第一種少年院送致⇒抗告棄却but処遇勧告を付さないことが相当とされた事案
大阪高裁H31.3.15
<事案>
少年が、共犯少年らと共謀の上、10日間の間に、連続的に、事務所や店舗緒等から、現金等を摂取したという建造物侵入・窃盗13件(うち5件は窃盗未遂、うち1件は建造物侵入を伴っていない)の事案。
<原審>
少年を第1種少年院に送致する保護処分に付し、相当長期の処遇勧告を付した。
<判断>
●
①本件各非行は、計画的かつ職業的で、態様も大胆で手荒なもので、被害額も多額
②少年は他の共犯少年に比して主導的な役割を果たしている
③少年の過去の保護処分歴にも触れて、少年の非行性は相当深まっている
④少年鑑別所の鑑別結果や家裁調査官の調査結果等に照らして少年の資質上の問題性を指摘
⑤両親に少年に対する十分な監護を期待することはできず、少年に対しては、規律ある姓アk津の中で、専門家による強力な働き掛けによって、自己の課題に十分に向き合わせ、健全な社会生活を送ることができるための価値観や規範意識等を身に付けさせる必要がある
⇒
原審が第一種少年院に送致したことは相当。
<事案>
少年が、共犯少年らと共謀の上、10日間の間に、連続的に、事務所や店舗緒等から、現金等を摂取したという建造物侵入・窃盗13件(うち5件は窃盗未遂、うち1件は建造物侵入を伴っていない)の事案。
<原審>
少年を第1種少年院に送致する保護処分に付し、相当長期の処遇勧告を付した。
<判断>
●
①本件各非行は、計画的かつ職業的で、態様も大胆で手荒なもので、被害額も多額
②少年は他の共犯少年に比して主導的な役割を果たしている
③少年の過去の保護処分歴にも触れて、少年の非行性は相当深まっている
④少年鑑別所の鑑別結果や家裁調査官の調査結果等に照らして少年の資質上の問題性を指摘
⑤両親に少年に対する十分な監護を期待することはできず、少年に対しては、規律ある姓アk津の中で、専門家による強力な働き掛けによって、自己の課題に十分に向き合わせ、健全な社会生活を送ることができるための価値観や規範意識等を身に付けさせる必要がある
⇒
原審が第一種少年院に送致したことは相当。
●
but
原審が相当長期の処遇勧告を付したことについては、理由中において、それを相当とするだけの十分な根拠が必要であるが、原決定はそのような根拠を示していない。
①原決定が少年に対して求められる矯正教育として挙げる
「他者に対する共感性や思いやりを涵養すると共に規範意識を養って非行に対する抵抗感を高め、併せて、将来的な展望を持って生活するための行動様式を身につけさせる」指導は、少年が今回初めて少年院に送致されることや、少年の非行性や問題性の程度に照らし、一般的には1年程度で足りると考えられ
②本件各非行が常習的、職業的なものであることを考慮しても、2年以上の期間を要すると考えるべき特別な事情は見いだせない。
but
原審が相当長期の処遇勧告を付したことについては、理由中において、それを相当とするだけの十分な根拠が必要であるが、原決定はそのような根拠を示していない。
①原決定が少年に対して求められる矯正教育として挙げる
「他者に対する共感性や思いやりを涵養すると共に規範意識を養って非行に対する抵抗感を高め、併せて、将来的な展望を持って生活するための行動様式を身につけさせる」指導は、少年が今回初めて少年院に送致されることや、少年の非行性や問題性の程度に照らし、一般的には1年程度で足りると考えられ
②本件各非行が常習的、職業的なものであることを考慮しても、2年以上の期間を要すると考えるべき特別な事情は見いだせない。
理由中で、少年に対しては、処遇勧告を付さない(一般的な長期処遇となる。)こととするのが相当であると説示。
<解説>
●少年院送致決定に当たっての処遇勧告が処分不当の抗告理由に当たるか?
①家庭裁判所が付す処遇勧告(少年規則38条2項)には執行機関を法的に拘束する効力はない
②少年院に入所した少年の処遇期間は、少年に指定される矯正教育課程(少年院法33条1項)、少年につき定められる個人別矯正教育計画(同法34条1項)により定まるところ、これら矯正教育課程の内容・期間等は訓令や通達により定められているにすぎないこと等
⇒
一般に消極に解されている。
⇒
処遇勧告に対する不服のみをいう抗告趣意は不適法。
but
実務上は、抗告申立書に処遇勧告に対する不服のみが記載されている場合であっても、そのような処遇勧告を付した(付さなかった)上で少年を少年院に送致した原決定の処分の不当を主張しているものと解して、抗告趣意を適法と取り扱うことが多い。
抗告審は、処遇勧告に対する不服が主張されている場合には、処遇不当の抗告趣意の審査の中で処遇勧告の当否についても審査し、その結果、少年院送致は相当であるが、処遇勧告を付した、あるいは付さなかったことは不当であるという判断に達した場合には、抗告は棄却するものの、理由中でその旨を指摘するのが通例。
●抗告審決定が、理由中で処遇勧告が不当である旨を指摘⇒それを少年の処遇にどのように反映させるか?
①抗告棄却の抗告審決定は、矯正機関に対するものではない、
②少年規則38条2項は抗告審に準用されない⇒抗告審において処遇得勧告を発することもできない
③原審において抗告審決定の理由中の判断を踏まえて再度処遇勧告を行ってもらうことも、棄却決定である抗告審決定に下級審に対する拘束力を認める余地がない以上困難。
⇒
実務では、抗告審において、別途矯正機関に対して通知書等を送付する取扱い(=具体的には、少年院の長に宛てて抗告審決定の写しを送付する取扱い)。
<解説>
●少年院送致決定に当たっての処遇勧告が処分不当の抗告理由に当たるか?
①家庭裁判所が付す処遇勧告(少年規則38条2項)には執行機関を法的に拘束する効力はない
②少年院に入所した少年の処遇期間は、少年に指定される矯正教育課程(少年院法33条1項)、少年につき定められる個人別矯正教育計画(同法34条1項)により定まるところ、これら矯正教育課程の内容・期間等は訓令や通達により定められているにすぎないこと等
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一般に消極に解されている。
⇒
処遇勧告に対する不服のみをいう抗告趣意は不適法。
but
実務上は、抗告申立書に処遇勧告に対する不服のみが記載されている場合であっても、そのような処遇勧告を付した(付さなかった)上で少年を少年院に送致した原決定の処分の不当を主張しているものと解して、抗告趣意を適法と取り扱うことが多い。
抗告審は、処遇勧告に対する不服が主張されている場合には、処遇不当の抗告趣意の審査の中で処遇勧告の当否についても審査し、その結果、少年院送致は相当であるが、処遇勧告を付した、あるいは付さなかったことは不当であるという判断に達した場合には、抗告は棄却するものの、理由中でその旨を指摘するのが通例。
●抗告審決定が、理由中で処遇勧告が不当である旨を指摘⇒それを少年の処遇にどのように反映させるか?
①抗告棄却の抗告審決定は、矯正機関に対するものではない、
②少年規則38条2項は抗告審に準用されない⇒抗告審において処遇得勧告を発することもできない
③原審において抗告審決定の理由中の判断を踏まえて再度処遇勧告を行ってもらうことも、棄却決定である抗告審決定に下級審に対する拘束力を認める余地がない以上困難。
⇒
実務では、抗告審において、別途矯正機関に対して通知書等を送付する取扱い(=具体的には、少年院の長に宛てて抗告審決定の写しを送付する取扱い)。
判例時報2419
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