犯人蔵匿の故意が問題となった事案
大阪高裁H30.9.25
<原審>
①被告人がAを自己の居室301号室に居住させていた
②AはZ(昭和46年11月14日に発生した「渋谷暴動事件」(凶器準備集合、公務執行妨害、傷害、賢首建造物等放火及び殺人の各被疑事実)の犯人)である
③被告人は、Zについて、殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ、逃亡中の者であることを認識していた
④被告人は、AがZであると認識していた
⇒
被告人は「Zが殺人事件等の罪を犯した犯人として逮捕状が発せられ、逃走中の者であることを知りながら」犯人を蔵匿したと認定して有罪。
<判断>
原審認定の①②を是認。
④については、原審が摘示した諸事情から、被告人においてAが「Z」であると認識していたと結論づけることはできない⇒経験則違反による事実誤認。
but
犯人蔵匿の故意の成立には、Aが「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」であることの認識があれば足り、
被告人において「Z」という個人に関する具体的な認識はなくとも、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」の認識があったことは推認できる。
⇒
犯人蔵匿罪の成立自体は肯定。
ただし、
原審の判断とは異なり、Aの「Z」についての具体的認識を否定した点で「縮小認定」になり、量刑上重要な差が生じる
⇒
この認定レベルでの事実誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかだとして原判決を破棄し、改めて、控訴審の認定した事実に基づき犯人蔵匿の罪で有罪とした。
判例時報2406
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