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2019年11月16日 (土)

原決定は第一種少年院送致決定をしたが、抗告審で取り消された事例

東京高裁H30.10.2   
 
<事案>
少年(審判時18歳)が、
①共同危険行為
②前記①の処罰を免れる目的で、警察官に、虚偽の普通自動二輪車の窃盗被害を申し出たという軽犯罪法違反
③普通自動二輪車の無免許運転をした
という事案。

路上強盗等を行い保護観察に付された処分歴がある。 
 
<原決定>
①全体として、交通法規等を著しく軽視した悪質なものと評価
②短絡的な判断に至りやすい等の少年の問題点は、少年の資質や家庭環境に根差したもので、前件の非行による試験観察や保護観察を経ても改善されずに本件に結び付いており、少年の問題性が深刻
③実父の指導力は不十分で保護環境が整っているとはいえない

社会内処遇による更生は困難かつ不相当

少年を第一種少年院に送致。

鑑別結果は在宅保護(保護観察)相当としていた。
 
<抗告審>
①本件は事本的に交通法規違反に限定され、原決定の指摘するほど悪質なものとは評価できない
②少年は、前件の保護観察を良好解除され、その後、本件に及んでしまったものの、前件よりも非行の悪質性が低下しその範囲が限定されるなど、少年が更生しつつあるにもかかわらず、一度試験観察や保護観察を経たのに非行に及んだからという理由で、少年の問題性を深刻だと判断するのは形式的に過ぎて、妥当ではない。
③保護観察についても、前件以降、少年が実父の監督下でも一定の更生をしつつあったといえる⇒社会内処遇の可能性を十分に検討するべき

原決定は、少年の要保護性及び社会内処遇の可能性に関する評価を誤っているといわざるを得ず、少年を第一種少年院送致とすることは、処分の相当性を欠いており、著しく不当
⇒原決定を取り消し、事件を原審に差し戻した。
 
<解説>
非行事実は要保護性の顕在化と捉えられる⇒非行事実については、要保護性を判断する前提として、動機、経緯のほか、態様や結果も含め、その内容を丁寧に検討する意識が必要。 
社会内処遇を受け再非行に及んだ少年については、段階処遇として、収容保護処分が検討されることが多い中、本件は、非行事実の内容を丁寧に検討し、これを踏まえると要保護性が高いとはいえないと判断して、再度、社会内処遇を選択した事例。

判例時報2417

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