市立記念館条例を廃止する条例の制定行為の違法性
青森地裁H30.11.2
<事案>
Y(青森県十和田市) が、地自法244条1項所定の公の施設として十和田市立新渡戸記念館(本件記念館)を設置し、十和田市立新渡戸記念館条例(本件記念館条例)において、その設置及び管理に関する事項を定めていたが、平成27年6月26日、本件記念館条例を廃止する条例(本件廃止条例)を制定
⇒
Xが、Yに対し、本件廃止条例制定行為が行訴法3条2項所定の処分に当たることを前提として、本件廃止条例制定行為の取消しを求めた。
<経緯>
当初、本件廃止条例制定行為の処分性が否定され訴え却下
⇒控訴審で処分性が認められ、原判決取消しの上で第一審に差し戻された。
<主張>
①本件廃止条例行為の前提となった本件耐震診断は不合理であり、処分の根拠とされた事実に誤りがある。
②仮にそうでないとしても、本件建物を本件記念館として使用する公益上の必要は消滅しておらず、Yの財政状況に問題がない⇒新たな建物を建築せずに本件記念館を廃止することは不合理であるとして、裁量権行使の逸脱又はその濫用がある。
<判断>
主張①について:
不合理があるとはいえない。
主張②について:
不合理があるとはいえない。
本件記念館を廃止した場合にXが失う諸利益(Yによる本件資料の維持修理や本件資料に係る賃料等)については、本件各契約等において本件記念館が廃止され得ることを前提とする条項がある⇒将来本件記念館が廃止されてXが前記諸利益を失い得ることは当初から排除されていない。
また、その具体的不利益も大きなものとはいえない。
⇒
本件廃止条例制定行為に係るYの裁量権行使に逸脱又はその濫用があるということはできない。
<解説>
本判決:
公の施設の廃止が地方公共団体の裁量的判断に委ねられているとした上で、かかる裁量的判断も裁量権行使に逸脱又はその濫用がある場合には違法となる。
公の施設を廃止する条例を制定する行為について、行訴法3条2項所定の処分としての違法性について判断した事例では、いずれも本判決と同様に、公の施設の廃止について地方公共団体の裁量を認め、裁量権の行使に逸脱又は濫用があるか否かによって違法性を判断。
判例時報2401
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
| 固定リンク
« 捜査でのビデオ撮影の可否が問題となった事案 | トップページ | (自賠法16条1項に基づく請求権の額+労働者災害補償保険法12条の4第1項により国に移転して行使される請求権の額)>自動車損害賠償責任保険の保険金額の場合の被害者の取り分。 »
「判例」カテゴリの記事
- 保護観察中の特定少年の特殊詐欺の受け子としてのキャッシュカード窃取で第1種少年院送致(期間3年)の事案(2023.06.06)
- 社債の私募の取扱いをした証券会社の損害賠償義務(肯定)(2023.06.06)
- (脚本の)映画試写会での公表(否定)とその後の週刊誌での掲載による公表権の侵害(肯定)(2023.06.04)
- いじめで教諭らと市教育委員会の対応が国賠法上違法とされた事案(2023.06.04)
- 破産申立代理人の財産散逸防止義務違反(否定)(2023.06.01)
「行政」カテゴリの記事
- 重婚的内縁関係にあった内妻からの遺族厚生年金等の請求(肯定事例)(2023.05.07)
- 船場センタービルの上を通っている阪神高速道路の占有料をめぐる争い(2023.04.26)
- 固定資産評価審査委員会の委員の職務上の注意義務違反を否定した原審の判断に違法があるとされた事例(2023.04.22)
- 生活扶助基準の引下げの改定が違法とされた事例(2023.03.27)
- 幼少期に発効された身体障碍者手帳が「・・・明らかにすることがでできる書類」に当たるとされた事例(2023.03.20)
コメント