« 携帯電話のレンタル業者に詐欺行為の幇助を認め損害賠償請求を認めた事案 | トップページ | 共同での特許無効審判請求に係る無効審決⇒特許権者が、共同審判請求人の一部のみを被告として取消訴訟、共同審判請求人との関係で出訴期間経過⇒審決取消訴訟は訴えの利益を欠く不適法なものとして却下 »

2019年10月 5日 (土)

一部の相続人による、被相続人名義の貯金全額の引出しと不当利得(肯定)

徳島地裁H30.10.18      
 
<事案>
亡Aの相続人である原告が、共同相続人である被告に対し、
Aの死後に同人名義の本件貯金1618万円余について原告の同意を得て払戻しを受けたがそのまま被告が全額を領得したため、原告に被告に対し、
第1に主位的に、準共有持分侵害の不法行為に基づき自己の法的相続分2分の1に当たる809万円及び弁護士費用80万円等の支払を、
第2に予備的に、不当利得に基づき自己の法廷相続分に当たる809万円余等の支払を求めた。 
 
<争点>
①本件貯金は亡Aの遺産か、それとも被告に帰属するのか
➁不法行為・不当利得は成立しているか
③不当利得額は原告の法廷相続分相当額か、それとも具体的相続分相当額か
 
<判断>
争点①について、Aに帰属 

争点②について:
原告が本件貯金の払戻しに同意していた⇒不法行為は成立しない
被告は遺産分割協議を経ることなく全額を出金して原告に交付することなく独占⇒本件貯金に対する原告の準共有持分を不当に利得

争点③について:
①具体的相続分はそれ自体を実体法上の権利関係であるとはいえない
②Aの遺産に係る遺産分割が未了
③被告において遺産分割協議や審判を経るなどして、具体的相続分を前提に本件貯金の準共有関係の解消を図ること(被告の主張によれば、そもそも原告が本件貯金の準共有持分を有しない旨を確認すること)が可能であるにもかかわらずそのような手続をとることなく、本件貯金の解約についてのみ原告の同意を取り付けてこれを全額領得しており、このため本件訴訟が提起されていることなどの経緯

本件訴訟において侵害の有無を判断する基準となるべき相続分は、具体的相続分ではなく法定相続分であると解すべき

不当利得返還請求を認容
 
<解説>
●最高裁H28.12.19:
共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる。 

上記最判は、最高裁H16.4.20を変更したが、同判決中変更されたのは、
前半部分の「相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではない」とされた部分だけで、
後半の「したがって、共同相続人の1人が、相続財産中の可分債権につき、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合には、当該権利行使は、当該債権を取得した他の共同相続人の財産に対する侵害となるから、その侵害を受けた共同相続人は、その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができる」という部分まで変更したものとは解されない。

本件の判決が不当利得返還請求を認容したことがこれらの判例と相反するものではない。

損害額あるいは利得額の算定基準を法定相続分とするか、具体的相続分とするか?
最高裁H12.2.24:
具体的相続分は遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできない

法定相続分とする本判決の判断はこれまでの判例の線に沿ったもの。

●本件のような場合における不当利得返還請求や損害賠償請求については、最高裁H28.12.19の射程外であり、遺産分割を要するものではない。

判例時報2412

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 携帯電話のレンタル業者に詐欺行為の幇助を認め損害賠償請求を認めた事案 | トップページ | 共同での特許無効審判請求に係る無効審決⇒特許権者が、共同審判請求人の一部のみを被告として取消訴訟、共同審判請求人との関係で出訴期間経過⇒審決取消訴訟は訴えの利益を欠く不適法なものとして却下 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 携帯電話のレンタル業者に詐欺行為の幇助を認め損害賠償請求を認めた事案 | トップページ | 共同での特許無効審判請求に係る無効審決⇒特許権者が、共同審判請求人の一部のみを被告として取消訴訟、共同審判請求人との関係で出訴期間経過⇒審決取消訴訟は訴えの利益を欠く不適法なものとして却下 »