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2019年10月31日 (木)

みなし勾留に対する不服申し立ての事案

東京家裁H30.8.7     
 
<事案>
少年による逮捕監禁保護事件について、観護措置(少年法17条1項2号) がとられていたところ、少年が20歳以上であることを理由とする検察官送致決定(同法19条2項)に伴って生じたいわゆる「みなし勾留」に関して、弁護人から準抗告の申立て⇒家庭裁判所が観護措置を取り消し、これによってみなし勾留をなくした事例。
 
<解説・判断>
●少年法45条4号は、観護措置中の少年について、同法20条によって事件を検察官に送致したときは、観護措置を裁判官のした勾留とみなす(「みなし勾留」)。
この規定は、年齢超過を理由とする検察官送致決定(同法19条2項、23条3項)にも準用(同法45条の2)。
みなし勾留に先だってなされる監護措置について、少年法の条文上は「審判を行うために必要があるとき」にとることができると規定(同法17条1項柱書)。
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実務上は、いわゆる「監護措置の必要性」として
①調査・審判及び保護処分の執行を円滑に遂行するための身柄確保の必要(住所不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ)、
②少年の緊急保護のための前提的身柄確保の必要性、
③収容して心身鑑別を行う必要性
のいずれかが認められる場合に観護措置をとることができると整理。
一方で、勾留についてはは、刑訴法60条1項各号の事由が規定されている。
これは上記①で挙げられるものと重なる事由ではあるが、
①観護措置と刑訴法上の起訴前勾留とでは目的や機能が異なる
②前記②や③の事由は少年審判の目的や機能に特有のもの

観護措置がとられていた事件が検察官に送致される場合に当然に勾留の要件が認められるものではない

家裁は、監護措置がとられている少年の事件について検察官送致決定をする場合には、それに先立って、勾留の要件について検討することが求められる。

勾留の要件ありと判断⇒告知手続(少年審判規則24条の2)を経た上で検察官送致決定。
ないと判断⇒同決定に先立って観護措置を取り消しておかなければならない。
 
●みなし勾留に対する不服申立て

実務では、家庭裁判所に対する準抗告という方法でこれを認めている。 
準抗告の対象
A:検察官に送致するに当たり、観護措置を取り消さなかった措置
B:検察官に送致するに当たり、勾留の要件が存在するという裁判官の潜在的判断
C:擬制された結果としてのみなし勾留そのもの

●本決定:
「原裁判の取消しと「みなし勾留請求」の却下を求める弁護人の申立てに対して、
みなし勾留においては勾留請求と勾留の裁判は存在しないことを指摘しつつ、
その趣旨を善解して、観護措置の取消し(それによりみなし勾留をなくすこと)を求めているものとして応答

主文:
「・・・・保護事件を検察官に送致するに当たり、・・・・観護措置を取り消さなかった措置を取り消す。」「上記観護措置を取り消す。」

前記Aの見解に立っている。

判例時報2415

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