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2019年12月 9日 (月)

海上自衛官に対する懲戒免職処分が争われた事案

東京地裁H30.10.25    
 
<事案>
海上自衛官であったXに対して防衛大臣がした懲戒免職処分が、裁量権を逸脱又は濫用してされたもので、処分を科す手続にも重大な瑕疵があるとして取り消された事案。 
 
<判断・解説>  
●公務員に対する懲戒処分
公務員に対する懲戒処分は、懲戒権者である行政庁に裁量が認められるが、
処分の前提となった事実あるは処分要件に関わる重要な事実の存否の認定については、行政庁の裁量の観念を入れる余地はなく、裁判所が証拠に基づき判断代置的に認定することができるものと解されている。 
裁量行為については、被告行政庁が裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したことについて、原告が主張立証責任を負うが、
判断の基礎とした具体的事実については、被告行政庁が主張立証すべきであるとの考えが通説的。
 
●懲戒事由該当性
本判決:
本件処分の基礎とした本件違反事実の存否について、防犯ビデオの映像から、Xが2日間にわたって各1本の栄養ドリンクを窃取したことは認められる
but
その余の本件違反事実に係る窃盗行為については、本件全証拠によっても認めることはできない。

これらの窃盗行為の懲戒事由相当性:
Xが窃盗行為時に若年性認知症又は軽度認知障害等の精神疾患にり患していたことを認定。
but
当該精神疾患が窃盗行為に与えた影響について、
窃盗行為時の行為態様及びその前後のXの様子、当時のXの生活状況等
当該精神疾患がXの事理弁識能力又は行動制御能力に影響を与えていたことを否定することはできないが、
少なくともこれらの能力の減退が著しい程度に至っていたとは認めることができない。

Xの窃盗行為が懲戒事由に該当しないとのXの主張を排斥
 
●裁量権の逸脱又は濫用 
公務員の懲戒処分は、「社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱しこれを濫用したと認められる場合に限り、違法である」という判断枠組み。
海上自衛隊における懲戒処分等の処分基準へのあてはめを詳細に検討し、
懲戒権者は懲戒処分を行う場合、原則として、当該処分基準に従って懲戒処分を選択すべき。
当該処分基準に従うと、Xの窃盗行為は、重くとも停職処分に相当する事案⇒本件処分は裁量権を逸脱し又は濫用したものとして違法
判例時報2420

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