難民不認定処分の取消⇒事情変更を理由に再度難民不認定処分の事案
東京高裁H30.12.5
<事案>
Xが、前訴判決により本件前不認定処分当時における難民該当性が認められた以上、法務大臣が再度の難民不認定処分をするには、難民条約1条C(「終止条項」)(5)にいう「難民であると認められる根拠となった事由が消滅したため、国籍国の保護を受けることを拒むことができなくなった場合」に該当することを要するところ、Xについて終止条項に該当するとは認められない
⇒本件再不認定処分の取消し、本件異議棄却決定の無効確認及び難民認定の義務付けを求めた。
<一審>
Xの請求のうち、
本件再不認定処分の取消し及び難民認定の義務付けを求める部分を認容し、
本件異議棄却決定の無効確認請求に係る訴えを却下
<判断>
一審維持でYの控訴を棄却
我が国の法制度において、難民に該当することを理由に、難民不認定処分の取消決定が確定している外国人は、法務大臣による難民認定を要件とすることなく、前記処分時において難民条約の適用を受ける難民であることが公権的に確認されていることとなり、法務大臣もこれに拘束される。
⇒その後の事情の変更を理由として法務大臣が難民認定をしない旨の処分をしようとする場合には、終止条項の規定により難民条約の適用が終止するか否かを判断する必要。
・・・・本件再不認定処分当時、終止条項に該当すると認めることはできず、なお難民に該当⇒本件再不認定処分の取消しを求めるXの請求は理由がある。
・・・スリランカ当局等からLTTEの協力者であるとの疑いをもたれている具体的な可能性があるXについて、終止条項該当性を認めることはできない。
⇒
Xは現時点においても難民に該当し、難民認定の義務付けを求めるXの請求も理由がある。
<解説>
本判決は、終止条項を含む難民条約1条の規定等から、終止条項の適用対象を法務大臣による難民認定を受けた者に限定しない立場を採った上で、
難民に該当することを理由に難民不認定処分の取消判決が確定している外国人について、取消判決の拘束力(行訴法33条)を理由として、法務大臣がその後の事情の変更を理由に難民認定をしない旨の処分をしようとする場合には終止条項の規定により難民条約の適用が終止するか否かを判断すべきことを明らかにしたもの。
判例時報2412
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