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2019年7月23日 (火)

債務免除益の所得区分(税法)

東京地裁H30.4.19      
 
<事案>
農業等を営んでいたXが、A農業協同組合に対する借入金債務につき債務免除(「本件債務免除」)を受けたことによる債務免除益(「本件債務免除益」)を一時所得として所得税の修正申告⇒処分行政庁から、本件債務免除益は、その借入れの目的に応じて、事業所得、不動産所得あるいは一時所得に該当することとして更正等の処分を受けた⇒本件更正処分等の取消しを求めた。 
 
<判断>
借入金の債務免除益の所得区分の判断においては、当該借入れの目的や当該債務免除に至った経緯等を総合的に考慮して判断するのが相当。
不動産貸付業務の用に供される建物の建築資金に充てるため、あるいは農業用機械の購入資金に充てるための借入れに係る借入金については、
Xの不動産貸付業務あるいは事業(農業)の運転資金的性質を有している
⇒それらの借入金の返済に充てられた部分に係る債務免除益については、それぞれ不動産貸付業務あるいは事業の遂行による収入ということができる
不動産所得あるいは事業所得に当たる。

本件債務免除の対象となった本件借入金は、本件旧借入金の借換え及び組替えがされたものであって、本件旧借入金そのものではない
but
前記の点は単なる借換え等にすぎない
⇒実質的にはなお不動産貸付業務あるいは事業の運転資金的性質を有しているものと評価できる。
 
<解説>
債務免除益については、いわゆる包括的所得概念を前提として原則として所得に当たると考えられている。

債務免除益が所得となる根拠としては、
「債務の免除からは、借主の受取金額と、借主の債務返済のための支払金額の差だけ、借主に所得が生じることになる」という見解。

不動産所得に当たるか否かについては、所得税法26条1項が不動産所得を不動産の貸付けによる所得などと規定しており、その文言に照らして、借入金の債務免除益まで不動産所得の対象に含め得るかは、なお議論されるべき問題

債務免除益の所得区分に関して、
借入金の債務免除益が所得税法28条1項にいう賞与又は給与に当たると判断した最高裁H27.10.8

判例時報2405

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