滞納処分(差押処分)が超過差押えに該当して違法とされた事案
奈良地裁H31.2.21
<事案>
Xは、市税である市県民税及び固定資産税を滞納⇒滞納処分として土地建物についてのXの持分の差押⇒Xは、処分行政庁の所属するY(奈良県大和郡山市)に対し、本件処分は、地税法が準用する税徴法が禁止している超過差押え(同法48条1項)及び無益な差押え(同条2項)に当たる⇒①本件処分の一部取消しを求めるとともに、本件処分によりXが精神的苦痛を被ったと主張し、②国賠法1条1項に基づき10万円及び遅延損害金の支払を求めた。
<判断>
●請求①
本件処分は無益な差押えには該当しない。
超過差押え該当性について:
差押処分時に財産価値を正確に把握するのは困難⇒徴収職員が差し押さえる財産に裁量権を認めた。
but
その裁量権の行使に当たっては、滞納者の生活への支障や財産の可分性等を考慮して判断すべき。
本件不動産は経済的用法に従っても6つに分けられ、そのうち4つはそれだけで滞納税額を上回るにもかかわらず、滞納税額の約10倍もの価値を有する本件不動産全てを差し押さえたことは、前記裁量権の逸脱・濫用⇒本件処分全体が違法⇒処分権主義に従い、Xが取消しを求める限度で請求を認容。
●請求②
国賠法1条1項の違法性につき、行政処分の取消訴訟の違法性とは異なるとする違法性相対説。
その判断基準として職務行為基準説(最高裁H5.3.11)
税収職員には税の滞納があれば滞納処分をする義務があり、差押処分時に財産価値を正確に把握するのは困難
⇒滞納処分における徴収職員の財産の選択にかかる裁量権は広範なもの。
<事案>
Xは、市税である市県民税及び固定資産税を滞納⇒滞納処分として土地建物についてのXの持分の差押⇒Xは、処分行政庁の所属するY(奈良県大和郡山市)に対し、本件処分は、地税法が準用する税徴法が禁止している超過差押え(同法48条1項)及び無益な差押え(同条2項)に当たる⇒①本件処分の一部取消しを求めるとともに、本件処分によりXが精神的苦痛を被ったと主張し、②国賠法1条1項に基づき10万円及び遅延損害金の支払を求めた。
<判断>
●請求①
本件処分は無益な差押えには該当しない。
超過差押え該当性について:
差押処分時に財産価値を正確に把握するのは困難⇒徴収職員が差し押さえる財産に裁量権を認めた。
but
その裁量権の行使に当たっては、滞納者の生活への支障や財産の可分性等を考慮して判断すべき。
本件不動産は経済的用法に従っても6つに分けられ、そのうち4つはそれだけで滞納税額を上回るにもかかわらず、滞納税額の約10倍もの価値を有する本件不動産全てを差し押さえたことは、前記裁量権の逸脱・濫用⇒本件処分全体が違法⇒処分権主義に従い、Xが取消しを求める限度で請求を認容。
●請求②
国賠法1条1項の違法性につき、行政処分の取消訴訟の違法性とは異なるとする違法性相対説。
その判断基準として職務行為基準説(最高裁H5.3.11)
税収職員には税の滞納があれば滞納処分をする義務があり、差押処分時に財産価値を正確に把握するのは困難
⇒滞納処分における徴収職員の財産の選択にかかる裁量権は広範なもの。
①本件不動産は市場性減価が一定程度見込まれる市街化調整区域内にある⇒直ちに価値を把握するのは困難。
②Xの納税意思がないまま、数年にわたって滞納が継続していたなどの本件の具体的事情。
⇒
Yの徴収職職員が職務上の注意義務を尽くすことなく漫然と本件処分を行ったとは認められない⇒前記違法性を否定。
<解説>
滞納税額を超える財産の差押えに関する裁判例:
①滞納税額に対し、実質価格で60~70倍、購買価額で30~40倍という超過額の著しい差押えにつき、他に財産がないことなどから有効とした事案(最高裁昭和46.6.25)
②滞納税額の約4倍に相当する複数の預金債権の差押えを超過差押えに該当するとして違法とした事案(那覇地裁H8.12.17)
③滞納処分後になされる公売処分に関する事案であるが、滞納税額の10倍近い公売処分につき、滞納税額に達する唯一の財産であったことなどから適法とした事案(京都地裁昭和35.6.22)
滞納処分が超過差押えに該当する場合であっても、差押えの一部解除等により超過差押えでなくなったときは、その違法性は治癒される。
②Xの納税意思がないまま、数年にわたって滞納が継続していたなどの本件の具体的事情。
⇒
Yの徴収職職員が職務上の注意義務を尽くすことなく漫然と本件処分を行ったとは認められない⇒前記違法性を否定。
<解説>
滞納税額を超える財産の差押えに関する裁判例:
①滞納税額に対し、実質価格で60~70倍、購買価額で30~40倍という超過額の著しい差押えにつき、他に財産がないことなどから有効とした事案(最高裁昭和46.6.25)
②滞納税額の約4倍に相当する複数の預金債権の差押えを超過差押えに該当するとして違法とした事案(那覇地裁H8.12.17)
③滞納処分後になされる公売処分に関する事案であるが、滞納税額の10倍近い公売処分につき、滞納税額に達する唯一の財産であったことなどから適法とした事案(京都地裁昭和35.6.22)
滞納処分が超過差押えに該当する場合であっても、差押えの一部解除等により超過差押えでなくなったときは、その違法性は治癒される。
判例時報2424
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