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2020年1月14日 (火)

被告人が、自宅で父親の背中を包丁で刺すなどして死亡させた傷害致死被告事件の起訴後の接見等禁止決定に関する特別抗告事件

最高裁H31.3.13      
 
<事案>
被告人は平成30年4月20日に起訴され、検察官の請求により、第1回公判期日が終了する日までの間、弁護人又は弁護人となろうとする者以外の者との接見等を禁止する決定。
裁判員裁判対象事件の公判前整理手続において、主な争点は、責任能力の有無、程度に絞られた
弁護人は、平成31年2月7日、弁護人の依頼により精神鑑定書を提出したA医師及び被告人の妹について、接見等禁止の一部解除を申請⇒職権発動がされなかった⇒接見等禁止の取消しを求めて準抗告申立て。
 
<原審>
A医師及び被告人の妹を含めて接見等を禁止する必要があり、弁護人が防御等の必要性として主張するところを考慮しても、接見等禁止の判断を左右しない
⇒本件準抗告を棄却 
 
<規定>
刑訴法 第八一条[接見等禁止]
裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。

刑訴法 第四二六条[抗告に対する決定]
抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならない。
②抗告が理由のあるときは、決定で原決定を取り消し、必要がある場合には、更に裁判をしなければならない。

刑訴法 第四一一条[著反正義事由による職権破棄]
上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
 
<判断>
本件抗告の趣意は刑訴法433条の抗告理由に当たらない
but
原決定には刑訴法81条、426条の解釈適用を誤った違法がある
⇒刑訴法411条1号を準用して原決定を取り消した上、和歌山地裁に差し戻した。 
 
<解説>
●逃亡、罪証隠滅のそおれは、勾留理由(刑訴法60条1項)であるが、
接見等禁止(81条)は、接見、通信、物の授受等による逃亡や罪証隠滅のおそれがあることが必要であると解されている。 

実務上、被疑者に対する接見等禁止の決定には、
「公訴の提起に至るまで」という終期を定め、
起訴後は、被告人としての当事者の立場を考慮し、改めて接見等禁止の要否を判断。

起訴後に接見等禁止をする場合、事案に応じ、
「第〇回公判期日が終了する日まで」
「〇年〇月〇日まで」
といった終期を定め、一定期間ごとに接見等禁止の要否を判断。
裁判員裁判対象事件公判前整理手続に付された事件では、第1回公判が開かれるまでに時間を要する場合があり、接見等禁止が長期間にわたることがあり得る。

本決定:
「原々裁判が、公判前整理手続に付される本件について、接見等禁止の終期を第1回公判期日が終了する日までの間と定めたことは、公判前整理手続における争点及び証拠の整理等により、罪証隠滅の対象や具体的なおそれの有無、程度が変動し得るにもかかわらず、接見等禁止を長期間にわたり継続させかねないものである」と判示

実務では、このような問題意識から、起訴後の接見等禁止の終期については、2、3か月後の日を定めるなど特定した終期を定める工夫がされている。

●一般に抗告審の審査は事後審的に原裁判の当否を判断するもの⇒原裁判後に生じた事情や原裁判後に明らかとなった資料は、原則として考慮することができない。
but
原裁判には様々な性質のものがあり、事案の内容、迅速処理の要請、再度の申立ての可否、事実の変動の可能性、資料の重要性や入手の難易等の事情を考慮し、職権による事実の取調べとして、合理的な範囲内で、新事実、新資料を考慮する場合があり得る。

本件弁護人:
原々裁判後に公判前整理手続における争点・証拠の整理が進捗した結果、接見等禁止を継続すべき罪証隠滅のおそれがなくなったと主張

原決定:
原々裁判時はもとより原決定時においてもなお罪証隠滅のおそれが認められるとした。

①原々裁判の接見等禁止の終期の定め方にそもそもの問題があり、約10か月前の原々裁判時に存在した事情のみに基づいてその当否を審判する意味は失われていた
②接見等禁止の一部解除の申請に対し、職権が発動されなかったため、本件準抗告以外に不服申立ての手段がなかったこと

本決定においては、例外的に被告事件の公判前整理手続の経過等の事情を考慮して、原決定の当否を判断

●罪証隠滅のおそれについて、
裁判員裁判の導入を契機として、保釈に関し、より具体的、実質的に判断していくべきであるとの指摘。 

本件では、
①公判前整理手続で、公訴事実の行為と結果に争いがなく、争点が責任能力の有無、程度に絞られていた。
②A医師は、精神鑑定書を提出し、情状証人の被告人の妹と共に弁護側証人となることが予定されていた。
③原決定当時、既に証人請求の予定が明らかとなり、具体的な審理日程に関する協議がされるなど連日的な集中審理に対応するための立証準備が重要な段階に至っていた。
④責任能力に関して、A医師のほかに起訴前の鑑定を行った医師の証人尋問が予定され、同医師が被告人と十分な時間面接していた⇒弁護人の公判準備や防護の観点からも、A医師が被告人と面接する必要性が高まっていた。
罪証隠滅のおそれの有無、程度に直接関わる事情ではないが、接見等禁止の必要性に影響を与える事情であったと考えられる。

本決定:A医師について、検察官の従前の意見の内容等を踏まえ、接見等による実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがうかがわれないことに加え、連日的な集中審理の公判に向けた準備を行う必要性が高いと指摘
判例時報2423

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