政務調査費からの支出が一部違法とされた事案
金沢地裁 H31.1.21
<事案>
金沢市議会議員17名が、平成26年度に金沢市から交付を受けた政務活動費について使途規準に違反する違法な支出を行った⇒本件各議員は同市に対して支出額に相当する金員を不当利得として返還すべきであるのに、同市の執行機関(市長)であるYはその返還請求を違法に怠っている
⇒同市の住民であるXが、地自法242条の2第1項4号に基づき、Yに対し、本件各議員に対して不当利得の返還請求すべきことを求めた。
<判断>
議員が、金沢市議会政務活動費の交付に関する条例(「本件条例」)において政務活動費を充てることができるとされる経費の範囲に含まれない経費に同政務活動費を支出⇒当該議員は、金沢市に対し、当該支出に相当する不当利得の返還義務を負うことになる。
本件各支出が使途基準に合致しないことについては、不当利得返還請求権の存在を主張するXにおいて主張立証すべき。
but
Xにおいて本件各議員による具体的な政務活動費の支出が使途規準に合致しない違法な支出であることを推認させる一般的・外形的事実を主張立証した場合には、Y又は本件各議員の側において当該支出が適法な支出であることについて反証を行わない限り、使途規準に合致しない支出であるとの立証があったと解するのが相当。
本件各議員のうち3名の議員の市政報告書の作成及び発送に係る費用の支出(政務活動費を充てることができる経費として収支報告書等に計上した経費)の一部が使途基準に合致しない
⇒当該支出から、同各議員が、政務活動に要する経費に充てている政務活動費以外の資金(自己資金等)を控除した残額について、同各議員の不当利得返還義務を肯定。
<解説>
政務活動費の支出が使途基準に合致したものであるか否かに関する、主張立証責任の所在については、 これを直接判示した最高裁判例は見当たらない。
but
本件と同様の多くの裁判例。
<事案>
金沢市議会議員17名が、平成26年度に金沢市から交付を受けた政務活動費について使途規準に違反する違法な支出を行った⇒本件各議員は同市に対して支出額に相当する金員を不当利得として返還すべきであるのに、同市の執行機関(市長)であるYはその返還請求を違法に怠っている
⇒同市の住民であるXが、地自法242条の2第1項4号に基づき、Yに対し、本件各議員に対して不当利得の返還請求すべきことを求めた。
<判断>
議員が、金沢市議会政務活動費の交付に関する条例(「本件条例」)において政務活動費を充てることができるとされる経費の範囲に含まれない経費に同政務活動費を支出⇒当該議員は、金沢市に対し、当該支出に相当する不当利得の返還義務を負うことになる。
本件各支出が使途基準に合致しないことについては、不当利得返還請求権の存在を主張するXにおいて主張立証すべき。
but
Xにおいて本件各議員による具体的な政務活動費の支出が使途規準に合致しない違法な支出であることを推認させる一般的・外形的事実を主張立証した場合には、Y又は本件各議員の側において当該支出が適法な支出であることについて反証を行わない限り、使途規準に合致しない支出であるとの立証があったと解するのが相当。
本件各議員のうち3名の議員の市政報告書の作成及び発送に係る費用の支出(政務活動費を充てることができる経費として収支報告書等に計上した経費)の一部が使途基準に合致しない
⇒当該支出から、同各議員が、政務活動に要する経費に充てている政務活動費以外の資金(自己資金等)を控除した残額について、同各議員の不当利得返還義務を肯定。
<解説>
政務活動費の支出が使途基準に合致したものであるか否かに関する、主張立証責任の所在については、 これを直接判示した最高裁判例は見当たらない。
but
本件と同様の多くの裁判例。
広報費の支出、
議員が行う活動が、全体としては条例等で定める広報に関する活動に該当する場合であっても、その広報の具体的な内容な形式において、議員自身の宣伝を主たる目的とするとみられる部分が含まれている場合
⇒その部分の全体に占める割合に応じて、使途基準に合致しない支出であることを推認させる一般的・外形的事実の立証があったものといえる。
最高裁H30.11.16:
神奈川県における政務活動費等の支出に係る住民訴訟において、同県の条例の定めの下においては、政務活動費等の収支報告書に実際には存在しない支出が計上されていたとしても、当該年度において、使途基準に適合する収支報告書上の支出の総額が交付額を下回ることとならない限り、政務活動費等の交付を受けた会派又は議員が、政務活動費等を法律上の原因なく利得したということはできない。
⇒具体的な条例の定めを踏まえて収支報告書に計上された違法支出の額と不当利得が成立する範囲との関係について判示。
判例時報2422
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