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2019年11月11日 (月)

退去強制対象者に該当するとの認定に係る異議の申出には理由がない旨の裁決が違法とされた事例

東京地裁H29.11.29     
 
<事案>
ウガンダ共和国の国籍を有するX1が、入管法24条4号ロ(不法在留)に該当すること等を理由としてなされた、入管法所定の退去強制対象者に該当するとの認定に係る異議の申出には理由がない旨の裁決及びこれを前提とする退去強制令書を発付する処分を受けた⇒X1及びその妻X2(日本人)が、X1の在留を特別に許可しなかった本件裁決及び本件退去令発付処分はいずれも違法と主張して、これらの各取消しを求めるとともに、
X2がY(国)に対し、本件裁決によってX1が在留特別許可を受けられず、本件退令発付処分によって送還される立場に置かれたことで、精神的苦痛を受けた⇒国賠法1条1項に基づく損害賠償(慰謝料)の支払を求めた。 
 
<判断>
●Xらの婚姻関係は、婚姻の届出から本件裁決までの約8か月の期間にとどまり、Xらの間に子がいないとしても、本件裁決の時点において既に真摯で安定かつ成熟した婚姻関係であると評価すべき素地が十分にあったものと認められる。
それにもかかわらず、東京入管局長は、X1の在留を特別に許可するか否かの判断に当たり、これを適切に評価せず、X1が在留資格取得目的でX2と婚姻したにとどまると誤認し、かつ、Xらが真摯な交際関係に至った経緯についての十分な評価をしなかった。

不法残留等に及んだX1の入国及び在留の状況は、在留特別許可の許否の判断に当たって消極要素として評価されたとしても不合理ということはできない、
but
①不法残留の状態になった後本件裁決に至るまで約8年1か月の間本邦において特段の違法行為を行ったことはないこと
②X1自ら東京入管に出頭して不法残留の事実を申告していること
など、その消極的評価を減殺する事情も存在。

東京入管局長が、本件裁決に際し、X1の在留を特別に許可しないとした判断は、
①その基礎とされた重要な事実に誤認があることにより全く事実の基礎を欠き、又は
事実に対する評価が明白に合理性を欠くことにより、
社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであることが明らか
⇒本件裁決には、その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法がある。

X1による本件裁決及び本件裁決を受けてされた本件退去令発付処分の各取消し請求を認容。

●X2の請求のうち本件裁決及び本件退令発付処分の各取消しを求める部分は、X2は原告適格がない⇒訴え却下。
損害賠償請求は理由なしとして棄却。 
 
<解説>
短期滞在の在留資格で本邦に入国した外国人が、その後本件裁決に至るまで約8年間、在留期間更新許可又は在留資格変更許可を受けることなく本邦に在留。
本件裁決の時点において、既に、日本人女性との間で真摯で安定かつ成熟した婚姻関係を築いていたと評価すべき素地が十分にあった⇒この事情を十分に評価することなく、在留を特別に許可せずになされた本件裁決は、その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があり、また、本件裁決を受けてされた本件退令発付処分も違法であるとして、両処分が取り消された事例。 

判例時報2417

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