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2020年2月16日 (日)

7年に及ぶ別居期間で、離婚請求が否定された事案

東京高裁H30.12.5    
 
<事案>
X(夫)かわY(妻)に対する離婚請求事件 
平成5年8月に婚姻の届出、2子(B及びC)をもうけた。
XとYは、Xの実家で一人暮らしをしていた実父Aが高齢のため1人暮らしが困難⇒話し合いの上、新たに購入したマンションでAと同居してYが日常生活の面倒をみる。
Xは、平成23年6月頃から仕事の関係で単身赴任を開始⇒同年7月25日、Yに対し、電話で、離婚した旨を告げた。
この間、Y及びB・Cの将来を気にかけたAが、Xの同意を得ないまま、Yとの間で養子縁組をし、実家不動産の売却剰余金をYに贈与するとともに、生命保険緒保険金受取人をB・Cに変更。
Xは、平成23年11月に離婚調停申立て⇒不調⇒平成24年10月離婚訴訟提起⇒棄却。平成25年10月30日に控訴棄却で確定。
Xは、Yに対し離婚調停申立て⇒平成29年4月26日に不成立⇒離婚訴訟提起。
 
<原審>
Xの離婚請求を認容。

①原審の口頭弁論終結時までに別居期間は6年10か月が経過しており、Xの離婚意思は強固。
②AからYに対してされた出来事は、Xの理解を求めずに行われた⇒XのYに対する信頼を失わせるの十分。

Yに復縁の意思があるとしても、離婚関係は破綻し、その修復は極めて困難であり、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる。 
 
<判断>
原判決を取り消してXの請求を棄却。

有責事由のない家事専業者側が離婚に反対している場合には、離婚を求める配偶者は話し合いその他の方法により婚姻関係を維持するように一層強く努力すべき
それにもかかわらず、Xは、Yとの連絡、接触を極力避け、婚姻関係についてまともな話し合いをせず、婚姻関係維持の努力や別居中の家事専業者側への配慮を怠っている別居期間が長期に及ぶ場合であっても、直ちに婚姻を継続し難い重大な事由があると判断することは困難

別居期間が7年以上に及んでいることが婚姻を継続し難い重大な事由に当たる⇒離婚請求が信義誠実の原則に照らして許容されるかどうかが検討されなければならない。

その判断に際しては、
①離婚請求者の離婚原因発生についての寄与の有無、態度、程度、
②相手方配偶者の婚姻継続意思及び離婚請求者に対する感情、
③離婚を認めた場合の相手方配偶者の精神的、社会的、経済的状態及び夫婦間の子の
監護・教育・福祉の状況、
④別居後に形成された生活関係、
⑤時の経過がこれらの諸事情に与える影響
などを考慮すべき。

Yは、家事専業者であり離婚が認められた場合には居住環境を失うことにより、精神的苦境及び経済的窮地に陥るものと認められ、子への悪影響は必至
婚姻関係の危機を作出したのはXであって有責配偶者に準ずるような立場にあった

AからYに対してされた出来事がったとしても、離婚請求は信義誠実の原則に反する
 
<解説>
民法770条5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは1号から4号までの離婚原因を一般化、抽象化したもので、「婚姻を継続し難い重大な事由」とは婚姻関係が深刻に破綻し、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない場合を言い、その判断は、婚姻中における当事者の行為や態度、婚姻継続意思や子の有無、当事者の年齢、性格、健康状態、経歴、職業、資産状態など婚姻関係に現れた一切の事情が考慮される。(判例・通説) 

別居期間は「婚姻を継続し難い重大な事由」の重要な判断事情の1つではあるが、別居期間は同居期間との関係でも期間の長短が問題となる⇒一概に破綻事由を認めうる年数を定めることはできない

本判決:別居期間には触れつつも、離婚請求者が婚姻関係維持の努力や別居中の他方配偶者への配慮を怠ったことをもって、婚姻を継続し難い重大案事由があるというのは困難であると判断。
判例時報2427

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