自殺した娘についての児童相談所が所管する個人情報記録についての開示請求
山口地裁H30.10.17
<事案>
Xが、自殺したA(Xの長女)の個人情報である児童相談所が所管する個人情報記録につきXが開示請求⇒Y(山口県)から非開示決定処分⇒その取消しを求めた。
非開示理由:
(1)本件情報は、Y個人情報保護条例10条1項にいうXにかかる「自己の個人情報」には該当せず、「開示請求者以外の個人(亡A)に関する情報」であり、
(2)開示することにより開示請求者以外の特定の個人を識別できるもので、本件条例16条3号本文に該当し、同号イ、ロ、ハのいずれの非該当事由にもあてはまらず、
(3)開示することにより、関係者、関係機関との信頼関係が損なわれるなど、今後の児童福祉業務の適正な遂行に著しく支障を及ぼすおそれがある
⇒
本件条例16条8号に該当することを理由として、本件情報の全部を開示しない旨の個人情報非開示決定処分、
<判断>
(1)について:
①死者が未成年者である場合には、相続人たる地位を有する父及び母は、当該未成年者の権利義務を包括的に承継する者として密接な関係を有し、
②当該未成年者に係る情報が社会通念上相続人たる地位を有する父又は母自身の個人情報と同視し得る余地があると考えられる
⇒
Xは本件条例10条に基づき、Aの個人情報を自己の個人情報として、開示請求をする適格を有するものと解する。
(2)について:
本件条例16条3号の趣旨⇒死者の遺族が遺族固有の個人情報であるとして当該死者に関する情報の開示情報をした場合は、当該死者の他の遺族の名誉及びプライバシーを害する目的、態様でなされる等の特段の事情について主張、立証のない本件のにおいては、死者に関する情報が含まれていることを理由として開示をしないことは許されない。
(3)について:
本件条例16条8号の「当該事務若しくは事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれがある」というためには、情報を開示した場合には、県の機関等の事務の円滑な実施に著しい支障がが生じる高度の蓋然性があることが、客観的かつ具体的な根拠に基づいて認められなければならないが、これを認めるに足る的確な証拠はない。
~
本件情報はXの「自己の個人情報」に該当し、かつ本件条例16条3号及び同条8号に規定する非開示事由はないと認められるとして、Xの請求を認容。
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