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2020年1月 7日 (火)

地目を宅地と認定するなどして算出された当該土地の登録価格を適法とした原審の判断に違法があるとされた事案

最高裁H31.4.9    
 
<事案>
三重県志摩市所在の隣接する2筆の土地に係る固定資産税の納税義務者であるXが、本件各土地につき、志摩市長により決定され土地課税台帳に登録された平成27年度の価格を不服として志摩市固定資産評価審査委員会に対し審査の申出⇒これを棄却する旨の決定⇒志摩市を相手に、その取消しを求めた。
 
<争点>
調整池の用に供されている本件各土地について、その地目を宅地と認定するなどして算出された本件各登録価格の適否。 
 
<原審>
本件各土地は、本件商業施設が適法に開発許可を受け、同施設が有事のための洪水調整機能を維持して安全に運営を継続するために必要なものであり、宅地である本件商業施設の敷地を維持するために必要な土地
⇒本件土地の地目をいずれも宅地と認定した上で決定された本件各登録価格は適法。 
 
<判断>
固定資産評価基準における土地の地目のうち宅地とは、建物の敷地のほか、これを維持し、又はその効用を果たすために必要な土地をも含む

本件各土地は、本件商業施設に係る開発行為に伴い調整池の用に供することとされ、排水調整の必要がなくなるまでその機能を保持することが前記開発行為の許可条件となっているが、
開発許可に前記条件が付されていることは、本件各土地の用途が制限を受けることを意味するにとどまり、また、
開発行為に伴う洪水調整の方法として設けられた調整池の機能は、一般的には、開発の対象となる地区への降水を一時的に貯留して下流域の洪水を防止することにあると考えられる

前記条件に従って調整池の用に供されていることから直ちに、本件各土地が本件商業施設の敷地を維持し、又はその効用を果たすために必要な土地であると評価することはできない

原判決を破棄し、本件を原審に差し戻した。 
 
<解説>
●「宅地」の意義 
評価基準:
土地の評価は地目の別に、それぞれ定める評価方法によって行う。
地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定する旨を規定。
but
各地目の具体的な意義については明示されていない。 

固定資産評価基準解説:
「宅地」について、不動産登記事務取扱手続準則68条3号を引用して、
建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地をいうとした上、建物の敷地のみに限定されず、建物の風致又は風水防に要する樹木の生育地、建物に附随する庭園、通路等のように、宅地に便益を与え、又は宅地の効用に必要な土地については、宅地に含まれる

本判決:
建物の敷地のほか、これを維持し、又はその効用を果たすために必要な土地をも含む」と説示。
~従前の一般的理解に沿うもの。
 
●本件各土地の地目の認定等
原判決:
本件土地が調整池としての調整機能を保持することが本件商業施設に係る開発行為の許可条件となっている。

本件各土地は、本件商業施設が適法に開発許可を受け、同施設が有事のための洪水調整機能を維持して安全に運営を継続するために必要なものであり、本件商業施設の敷地を維持するために必要な土地と認められる。

①その調整機能を保持することが前記許可条件となっているという法的な側面と、
②これが洪水調整機能を有することで本件商業施設の安全な運営の継続に資するという物理的な側面
に着目。
vs.
①の点⇒住宅が立ち並ぶ一体とは離れた一角に独立して調整池が設置されているるような場合でも、調整池の設置が宅地開発の許可条件となっていることを理由にその地目を宅地と認定し得ることになりかねないが、それは、相当ではない。
②の点について、本件各土地が調整池として洪水調整機能を有することが、これより高い位置にある本件商業施設の敷地における洪水を防止するという関係にあると直ちにいうことはできない。

判例時報2423

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