平成29年衆議院議員選挙投票価値較差訴訟大法廷判決
最高裁H30.12.19
<事案>
平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙について、各選挙区の選挙人であるXらが、衆議院小選挙区選出議員の選挙の選挙区割りに関する公選法の規定は憲法に違反し無効⇒本件選挙の前記各選挙区における選挙も無効であるなどと主張してい提起した選挙無効訴訟。
<原審>
投票価値の格差の状況とアダムズ方式の採用の比重の置き方に軽重はあるものの、概要、平成28年改正法(衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律)及び平成29年改正法(平成28年改正法の一部を改正する法律)は、平成32年以降の大規模国勢調査の結果に基づきアダムズ方式を各都道府県への定数配分において適用することとし、それまでの較差是正の措置として、各都道府県の選挙区数の0増6現をするとともに、平成27年簡易国選調査の結果に基づき将来の見込人口を踏まえ同32年の大規模国勢調査の時点までに較差2倍未満となるよう本件区割規定を設けたものであり、本件選挙区割りの下において本件選挙当日における選挙人比最大格差が1.979倍であり、較差が2倍以上の選挙区が存在しないこと等を指摘し、本件選挙区割りが投票価値の平等の要求に反する状態にあったとはいえない。
<判断>
平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができる。
⇒
本件選挙当時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。
<解説>
憲法判断の基本的枠組み
衆議院議員の選挙に関しては、これまでの最高裁の類似の判例により、
①定数配分又は選挙区割りが投票価値の較差において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態(違憲状態)に至っているか否か、
②前記①の状態に至っている場合には、憲法上要求される合理的期間内に是正がなされなかったとして定数配分規定又は区割規定が憲法の規定に違反するに至っているか否か、
③当該規定が憲法の規定に違反するに至っている場合には、選挙を無効とすることなく選挙の違法を宣言するにとどめるか否か
という判断の枠組み。
判例時報2403
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