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2020年1月13日 (月)

被告(東京電力)の従業員とその家族による原発事故に起因する損害賠償請求の事案

福島地裁いわき支部H31.2.19    
 
<事案>
Xらが、Y(東京電力)に対し、平成23年3月11日の福島第一原発事故により被案を余儀なくされた⇒原賠法3条1項に基づき、慰謝料、避難帰宅費用及びこれに対する本件事故の日から支払済みまで民法所定年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた。 
 
<争点>
①Xらの被侵害利益(X1がYの従業員、X2らはX1の家族であり、包括的に配転命令を受け入れている点をどのようにみるか。)
②本件事故との相当因果関係が認められる期間と損害額 
 
<判断>
●被侵害利益 
本件事故時におけるXらの居住態様Xらが有する大熊町内での居住継続への期待やこれに伴う社会生活上の便益などは、住居を所有するなどして大熊町内で居住していた者と同程度と認めるのが相当であり、法的保護に値する利益というべき。

XらはYの従業員及びその家族として包括的な配転命令権の行使を許容していた旨のYの主張:
同命令権によりXらには大熊町に居住し、その意思に反して転居させられないことについての法的利益がないものと主張する趣旨
vs.
雇用契約の当事者ではないX2らに対しては、同命令権の行使により一方的に転居を命じられるものではなく
X1についても、本件事故の時点でX1が大熊町からの転居を伴う異動が予定されておらずそのような異動を命ずる業務上の必要性を基礎付ける事情も見当たらない

本件事故の時点で雇用契約に基づいてX1が大熊町からの転居を伴う異動をする可能性が現実化していたとはいえず、Yの主張は採用できない。
 
●本件事故との相当因果関係が認められる期間と損害額 
◎ 本件配置転換や埼玉県内に自宅を建築して居住を開始したといった事情は、本件事故とXらが大熊町内に居住できなかったこととの相当因果関係を否定する事情には当たらない
Xらが本件事故の発生から平成29年5月31日までの間大熊町に居住できず、前記の居住への期待、利益が侵害されたことと本件事故との間には相当因果関係が認められる

Xらが主張する慰謝料は、本件事故の発生によって住み慣れた地から避難することを余儀なくされ、日常生活が著しく阻害されたことによる精神的損害を原因とするものであり、
かかる精神的損害は、実際の避難の有無や避難終了時期を問わず、本件事故発生時に一定の内容として生じると解される。

①Xらは、大熊町を生活の本拠としていた者と同様の生活を営むに至っていたところ、本件事故によって住み慣れた地から避難を余儀なくされるなど日常生活阻害の程度は重大
中間指針における帰還困難区域に居住していた者に対する精神的損害の金銭評価

本件事故によってXらに生じた精神的損害の額は、1人当たり1450万円を下らないと認めるのが相当。 
 
<解説>
福島地裁H27.9.15:
Yの従業員であり、本件事故当時、大熊町に居住していた者が本件事故のため避難を余儀なくされるなどしたと主張して、Yに対し原賠法に基づく損害賠償請求をした事案について、
被告の業務命令に基づき勤務地を変更することも予定されており、上記のとおり東京都内や茨城県内に勤務したこともあった
⇒原告が、福島第一原発での勤務を継続し、長期間にわたって大熊町に居住し続けることを期待していたとしても、それ自体は事実上の期待であったといえる。

被告は、福島第一原発を設置、運転していた原子力事業者であり、本件事故発生を受けて、その収束のため、従業員の勤務内容や勤務地を大幅に変更することはやむを得ないことといえる
⇒被告の従業員であった原告に対する勤務地変更の業務命令も、やむを得ないものであったといえ、原告の上記の期待そのものが直ちに法的に保護されるものとはいえない。

避難慰謝料について前記の中間指針等より大幅に低い金額しか認めていない。 
判例時報2423

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