近畿財務局長等が、森友学園について不開示情報と判断⇒国賠法上違法とされた事案
大阪地裁H31.3.14
<事案>
原告は、近畿財務局長に対し、行政情報公開法に基づき、国が学校法人森友学園に賃貸し、その後、売り払った土地に関する「賃貸契約時までに提出された小学校の設立趣意書」等の開示請求⇒近畿財務局長は、同法5条2号イ所定の不開示情報が記録されていることを理由に一部不開示決定⇒それが国賠法上違法であると主張し、同法1条1項に基づき損害賠償金等の支払を求めた。
<判断>
①本件設置趣意書の本文部分記載の情報は、学校法人としての経営戦略に関する情報としては概括的かつ抽象的なものにとどまり、小学校の運営・経営上のノウハウというべきものではない上、既に、実質的に公にされていたと認められる
⇒利益侵害情報に該当するとはいえない
②小学校名も、これを知った他の学校法人等が先んじてそれを使用し、又は商標登録するなどして、森友学園による前記名称の使用が妨げられるといった事態に至ったとしても、そのことによって、森友学園の競争上の地位が害されることになるとは考えられない⇒利益侵害情報に該当するとはいえない。
近畿財務局長等は、小学校をめぐる一般的な社会の状況や、新聞報道等によって知り得る森友学園に関する諸事情、公知の事実等を踏まえ、健全な社会通念に照らして合理的に判断しさえすれば、本件不開示部分を開示したとしても、森友学園の権利、競争上の地位その他正当な利益が害される蓋然性がないとの判断に至ることができたというべき
⇒職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件不開示決定をしたものであり、国賠法1条1項の違法があった。
⇒一部認容。
<規定>
行政情報公開法 第五条(行政文書の開示義務)
行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
二 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
<説明>
●行政情報公開法5条2号イ所定の「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位を指し、
「その他正当な利益」とは、ノウハウ、信用等法人又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含むものとされ、
「害するおそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性では足りず、法的保護に値する蓋然性が求められるとされている。
●行政情報公開法に基づく公文書の不開示決定に取消し得べき瑕疵があるとしても、そのことから直ちに国賠法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と前記決定をしたと認め得るような事情がある場合に限り、前記評価を受けるものと考えられている(最高裁H18.4.20)。
本判決は、本件不開示部分の情報の内容、当該情報に係る法人を巡る諸事情⇒本件不開示部分が利益侵害情報に該当しないことは明らか⇒近畿財務局長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件不開示決定をしたと認め得るような事情がある場合に該当すると判断。
判例時報2411
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