中学教諭の非違行為⇒懲戒免職の事例
東京高裁H30.9.20
<事案>
中学校の教諭に採用されたばかりのXが、非違行為の存在を理由に、地公法29条1項1号及び3号の規定により懲戒免職処分⇒本件処分は、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとして、その取消しを求めた。
<一審>
本件非違行為の内容
⇒Xは、中学校教諭の「職を信用を傷つけ」、「全体の奉仕者たるにふさわしくない」非行をおこなった⇒地公法33条に違反し、法29条1項1号及び3号の懲戒事由に該当。
裁判所が公務員に対する懲戒処分の適否を審査するに当たっては、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認められる場合に限り、違法であると判断すべき。
①XがAにキスをした行為は「わいせつな行為」に該当する
but
②XとAの交際はAが積極的に望んでいたもので、XとAが将来を見据えて真剣に交際をしていた⇒Xが本件非違行為に及んだ動機が強い非難に値するとはいえない。
③わいせつ性の程度は低い⇒本件非違行為の態様が著しく悪質であるとはいえない。
④本件非違行為による結果や他の職員及び社会に与える影響が重大であったとはいえない。
⑤Xは本件非違行為を真摯に反省している。
⇒
県教育委がXに対して懲戒免職処分を選択したことは、社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認められ、違法。
<判断>
①本件非違行為は、単発的・偶発的な行為ではなく、多数回にわたり継続的に行われたものであるし、埼玉県青少年健全育成条例の刑事罰の規定に抵触する行為も含み、外形的に見ると、本件女子生徒との間で性的関係を持ったものと受け取られかねないもの⇒その程度としても深刻、重大
②Aは、Xが従前勤務していた塾の教え子で、勤務先の中学校の生徒ではないものの、ほぼ同年代の高校1年⇒自校の女子生徒と交際する場合と同視し得るものというべきであり、自校の生徒との関係でないことを重視することは正当ではない。
③Aの同意があるとはいえ、15歳でいまだ婚姻適齢にすら達しておらず、その判断能力等も必ずしも十分とはいえない状況の下で、Xは、保護者に対して一切話をすることもなく、本件非違行為に及んでいる⇒将来を見据えて真剣に交際していたなどと軽々に評価できるものではないし、教育者としての社会的責任を持ち出すまでもなく、その行為は許されるべきものではない。
④本件非違行為の態様、動機及び結果、故意又は過失の程度、職員の職責、他の職員及び社会に与える影響、過去の非違行為の有無、日頃の勤務態度並びに非違行為後の対応等の各要素のいずれの点から見ても、本件非違行為の責任は重大であり、処分は重い量定を行う方向で検討することにならざるを得ない。
⇒
本件処分において停職より重い処分である免職が選択されたことが不合理であるとは到底言えず、処分権者である県教委の裁量の範囲内の処分量定。
他の事例と比較しても、停職ない減給の事例は、おおむね、態様等が本件非違行為と異なるものであり、これら以外のわいせつ関連事案は大部分が免職となっている。
⇒
他の処分事例を比較して、処分が不当に重いということはできず、公平性の観点から見ても合理性を欠くものということはできない。
判例時報2413
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