告が確認を求めている年次有給休暇の日数は、派遣社員として勤務していた期間も勤務年数として引き継がれていることを前提とするもの

原告の雇用契約上の地位の確認をしたのみでは年次有給休暇の日数を確定することができない
紛争を抜本的に解決するため、年次有給休暇請求権の確認の利益を認めるのが相当
 
●原告の第1子出産後の職務復帰の際に締結されたパート契約の有効性 
①第1子妊娠後の事務統括の引継は、降格には当たらない
育児のための所定労働時間の短縮申出等を理由として解雇等不利益な取扱いをすることは、育児介護法23条、23条の2に反して違法、無効
労働者と使用者との間の合意により労働条件が不利益に変更される場合でも、その合意は、労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者が当該合意をするに至った経緯及びその態様、当該合意に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等を総合考慮し、当該合意が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要

本件における労働条件の変更は、
労働時間に期間の定めが設けられ、従前の職位であった事務統括に任用されず、賞与の支給がされなくなったなど、原告に与えた不利益は大きい一方で、
Y2は、原告に対し、勤務時間を短くするためにはパート社員になるほかないと説明したのみであり、原告は、釈然としないながらも出産により他の社員に迷惑をかけているとの気兼ねからパート契約の締結に至った

原告の自由な意思によりパート契約を締結したとは認められない
パート契約は無効
 
●原告に対する退職扱いは解雇。
原告の第2子出産後の職務復帰からわずか4カ月後に、軽微な事実を根拠としてされた解雇は無効

不法行為について:
第1子出産後の復帰時に雇用形態を有期のパート契約に変更したこと、
第2子を妊娠した原告に対して退職を強要したこと
原告を解雇したこと
は、育児介護法や雇用均等法が禁止する不利益扱いに当たり、
不利益の内容や違法性の程度等に照らして不法行為を構成する。

事務統括手当額の経済的損失のほか、精神的苦痛に対する慰謝料の請求も認めた

判例時報2426

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