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2019年10月30日 (水)

テスト出勤制度について争われた事例

名古屋高裁H30.6.26     
 
<事案>
被控訴人(Y、日本放送協会)の従業員(職員)であった控訴人(X)が、精神的領域における疾病による傷病休職の期間が満了したことにより解職

(1)同期間満了前に精神的領域における疾病が治癒し、休職の事由が消滅しており、解職が無効であり、Yとの間の労働契約が存続していると主張して、
①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
②休職期間経過後の賃金及び賞与の支払を求めるとともに、

(2)傷病休職中に行ったテスト出渠区により、労働契約上の債務の本旨に従った労務の提供をし、途中でテスト出局が中止され、これにより労務の提供をしなくなったのはYの帰責事由によるものであるとして、
③テスト出局開始から傷病休職満了までの期間について、労働契約に基づき、職員給与規程(職員就業規則)による賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を、

(3)テスト出局の中止や解雇に至ったことに違法性があると主張し、
④不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料)及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、

控訴審において、
前記③の請求につき、
(4)仮にテスト出局中にXの行った作業が労働契約上の本来の債務の本旨に従った労務の提供に該当しないとしても、労基法及び最低賃金法上の労働に該当し、最低賃金額以上の賃金が支払われるべきであるとして、

⑤テスト出局開始から傷病給食満了までの期間について、労働契約に基づき、最低賃金額相当の賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるために予備的請求原因を追加。 
 
<原審>
①~④についていずれも棄却 
 
<解説>
テスト出勤制度について
精神的領域における疾病による休職中の労働者が職場復帰するための有効な手段の1つとされ、厚労省の事業場向けマニュアルとして「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公表。
①模擬出勤
②通勤訓練
③試し出勤

●問題の所在 
テスト出勤制度は、法定の制度ではなく、その実施の有無や制度設計は事業者ごとに対応が求められ、制度を整備する必要性が高まっている反面、法的性質は明確ではない
試し出勤の開始が復職に該当せず、休職期間の満了による退職扱いを適法とした事案(東京地裁H22.3.18)
 
<判断>

①合理的理由

③テスト出局は休職者によっても復職につながる利益がある⇒就業規則に、休職を命じた職員には業務に従事させないとの定めがあるからといって、必要性・相当性があり、休職者がテスト出局を行うことに同意している場合まで休職者にテスト出局に伴う業務に従事することを禁止するものではない⇒前記就業規則の定めがあることでテスト出局が違法になるとはいえない
④テスト出局が無給で行われたことに問題があると認められるが、健康保険組合から傷病手当等が支給されていることなどに鑑みると、テスト出局が無給であることをもって違法とまではいえない。

本件テスト出局は適法

●テスト出勤の趣旨、目的に照らせば、休職者の提供する作業の内容は、当該求職者の労働契約上の本来の債務の本旨に従った履行の提供であることを要するものではなく、また、求職者の提供する作業の内容がその程度のものにとどまる限り、Yも休職者に対して労働契約上の本来の賃金を支払うことになるものではない。
テスト出局のように求職者のリハビリと職務復帰の判断を目的として実施され、時間及び作業内容が軽減された労務の提供に対する賃金については、就業規則及び職員給与規程の定めがないものと解される⇒職員給与規程による賃金の支払を認めなかった。
but
テスト出局が職場復帰の可否の判断を目的として行われる試し出勤(勤務)の性質を有する⇒休職者は事実上、テスト出局において業務を命じられた場合にそれを拒否することは困難な状況にあるといえる⇒単に本来の業務に比べ軽易な作業であるからといって賃金請求権が発生しないとまではいえず、当該作業が使用者の指示に従って行われ、その作業の成果を使用者が享受しているような場合等には、当該作業は、業務遂行上、使用者の指揮監督下に行われた労基法11条の規定する「労働」に該当するものと解され、無給の合意があっても、最賃法の適用により、テスト出局については最低賃金と同様の定めがされたものとされて、これが契約内容となり(同法4条2項)、賃金請求権が発生するものと解される。

Xの行った作業を労働契約上の本来の債務の本旨に従った労務の提供と認めなかった
but
Xが出局していた時間は使用者であるYの指揮監督下にあったものと認められる

労基法11条の規定する労働に従事していたものであり、無給の合意があっても最賃法の適用により最低賃金相当額の支払義務を負う
 
<解説>
●本件テスト出局の適法性
本判決:
控訴人が従前にテスト出局が中止されたことがある⇒その期間が24週間と長期であること、無給であること、就業規則では休業者が業務に従事できないとの定めがあるからといって違法とはできない。
vs.
テスト出勤は、職場復帰の判断をするために必要な限度で行われるべきであり、本件テスト出勤は、その期間が24週間と長期であるなど、旧業者に相当な負担を負わせるものであるから、一般論として適法といえるかは疑問の余地がある。
 
●テスト出局中の作業と賃金請求権の発生 
A:「労働者」の要件である「賃金を支払われる者」(労基法9条、最賃法2条1号)を充足しない
B:試し出勤の目的がもっぱら復職可能性の判断にある場合には、指揮命令下の業務従事という評価は妥当せず、賃金請求権は発生しない
C:休職中であっても、休職者と使用者との間に労働関係が存在する以上、使用者の指示に従って業務を行なえば、それは原則として労務の提供であり、労基法や最賃法の適用は免れない
D:客観的な就労実態が労務の提供に該当すると判断される場合、合意の内容にかかわらず、強行法規である労基法、最賃法及び労災法等は適用される

判例時報2415

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