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2019年12月14日 (土)

不当労働行為が認定された事案

大阪高裁H30.9.7      
 
<事案>
X(高槻市)の設置する市立小学校の外国人英語指導助手らはY(大阪府)の補助参加人である労働組合(「Y補助参加人」)の支部を結成して、市庁舎前等においてビラを配布するなどの組合活動をし、また別件の救済申立てを大阪府労働委員会に行った。
Y補助参加人の組合員である英語指導助手が市立小学校卒業式への出席を希望⇒市立小学校の校長は、市教育委員会に問い合わせたうえ卒業式への出席を認めなかった。
市教委の教育指導部長は、市議会本会議において、質問を受け、英語指導助手が保護者に署名やビラ配布を依頼したこと、別件の救済申立てがなされていること等をあげて、卒業式に出席を認めると混乱を生じる可能性を排除できない旨の答弁(「本件答弁」)をした。

Y補助参加人:
Xが、本件組合員が組合活動を行ったことから卒業式に出席することを認めなかったこと及び本件答弁においてY補助参加人の組合活動を中傷したことがそれぞれ不当労働行為に当たるとして、大阪府労働委員会に救済を申し立てた。

大阪府労働委員会は、Y補助参加人の申立てについていずれも不当労働行為に当たるとして、Xに謝罪文手交を命じる救済命令(「本件救済命令」)をした。

Xが本件救済命令の取消しを求めた。

原審:Xの請求を認めて本件救済命令を取り消した、
本判決:原判決を取り消し、Xの請求を棄却
最高裁:Xの上告受理申立てを不受理。
 
<規定>
労組法 第七条(不当労働行為)
使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
・・・
三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。
 
<判断>
●本件組合員が卒業式の出席を認められなかったことがXによる労組法7条1項本文前段、3号及び4号の不当労働行為に該当するか。 
本件組合員が卒業式への出席を認められなかったことは「不利益な取扱い」に該当する。

◎Xが、本件組合員が労働組合の組合員であることの故をもって、あるいは不当労働行為救済申立てをしたことを理由として「不利益な取扱い」をしたといえるか。 
①市教委が各校長らから問い合わせを受けた日は、別件救済申立てがされたことをXが知った後であると認めることができる
②これを前提に、市教委が各校長らに本件組合員の卒業式への出席について慎重に対応するようにと指導・助言し、各校長らがこれに従い本件組合員に対しそれぞれの卒業式への出席を認めなかった

Xは、本件組合員に対し、別件の救済申立てをしたことを理由として、卒業式への出席を認めないとの「不利益な取扱い」をしたものであるということができる。
本件組合員が卒業式に参加すると卒業式が混乱するとのXの懸念も具体的なものであったとはいえない

Xが本件組合員を卒業式に出席させなかったことは、労働組合の組合員であることの故をもって、あるいは不当労働行為救済申立てをしたことを理由として「不利益な取扱い」をしたもの

◎本件組合員が卒業式への出席を認められなかったことがXによる労働組合への支配介入に当たるか? 
本件組合員の卒業式への出席を認めなかった取扱いは、本件組合員にとっても他の労働者にとっても、その組合活動意思を萎縮させ、そのため組合活動一般に対して制約的効果が及ぶおそれのあるものといえる。

本件組合員が卒業式への出席を認めなかったことは、XによるY補助参加人の運営に対する支配介入にも当たる

本件組合員が卒業式への出席を認められなかったことが、Xによる労組法7条1号本文前段、3号及び4号の不当労働行為に該当する。 
 
●本件答弁が労働組合への支配介入に当たるか
①本件答弁は、市教委の教育指導部長がXを代表して発言したもので、Y補助参加人だけでなく、社会全体に向けて発進されたもの
②本件組合員の卒業式への出席を認めない理由として、Y補助参加人のこれまでの組合活動からみて、組合員が卒業式に参加すると卒業式が混乱する懸念があることを公然と述べたものであるが、これは、Y補助参加人の組合活動は卒業式を混乱させるおそれがあると批判し中傷したことになる。
③これは、労働者らの組合活動意思を萎縮させ、そのため組合活動一般に対して制約的効果が及ぶおそれがある

本件答弁は、労組法7条3号に該当する不当労働行為である
判例時報2420

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