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2019年12月 3日 (火)

樹木の伐採作業に従事中の事故⇒雇用関係肯定⇒安全配慮義務違反(肯定)

岡山地裁倉敷支部H30.10.31    
 
<事案>
X1が地方公共団体であるYとの間の労務参加契約に基づき、樹木の伐採作業に従事。
同じく本件労務参加契約に基づき作業に従事していたZが伐倒した伐木が衝突し、X1が重度の後遺障害を負い、X1の妻であるX2及び子であるX3が多大な精神的苦痛を受けた

①X1が、Yに対し、安全配慮義務違反ないし使用者責任に基づき、損害賠償の支払を求めるとともに、
②X2及びX3が、Yに対し、近親者固有慰謝料の支払を求めた。 
 
<争点>
①Yの安全配慮義務違反の有無
②使用者責任の成否
③過失相殺の成否
④損害額
 
<判断・解説>
●雇用契約と請負契約の区別について 
◎ 安全配慮義務:ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として信義則上負う義務
必ずしも、直接の労働契約関係がある場合に限られるものではない。
but
請負契約の注文者が請負人に対して安全配慮義務を負うのは、特別な社会的接触の関係、すなわち雇用契約に準ずるような関係が認められる必要がある。

本件においては、本件労務参加契約(の実質)が、雇用契約に当たるか、請負契約に当たるかが議論された。

◎ 雇用契約と請負契約の区別:
労基法の「労働者」の判断基準を示した昭和60年の労働基準法研究会報告。
同基準:
労働者性の判断に当たっては、形式的な契約形式のいかんにかかわらず、
実質的な使用従属性を総合的に判断すべき。
①仕事の依頼への諾否の自由
②業務遂行上の指揮監督の有無
③時間的・場所的拘束性の有無
④代替性の有無
⑤報酬の労務対価性の有無
等を主要な判断要素とし、
⑥機械、器具の負担関係
⑦報酬の額
等を補足的な判断要素。
 
◎本件でのあてはめ 
本件労務参加契約には、雇用契約であることを基礎付ける事情として、
①Yが、実施作業日や作業時間の変更を指示、連絡⇒作業場所や作業時間の拘束性の程度はそれなりに高かった
②作業員らが業務を自由に断ることができたとは考えがたい
③作業員らは、適宜、Yの非常勤職員である公園の管理人から、作業場所や作業内容につき、おおまかな指示を受けており、これに従った作業に従事することが義務付けられていた
④作業時間と1日当たりの対価が定められており、報酬が出来高ではなく、時間に対する対価とされている
⑤原則的には作業に必要な道具は、Yが用意するものとされている

本件労務参加契約の法的性質は、雇用契約と解するのが相当
but
本判決では、むしろ請負契約であることと整合的な事情として、
①Yが、公園の整備にあたり、地元と協議する中で、地元地区が推薦した作業員に清掃や草刈、伐採等の作業を依頼するようになったという経緯
②Yの職員は、作業員らやYの非常勤職員である公園の管理人に、具体的な指示等をすることはなかった
③公演の管理人も、作業員らに、細かい指示を出すことはなかった
④天候の関係が作業ができない場合、作業員らの判断で、作業日が変更されることがあった
⑤X1は、事故当時、私物のチェーンソーを使用していた
等を指摘。
このような事情を重視すると、逆の結論をとる余地もあり得たとも解される。
 
●安全配慮義務違反について 
労働契約における安全配慮義務の内容:
一般に、
物的環境を整備する義務
人的環境に関する義務
と整理。

本判決:
Yは、作業員らに対してヘルメットなどを用意しておらず、作業員らがヘルメットを被らずに作業を行うことが常態化しているにもかかわらず、何ら必要な指示、指導を行っていない。
⇒①の物的環境を整備する義務違反を認めた。
Yは、本件労務参加契約は請負契約という見解に立脚⇒作業員らに一度講習を受けさせた以上のことを行っていない⇒本件労務参加契約が雇用契約に該当した場合に安全配慮義務違反が認められるか否かは大きな争点とはされていない

判例時報2419

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