指名型プロポーザルを経た後に、市が廃棄物処理業者との間で随意契約の方法により締結した一般廃棄物処理運搬業務委託契約が無効とされた事案
奈良地裁H30.12.18
<事案>
Yが市長を務める奈良県香芝市の住民であるXらが、
香芝市が、廃棄物処理業者であるZ(被告補助参加人)との間で一般廃棄物収集運搬業務委託契約(「本件契約」)を締結する前に実施した指名型プロポーザルは、契約の相手方が事前にZに内定
⇒
本件契約は、地自法234条2項、同法施行令167条の2第1項2号に規定された随意契約が許される場合に該当せず、私法上無効
⇒
Yに対し、本件契約に基づいて香芝市からZに対して支払われた業務委託料について、不当利得(民法703条)に基づき、Zに対して返還を請求するうよう求めるとともに、
本件契約の履行行為としての業務委託料の支払を差し止めるよう求めた
住民訴訟。
<争点>
香芝市による一般廃棄物収集運搬業務委託先事業者の選定手段としてのプロポーザルの実施時点で、既にZが契約の相手方として内定していたか
仮に事前内定の事実が認められるとした場合に、
①本件契約の締結に地自法234条が適用されるか
②本件契約の締結が地自法234条2項、同法施行令167条の2第1項2号に違反しているといえるか
③仮に違反しているとして、本件契約が私法上無効となり、香芝市がZに対する不当利得返還請求権の行使を怠っているか
<判断>
請求認容
●争点①
地自法234条の規制の対象となる「売買、賃貸、請負その他の契約」は、普通地方公共団体が私人と同等の立場に立って行う契約をいい、いわゆる公法上の契約はこれに含まれない。
but
本件契約は、
料金を支払い、一般廃棄物の収集運搬業務という対価を受けるもの
⇒請負ないし準委任契約に類する業務委託契約と見ることができ、
その意味で、香芝市が私人と同等の立場で行った契約であるということができる。
⇒
地自法234条の規制にかからしめた。
●争点②
①事前に契約の相手方がZに内定していた
②本件契約意向に、本件契約と類似の業務委託契約における相手方を選定する際、指名競争入札の方法によって業者を選定していた事実等
⇒
本件契約の締結が地自法234条2項、同法施行令167条の2第1項2号の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」には当たらない。
●争点
最高裁昭和62.5.19が示した規範を適用し、
①プロポーザルの通知以前から契約の相手方としてZが内定してたという事実が認定⇒地自法施行令167条の2第1項各号に列挙された、随意契約が許される場合に該当しないことが何人の目にも明らかである場合に当たる
②契約の相手方であるZも、内定の事実を知った上で車両の発注等の行動をしているということになる⇒これが許されないことは社会通念に照らし、十分知り得た。
⇒
私法上の契約を無効とする場合を制限的に解した上記最高裁判決に照らしても、本件契約を無効と判断。
同判例は、契約が無効といえない場合には、地自法242条の2第1項1号に基づいて契約の履行行為の差止めを請求することはできないと判示
but
本件では、契約を私法上無効と判断⇒同判例に照らしても、履行行為の差止めを認めることができる事案であると判断。
判例時報2421
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
| 固定リンク
「判例」カテゴリの記事
- インプラント手術での過失(肯定事例)(2023.05.16)
- 共同漁業権から派生する漁業行使権に基づく諫早湾干拓地潮受堤防排水門の開門請求を認容する確定判決に対する請求異議訴訟(2023.05.16)
- 分限免職処分を違法とした原審の判断に違法ありとされた事例(2023.05.14)
- ロードサービスの不正利用についての損害賠償請求の事案(2023.05.14)
- 学校でのいじめ等での国賠請求(2023.05.14)
「行政」カテゴリの記事
- 重婚的内縁関係にあった内妻からの遺族厚生年金等の請求(肯定事例)(2023.05.07)
- 船場センタービルの上を通っている阪神高速道路の占有料をめぐる争い(2023.04.26)
- 固定資産評価審査委員会の委員の職務上の注意義務違反を否定した原審の判断に違法があるとされた事例(2023.04.22)
- 生活扶助基準の引下げの改定が違法とされた事例(2023.03.27)
- 幼少期に発効された身体障碍者手帳が「・・・明らかにすることがでできる書類」に当たるとされた事例(2023.03.20)
コメント