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2019年8月11日 (日)

勾留の裁判に対する準抗告決定⇒検察官からの特別抗告が棄却された事案

最高裁H30.10.31      
 
<事案>
規制薬物として取得した物の所持罪(国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反、前回被疑事実)により現行犯逮捕、勾留⇒勾留満了の10月10日に処分保留で保釈⇒大麻取締法違反被疑事実(本件被疑事実)で逮捕、勾留請求。

原々審:刑訴法60条1項2号、3号の事由があるものと認めて被疑者を勾留⇒弁護人が準抗告

<原審>
準抗告をいれて、原々審を取り消し。 

一般に、大麻の密輸入者が、密輸入した大麻を所持した場合の両者の罪数関係は、
その所持が輸入行為に伴う必然的結果として一時的になされるにすぎないと認められるとき⇒密輸入の罪に吸収されて所持の別罪を構成しない
その所持が輸入行為の必然的結果を離れて社会通念上別個独立の行為として評価⇒両者は併合罪の関係

本件:
被疑者が貨物を受け取った時点と、現行犯逮捕された時点とでは、日時・場所が近接しており、
受け取った貨物についても、未だ開封もせず、車のトランクに載せたのみ
but
被疑者が配送先で貨物を受け取ったのみならず、これを持ち運んで、共犯者が乗車し、かつ移動性の高い車のトランクに積み込もうとしたことを重視すれば、その時点における所持は、輸入行為に伴う必然的結果ではなく、社会通念上別個独立の行為を評価される余地もないわけではない。
but
仮にそのように評価して、両事実は一罪関係にはないと解したとしても、
前回被疑事実と本件被疑事実とは一連一体の事実で、関係者も同一であり、必要とされる捜査の内容もその大半が共通するものと考えられる。
このような両事実の実質的同一性や、両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等

捜査機関は、前回勾留中に、本件勾留請求にかかる被疑事実の捜査についても、同時に処理することが義務付けられていたと解するのが相当であり、これに反して再度の勾留請求を認めることは、勾留の期間を厳格に制限した法の趣旨を逸脱するものとして許されない。
 
<規定>
刑訴法 第四一一条[著反正義事由による職権破棄]
上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
二 刑の量定が甚しく不当であること。
三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。

刑訴法 第四三三条[特別抗告]
この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
②前項の抗告の提起期間は、五日とする。
刑訴法 第四〇五条[上告のできる判決、上告申立理由]
高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
一 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
二 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
三 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
 
<判断>
本件抗告の趣旨は刑訴法433条の抗告理由に当たらないとしつつ、
原決定が、本件勾留の被疑事実である大麻の営利目的輸入と、本件勾留請求に先立つ勾留の被疑事実である規制薬物として取得した大麻の代替物の所持との実質的同一性や、両事実が一罪喚起に立つ場合との均衡等のみから、前件の勾留中に本件勾留の被疑事実に関する捜査の同時処理が義務付けられていた旨説示した点は是認できないが、
いまだ同法411条を準用すべきものとまでは認められない
旨職権判示し、結論においては特別抗告を棄却。 
 
<解説> 
●勾留の単位は個々の犯罪の事実であり(事件単位の原則)、
1個の犯罪事実については1つの勾留しか許されない(一罪一勾留の原則)。 
ここでいう「1個の犯罪事実」か否かは、実体法上の罪数関係を基準とする見解が通説であり、実務の大勢。

先行する勾留の被疑事実と併合罪関係にある別の被疑事実による再勾留は、例えば先行する勾留が違法な別件勾留であるような例外的な場合を除き、許されることになる。
例えば先行勾留における先行被疑事件の捜査の結果として本件被疑事実に関する証拠も相当程度収取されたなど、捜査経緯や証拠関係等を踏まえて両被疑事実の同時処理の可能性を具体的に検討した上で、勾留の必要性がないことを理由に再度の勾留請求を却下することはあり得る。
 
● 特別抗告には刑訴法411条が準用される(最高裁昭和26.4.13)
⇒原決定の法令違反を理由とする取消しは、いわゆる著反正義が認められる場合に限られる。

判例時報2406

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