« 銀行に対する被相続人の保有個人データの開示請求 | トップページ | 「交通事故で軽症の外傷性視神経症を発症⇒左眼失明⇒糖尿病増悪で右足膝下切断」について相当因果関係を肯定した事案 »

2020年1月 1日 (水)

所持品検査及び自宅への立ち入りについての国賠請求事案

東京高裁H30.4.26    
 
<事案>
警職法に基づきXに対して行われた千葉県警の警察官による保護、所持品検査及びX宅への立入が違法⇒Xが千葉県に対して損害賠償を求めた。
 
<原審>
所持品検査について:
①自傷他害を防止するためであればXのかばんを保護室の外に持ち出せば足りる
②警察官はレンタカーの左サイドミラーのミラー部分がなくなっていることを確認し、そのためXが事故に遭った可能性が高く、凶器を使用して殺人を犯した疑いが深まっていたとはいえない

かばんの中身を1つずつ取り出して確認することは相当性を欠き違法な行為。 

X宅の立入り:
①Xが事故に遭った可能性が高く殺人を犯した疑いが深まっていない状況にあり、
②元妻等も無事であることが確認できていた

殺人の嫌疑は相当程度軽減していたというべきで、危害が切迫していたとはいえず、違法な行為。
 
<規定>
警職法 第三条(保護)
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して次の各号のいずれかに該当することが明らかであり、かつ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、取りあえず警察署、病院、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。
一 精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれのある者
二 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)

警職法 第四条(避難等の措置)
警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発、狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等危険な事態がある場合においては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、若しくは避難させ、又はその場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。
2前項の規定により警察官がとつた処置については、順序を経て所属の公安委員会にこれを報告しなければならない。この場合において、公安委員会は他の公の機関に対し、その後の処置について必要と認める協力を求めるため適当な措置をとらなければならない。
 
<判断> 
●所持品検査: 
警職法3条による保護が一時的かつ応急的な措置
被保護者の身元や引取方を確認するため、具体的状況の下で必要とされる限度において相当と認められる方法によることは、被保護者が精神錯乱の状態にあるため有効に承諾が得られない場合であっても、保護の目的にかなう限り許容される
①Xが保護されたのは、X自ら110番通報をして「人を殺した」と述べたことを契機としている
②Xは終始異常に興奮して精神錯乱の状態にあり、激しく抵抗して暴れていた

自傷他害の危険を防止するため所持品中の危険物の有無等を確認する必要がある
かばんの中を一瞥するだけでは危険物の有無を確認することは困難⇒中身を1つずつ取り出して確認する方法は相当
 
●X宅への立入り: 
警職法4条1項に規定する「危険な事態」があるか否かの判断は、警察官が現場で認めた事実のほか、その職業的な専門知識や経験に基づいて行うことができる。

この判断は客観的に合理性が認められるものでなければならない。
but
①Xのそれまでの言動やXが精神錯乱状態にあること、過去の警察相談から、重大犯罪に巻き込まれるなどした被害者等がX宅にいる可能性は否定できなかった
②X宅は施錠されておらず室内の電気が点灯して扇風機が回っていたことから、警察官は重大事件等に巻き込まれた被害者等がいる可能性があると考えた
③靴を脱いで室内に上がり、救助を要する被害者等がいないことを目視により確認して短時間で退室するなどしている

被害者等の救助という目的を達成するためにやむを得ない相当な方法で行われたもので、違法性があるとは認められない
 
<解説>
最高裁昭和53.6.20:
職務質問に伴う所持品検査について「所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的事情のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容されるもの」 

警職法3条による保護に伴う所持品検査においても、前記と同様の趣旨から、被保護者を保護するに至った事情などを考慮の上、許されるであろう。
警察官は、危険な事情がある場合においては、危険防止のため通常必要と認められる措置を講ずることができるが(職質法4条1項)、「危険な事態」の判断は、客観的に合理性の認められるものでなければならない。
判例時報2422

|

« 銀行に対する被相続人の保有個人データの開示請求 | トップページ | 「交通事故で軽症の外傷性視神経症を発症⇒左眼失明⇒糖尿病増悪で右足膝下切断」について相当因果関係を肯定した事案 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 銀行に対する被相続人の保有個人データの開示請求 | トップページ | 「交通事故で軽症の外傷性視神経症を発症⇒左眼失明⇒糖尿病増悪で右足膝下切断」について相当因果関係を肯定した事案 »