検察官の勾留請求を身体拘束の時間制限を逸脱する違法なものと認定した事案
京都地裁H30.10.25
<事案>
勾留請求却下⇒準抗告の事案
平成30年9月11日、本件と被疑者を異にする同種被疑事実で逮捕、勾留及び勾留延長⇒同年10月2日処分保留により釈放
同日、本件と被疑者を異にする同種被疑事実で逮捕され、勾留及び勾留延長を経た上で、同月23日処分保留により釈放。
同日、本件被疑事実で逮捕。
<判断>
本件勾留請求は、実質的には身体拘束の時間的制限を逸脱する違法なもの⇒勾留請求を却下した原裁判は、結論において正当。
①前2件と本件の被疑事実を比較し、被害者は異なるものの、共犯者は同じであり、犯行の構造自体は同一。
②証拠もその多くが共通しており、捜査対象はほぼ同一。
③被疑者の関与をうかがわせる証拠物や共犯者供述が、当初の逮捕以前から捜査機関により入手されている。
⇒
前2件の逮捕・勾留期間中に、本件被疑事実の捜査を行うことが困難であった事情はうかがえない。
<解説>
●勾留に関して
事件単位説
⇒複数の被疑事実が存在するときには、長期の身柄拘束を可能にする。
⇒
実質上1つの事実と考えられるときに
①捜査機関に課される「同時処理の義務」や、
②捜査機関がその事件全体の捜査に掛けることのできる「制限時間」など
~
厳格に制限時間を規定する刑訴法の趣旨からして、実質同一の事件であるときには、事件単位の原則からこれを同一事件として捜査を尽くすべきであり、それを逸脱するような身柄拘束を許さないとする考え方。
<事案>
勾留請求却下⇒準抗告の事案
平成30年9月11日、本件と被疑者を異にする同種被疑事実で逮捕、勾留及び勾留延長⇒同年10月2日処分保留により釈放
同日、本件と被疑者を異にする同種被疑事実で逮捕され、勾留及び勾留延長を経た上で、同月23日処分保留により釈放。
同日、本件被疑事実で逮捕。
<判断>
本件勾留請求は、実質的には身体拘束の時間的制限を逸脱する違法なもの⇒勾留請求を却下した原裁判は、結論において正当。
①前2件と本件の被疑事実を比較し、被害者は異なるものの、共犯者は同じであり、犯行の構造自体は同一。
②証拠もその多くが共通しており、捜査対象はほぼ同一。
③被疑者の関与をうかがわせる証拠物や共犯者供述が、当初の逮捕以前から捜査機関により入手されている。
⇒
前2件の逮捕・勾留期間中に、本件被疑事実の捜査を行うことが困難であった事情はうかがえない。
<解説>
●勾留に関して
事件単位説
⇒複数の被疑事実が存在するときには、長期の身柄拘束を可能にする。
⇒
実質上1つの事実と考えられるときに
①捜査機関に課される「同時処理の義務」や、
②捜査機関がその事件全体の捜査に掛けることのできる「制限時間」など
~
厳格に制限時間を規定する刑訴法の趣旨からして、実質同一の事件であるときには、事件単位の原則からこれを同一事件として捜査を尽くすべきであり、それを逸脱するような身柄拘束を許さないとする考え方。
●最高裁H30.10.31:
勾留を認めた原裁判を取り消した準抗告決定に対する検察官からの特別抗告に対するもの。
いまだ刑訴法411条を準用すべきものとまでは認められないとして、抗告を棄却。
but
その理由中において、
原決定が当該勾留の被疑事実である大麻の営利目的輸入と、当該勾留請求に先立つ交流の被疑事実である規制薬物として取得した大麻の代替物の所持との実質的同一性や、両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等のみから、前件の勾留中に本件勾留の被疑事実に関する捜査の同時処理が義務付けられていた旨説示した点は是認できない
との判断。
三浦裁判官の補足意見:
本件と前件の被疑事実が一連のもので密接に関連するとはいえ、
併合罪の関係にあり、
両事実の捜査に重なり合う部分があるといっても、
本件の被疑事実の罪体や重要な情状事実については、前件のそれらより相当幅広い捜査を行う必要がある。
⇒
原決定が
「両事実の実質的同一性」や「両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等」のみから捜査機関が前件の被疑事実による勾留中に同時処理を義務付けられていた旨を説示した点は、刑訴法60条1項、426条の解釈適用を誤ったもの。
~
問題は、複数の事実が関連し合う具体的事案において、どの程度の時間内においてすべての捜査を完了すべきか、ということであり、もろもろの要素を検討してそれを適切に判断していくところにある。
判例時報2423
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