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2019年6月

2019年6月30日 (日)

ルート営業⇒心停止(心臓性突然死)⇒業務起因性(肯定事例)

福岡高裁宮崎支部H29.8.23      
 
<事案>
Xは、Aが死亡したのは、過重な労働に従事したのが原因⇒労災法に基づく遺族補償給付等を求めた⇒不支給の処分⇒不支給処分の取消を求めて提訴 
 
<原審>
本件発症前6か月間の月平均時間外労働時間を56時間15分と認定⇒本件発症前6か月間の労働により相応の疲労の蓄積があったことを背景に、発症直前の9日間における本件クレームへの対応や県外出張による強度の精神的、身体的負荷が短期間に集中したことによって、Aの血管病変等をその自然の経過を超えて急激に悪化させたことにより本件発症に至ったと認めるのが相当⇒業務起因性を肯定し、不支給処分を取り消した。 
 
<解説>
●労災保険給付の対象となる業務災害:
労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいう(労災法7条1項1号)。

労災保険給付の対象となる労働者の傷病等は、「業務上」のものであることが必要であり、業務起因性の問題として議論。 

業務起因性:
通説・判例(最高裁昭和51.11.12):
傷病等と業務との間に相当因果関係が必要であるとされている。

相当因果関係を肯定するに当たり、傷病等の発症と業務との間にどの程度の結びつきを要するのかに関し、相対的有力原因説と共働原因説がある。

最高裁判決には、いずれの見解をとるのかについて一般的な判示をしたものはなく、具体的事案に即して、
問題となっている労働災害が業務に内在しない随伴する危険が現実化したものかどうかを判定して業務起因性の有無を判断

●行政手続:
労働者に発症した脳・心臓疾患についての業務上外の認定は、厚労省が発出した通達(平成13年12月12日基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」)に基づいて行われている。
この通達は、行政機関が労災保険給付を迅速かつ画一的に行うための内部基準⇒裁判所の判断を拘束しない。
but
前記通達に定める認定基準は、相当の合理性があると考えられ、本件控訴審・一審とも、認定基準の定める要件について、その趣旨を十分に踏まえて検討するのが相当として、業務起因性の検討を進めている。
 
<判断> 
一審判決の認定判断を補正し引用し、また、前記専門検討会報告書に示された考え方を補充して認定しつつ、
業務の過重性に関し、
本件発症の6か月前から平均して2時間を超える時間外労働が恒常化しており、その業務量及び業務内容が相当程度の精神的、肉体的疲労を蓄積するに足りるものであること、
②本件発症前の約1か月については、Aの所属部署の繁忙期とされるゴールデンウィークの連休前後の時間が含まれていて、1時間ないし3時間以上を超える残業が続いており、連休中を含めて連続して休日がとれたの1回だけであった
③本件クレームが発生した後は、通常業務に加えて本件クレームへの対応を余儀なくされ、時間外労働を強いられた
④本件発症前の1週間については、長時間の移動を伴い、早期ないし深夜に及ぶ3回の県外出張があり、本件発症当日に行われた出張は、大口取引先に対する本件クレーム対応を含むものであり、このような出張がAにとって強度の精神的、身体的負荷となっていた

基礎疾患に関しては、Aにブルガダ症候群の基礎疾患が存在し、本件発症がブルガダ症候群による心室細動によって引き起こされた可能性は否定できないとしつつも、睡眠不足、疲労やストレスは、少なくとも心室細動ないし心停止の誘因となり、本件発症前、Aにブルガダ症候群の症状が生じていたことがうかがわれないこと

Aの日頃の飲酒状況、Aの本件発症前の業務の内容、態様、とりわけ本件発症直前のAの業務内容、態様も鑑みると、
Aは、その所属する部署の繁忙期に続いて起きた本件クレームへの対応等の業務により強度の精神的、身体的負荷を受けており、本件発症直前には強度のストレス、睡眠不足、疲労の状態にあったと認められ、これらが本件発症の誘因となったとみるのが合理的かつ自然。
本件発症は、Aが従事していた業務に内在する危険が現実化したものと評価するに十分であり、本件発症とAの業務との間に相当因果関係を認めることができる

判例時報2402

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2019年6月29日 (土)

戦争被害と損害賠償責任

那覇地裁H30.1.23      
 
<事案>
戦争被害を受けた者、その遺族であると主張するXらが、
Y(国)に対し、
主位的請求として、旧日本軍の戦闘行為等が不法行為に当たると主張し、
民法709条、715条等に基づき、
第一次予備的請求として、条理等を根拠とする公法上の危険責任に基づき、
第二次予備的請求として、Xらの被害を救済する立法の不作為につき、国賠法1条1項に基づき
謝罪及び損害賠償を求めた事案。
 
<争点>
①Yの不法行為責任の成否
②Yの公法上の危険責任の成否
③Yの立法不作為に係る国賠法上の責任の成否
 
<判断>
●争点①について 
行政裁判法、裁判所構成法、旧民法及び国賠法の起草経過及び法案審議等並びに関連裁判例及び学説の各内容を検討した上で、
国賠法附則6項にいう「従前の例」については、
国家の権力的作用ないし統治権に係る行為に関しては国の民法上の不法行為責任を否定するとの不文の法理が裁判実務において通用し確立した公権的解釈となっていたことを指すものであって、そのような状態を引き継ぐことが国賠法附則6項に立法者意思であった。
本件については国賠法附則6項が適用される⇒Yは旧日本軍の戦闘行為等について不法行為責任を負わない。
 
●争点③について 
本件事案における立法不作為の国賠法上の違法性の判断枠組みにつき、
最高裁判例を参照しつつ、
Xらが主張する立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるためには、その先決問題として、当該立法不作為が憲法の規定に反することが明白であることが必要
本件において立法不作為が憲法14条1項に違反することが明白であるというためには、同不作為が国会の裁量権の範囲を逸脱するものであり、しかもそれが明白であるといえること、すなわち、既存の立法による補償対象者とXらとの間に、明らかに不合理な差別が生じているといえることが必要。

戦傷病者戦没者遺族等援護法が当初軍人軍属等のみを対象としていたことの合理性や、同法の適用対象の拡大にもかかわらずXらが対象とされていないことの合理性につき検討

いずれについても、明らかに不合理な差別とはいえないと結論づけた。 
 
<解説> 
●国家無答責の法理:
A:同法理が実定法に根拠を有するという実定法説
国賠法附則6項にいう「従前の例」を国家無答責の法理を指すものとして、民法上の不法行為に基づく請求を排斥。
B:実定法説を否定する説
C:実定法説を採用せず、国賠法附則6項の「従前の例」には当該確立していた判例法理も含まれるとしつつ、一定の場合に、国賠法施行前の国の権力的作用に当たる行為につき、未納の不法行為規定の適用があり得るとする裁判例 

本判決は、実定法説を採用しなかった。
 
●戦後補償:
戦争犠牲ないし戦争損害に対する補償は憲法の予想しないところであって、その補償の要否及び在り方は、立法府の裁量的判断にゆだねられたものとの判断が確立。

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2019年6月28日 (金)

売主が成りすましでの売買契約と司法書士(肯定)と公証人(否定)の責任

東京地裁H29.12.4      
 
<事案>
不動産取引において所有者の成りすましによる被害が発生⇒売買代金を詐取された買主に対する司法書士、委任状を認証した公証人(国)の責任が問題。 
 
<争点>
①Y2の責任(公証人の過失)の有無
②Y1(司法書士)の責任
③Xの損害の発生及び因果関係 
 
<判断> 
●争点①について 
 
公証人は、業務上相当の注意をもって嘱託人の本人確認をすべき注意義務を負う。
平成16年改正後の不登法23条4項2号の規定につき、
登記義務者であることを確認するために必要な認証」であり、「登記義務者であることの認証」ではないことや、同法24条1項の規定の内容等

公証人の認証の対象が面前の嘱託人(登記申請者)と登記義務者との同一性にまで及ぶとは解されず、公証人法上求められている本人確認義務を超えて、同一性をも確認する義務まで負うものではない
but
一見して面前の嘱託人と私署証書の作成者の同一性が疑われるような場合には、さらに嘱託人や関係者に説明を求めたり、追加の資料を提出させるなどして、本人確認を行う義務を負う。 

本件:
公証人が本件印鑑登録証明書、本件パスポートを確認し、本件委任状の名前の一字(2か所)を訂正させたものであり、
一見して、面前の嘱託人と本件委任状の作成者の同一性が疑われるような事情はなく
本件印鑑登録証明書の外観、形式などの異常の有無及び本件印鑑登録証明書の印影との同一性を相当の注意をもって確認

本人確認義務違反を否定
 
●争点②について 
司法書士は、依頼者に登記に必要な書類を徴求し、依頼者が用意した書類相互の整合性を点検し、所期の目的に適った登記の実現に向けて手続的な誤謬等を調査確認する義務を負うものの、当事者の本人性や登記医師の存否は、原則として適宜の方法で確認すれば足り、特に依頼者からその旨の確認を委託された場合や、依頼の経緯や業務を遂行する過程で知り得た情報を司法書士が有すべき専門的知見に照らして当事者の本人性や登記意思を疑くべき相当の理由が存する場合を除き、それ以上にこれらの点に関する調査確認義務を負わない。

本件:
Y1がA’から受領した本件認証書、本件印鑑登録証明書等の書類の「登録義務者」欄の記載が、本件不動産の登記事項証明書の写しの記載とは異なっていた(登記申請書、剛毅原因証明情報の「登記義務者」欄は、Y1の誤りによりこれらとも異なる漢字で名前が記載されていた)

Y1は、本件登記の申請手続の委任を受けた司法書士ついて、この齟齬を解消すべき義務を負っており、登記申請人であるA’の本人性を疑くべき相当な理由があったし、少なくとも本件契約の代金等決済を阻止すべき義務があった

前記齟齬に気付くことなく決済を完了させたことにつき本件登記の申請手続状の注意義務違反による不法行為がある
 
●争点③について、
売買代金2800万円、仲介手数料90万円、登記手続費用等56万円の損害を認めた。 

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2019年6月26日 (水)

バドミントンのダブルス競技の事故と競技者への損害賠償請求(肯定)

東京高裁H30.9.12      
 
<原判決>
Yは、その際に声掛けをしていなかったものであり、Xが動き出せば間に合う状況であったにもかかわらず、Xが打つことはないと軽信し、その後のXの動きを確認することを怠った⇒過失を肯定。
違法性阻却については、ルールに著しく違反しない限り違法性が阻却される旨のYの主張を採用せず。
but
後述のとおり、民法722条2項を類推適用して、Yには損害の6割を負担させるのが相当
⇒789万3244円と遅延損害金の支払の範囲内で請求を許容。
 
<判断>
後衛にいたYにおいては、飛来するシャトルを打つために自らが動き出す時点で、Xがシャトルを打つために動く可能性があることを予見することができた⇒Yの過失を認定。 
 
<解説> 
● 本判決:
後衛ににいたYにおいては、飛来するシャトルを打つために自らが動き出す時点で、Xがシャトルを打つために動く可能性があることを予見することができた⇒Yの過失を認定。 
but
Yにおいて、Yの前方に前衛としてXがいることを認識していたとしても、Xがシャトルを打たないと判断してラケットを振った場合に、直ちにYに過失があるとしてよいのか?

野球等において、打者等が打った飛球を捕球する際に声掛けをせずに外野選手等が衝突。
このような場合、そもそも声掛けをしなかったことと衝突との因果関係があるとは必ずしもいえないし、仮に、その因果関係があるとしても、その賠償責任を追及することは、通常想定されていない。

そのような行為は、そもそも直ちに当該競技のルールに違反するものではなく、協議参加者が通常許容しているから。
 
●不法行為の過失:
当該職業、身分の普通人において通常払うべき注意義務の違反
このような過失を「抽象的過失」と理解し、当該行為者を基準とした注意義務の違反(具体的過失)と考えない。
損害の公平な社会的配分を図る。 

このような「過失の客観化」
当該協議のルールに違反せず、当該事故の態様等に照らして競技参加者が通常予測していると考えられる事故については、普通人としての過失である「抽象的過失」はないということも可能

最高裁:
スキーヤー同士の事故について、上方から滑降する者に、前方を注意して下方を滑降している者との接触ないし衝突を回避できるように滑降すべき注意義務を認め、上方から滑降した者の過失を認めている(最高裁H7.3.10)。
 
●民法720条は、正当防衛及び緊急避難を違法性阻却事由とする。
これに対し、不法行為の要件としては、違法性概念は不要であるとして、これらを不法行為成立を阻却する事由とする見解もある(平井)。
どのような理解をするかは別にして、正当業務行為や被害者の承諾等も不法行為責任を否定するものとされている。 

スポーツ事故については、被害者の黙示の承諾があるとして不法行為責任が否定されることもある

(東京地裁昭和48.6.11)

相手方が打ったシャトルが競技者の目に当たった場合には、相手方の損害賠償責任を否定するであろう。
そうすると、当該傷害が当該スポーツが本来予定している危険性の範囲内か否かで違法性を判断

本判決は、違法性阻却について、発生した傷害の頻度や程度に即して、もう少し丁寧に判断してもよかった
 
原判決
①Xにおいてバドミントンによる自己の危険を理解して競技に参加していること
②Yには故意がないこと

損害の公平な負担の理念に基づき、民法722条2項を類推適用し、Yに損害の6割を負担させた。

本判決:
Xの過失を認定することはできない⇒これを否定。

判例が民法722条2項(過失相殺)の類推適用を認めたのは、
被害者の心因的要因(最高裁昭和63.4.21)疾患(最高裁H4.6.25)が損害発生等に寄与した事案であるところ、
被害者の過失とはいえないまでも、
損害の拡大や損害の発生に被害者側の事情が寄与しており、
加害者がそれを通常予見することができない場合には、
損害の公平な負担という理念に照らして民法722条2項所定の「被害者の過失」を類推適用し、一定の範囲で損害賠償額を減額することは可能

民法416条2項は、特別事情の予見可能性を特別損害の賠償責任の要件としている。
but
原判決が損害減額の事由とする「危険引受け」や「故意の不存在」は、過失相殺規定の類推適用の根拠となっている「損害への寄与」や「加害者の予見可能性」という観点からすると、前記類推適用事由とな異なるように思われる

本判決は、Xには過失がないとして、賠償すべき損害額を減額しなかった。
but
原判決が認めた過失相殺規定の類推適用を否定する以上、その類推適用の根拠となっている事由を検討すべきであり、単にXに過失がないとして過失相殺規定の類推適用を否定するのは、Yの過失相殺の主張に正面から答えていない

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2019年6月25日 (火)

年金基金が、投資コンサルタントと商品販売協力契約を締結していた投資会社の元代表者に対して、債権侵害を理由とする損害賠償請求(肯定)

東京高裁H30.4.11      
 
<事案>
九州地区の業界団体を母体とする厚生年金基金Xが、過去に購入した投資商品の販売元である投資会社の元社長Yに対し、債権を侵害する不法行為があった⇒損害賠償を求めた。 
Xは、投資コンサルタントP1が経営するB社と本件運用助言契約を締結。
B社は、当時Yが代表者を務めるA社との間で本件販売協力契約を締結。

B社は、
①Xに対し、本件運用助言契約に基づく善管注意義務及び忠実義務として、年金資産の投資運用助言を忠実に行う債務を負っていた一方、
本件販売協力契約に基づくA社の投資商品(不動産ファインド)を販売協力する義務を負い、Xに多く販売すればするほど多くの歩合報酬(成約額の1%)を受領することができる
利益相反の関係にあった
 
<争点>
Yの行為につき、Xが本件運用助言契約に基づきB社から適切な助言を受ける権利を侵害したとして、債権侵害の不法行為が成立するか? 
 
<原審>
①A社らの行為がXに対する不法行為に当たるためには、A社らの行為が自由競争として許される限度を超え、社会的相当性を逸脱するものと評価できる必要がある。
②A社らはB社をして実体のないファンドをXに推奨させたわけではない

自由競争として許される限度を超えるものとして社会的相当性を逸脱したものとは評価できない。
 
<判断>
本件販売協力契約は、X及びB社との間の利益相反の温床となるものであり、B社の実態は中立公正な運用助言者の仮面をかぶったA社の回し者とみられ、P1及びB社が本件運用助言契約に基づくXに対する善管注意義務・忠実義務に違反

債務不履行責任を負うにとどまらず、故意による不法行為責任を負う

①A社及びYは、成約額の1%の歩合報酬の支払をB社に約する本件販売協力契約の存在が、B社において本件運用助言契約を履行するにあたりX及びB社との間の利益相反の温床となることを認識していた。
②Yが、Xに対して本件販売協力契約の存在や巨額の歩合報酬支払の事実を開示しないまま、P1及びB社を通じてXにA社商品に投資させ、Xの年金資産を非常識なほどリスクの高い状態に置いたまま放置し、かつ、A社からB社への巨額の歩合報酬の支払を継続したこと等の事情

Yの行為は、Xの傘下にある勤労者国民の財産を自己の財布代りに投資資金として自由に使って、Xの年金資産を過剰なリスクにさらして勤労者国民の老後の生活基盤を不安定にするもので、社会通念上許される限度を超えた故意による債権侵害の不法行為に当たる。

損害の認定:
被害者側の過失は、悪意により加害行為が実行されれた不法行為事案であることその他本件に顕われたすべての事情を考慮し、1割程度にとどめる。

判例時報2402

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2019年6月23日 (日)

名義貸しと運行供用者(肯定)

最高裁H30.12.17      
 
<事案>
Aが所有し運転する普通乗用自動車に追突されて傷害を負ったX1及びX2が、本件自動車の名上の所有者兼使用者であるYに対し、自賠法3条に基づき、損害賠償を求めた。
Aに名義を貸与したYが、本件自動車の運行について、同条にいう「自己のために自動車を運行のように供する者」に当たるかが争われた。 
 
<判断>
YがAからの名義貸与の依頼を承諾して本件自動車の根異議上の所有者兼使用者となり、Aが前記の承諾の下で所有していた本件自動車を運転して本件事故を起こした場合において、
Aは、当時、生活保護を受けており、自己の名義で本件自動車を所有すると生活保護を受けることができなくなるおそれがあると考え、本件自動車を購入する際に、弟であるYに名義貸与を依頼

Yは、本件自動車の運行について、自賠法3条にいう運行供用者に当たる。
 
<解説> 
●運行供用者に当たるか否かについては、「運行支配」と「運行利益」の2つの要素から運行供用者性を判断する「二元説」が判例・通説。

運行支配があれば責任を負う
←危険責任

運行利益があれば責任を負う
←報償責任 
 
●判例 
①最高裁昭和43.9.24:
自賠法3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは、
自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味する。

②最高裁昭和45.7.16:
子の1人が所有する自動車を別の子が運転していた際の事故について父親の運行供用者性を肯定する際に、
「自動車の運行について指示・制御をなしうべき地位にあり」と説示

③最高裁昭和46.7.1:
無断私用運転中の事故について、
「運行を全体として客観的に観察するとき、本件自動車の運行が上告人のためになされていたものと認めることができる」
⇒自動車の所有者である上告人に運行利益がある。

④最高裁昭和49.7.16:
未成年の子がその所有車両を運行中に起こった事故につき、父に運行供用者責任が認められた。

⑤最高裁昭和50.11.28:
「自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に実害をもたらさないよう監視・監督すべき立場にある場合」には運行供用者に該当する旨説示し、
「父と同居して家業に従事する満20歳の子が所有し父の居宅の庭に保管されている自動車につき、所有者登録名義人となった父は、右自動車の運行について自賠法3条にいう自己のために自動車を運行のように供する者に当たると解すべきである」と判断。

⑥最高裁H20.9.12:
自動車の所有者Qの娘の友人であるPの運行について、Qの容認の範囲内にあったとみられてもやむを得ず、Qは、同運行について、自賠法3条にいう運行供用者に当たる。
 
●運行供用者の意義については、①判決以降、「運行支配」と「運行利益」の2つの要素から運行供用者性を判断する2元説が判例・通説。
but
その運行支配、運行利益の内容は、規範化・客観化する傾向。 

運行支配:
事実としての支配ではなく、加害車両の運行を指示・制御すべき立場という規範的概念とした捉えられるようになった。(②判例)

運行利益:
その内容は、抽象化・客観化。(③判例)

④判例解説:
運行支配:
直接・具体的な支配の実在を要件とするものではなく、社会通念上、彼が車の運行に対し支配を及ぼすことのできる立場にあり、運行を支配・制御すべき責務があると評価される場合に、その者に運行支配権が肯定。

運行利益:
必ずしも現実・具体的な利益の享受を意味せず、事実関係を客観的外形的に観察することにより、法律上又は事実上なんらかの関係で彼のために運行がなされていると認められる事情があれば肯定できる。

⑤判例解説:
本判決が、運行利益、運行支配という言葉を用いることを敢て避け、
「車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場」といったのは、・・・強いて右のような概念を用いる必要のないことを示したもの。

判例⑥:
自動車所有者Sは、Rと面識がなく、Rという人物が存在することすら認識していなかったのに、Rの運転を容認したとして運行供用者性を肯定。
⇒ここでいう「容認」の内容は、客観的・抽象的なもの
 
●本判決:
生活保護を受けているAに対する名義貸与について、
「事実上困難であったAによる本件自動車の所有及び使用を可能にし、自動車の運転に伴う危険の発生に寄与するものといえる」と評価し、
「Yは、Aによる本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に実害をもたらさないよう監視・監督すべき立場にある場合にあったというべきである」という判例⑤と同様の説示をして、Yは運行供用者に当たると判断

判例時報2402

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2019年6月22日 (土)

危険運転致死傷罪の成立を否定し予備的訴因の過失運転致死傷罪の成立を認めた事案

宮崎地裁H30.1.19    
 
<解説>
自動車死傷法3条2項の危険運転致死傷罪:
自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、その結果正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合に成立。

そして、同法施行令3条は、道路交通法令において運転免許の欠格事由として列挙されている例を参考に、自動車の運転に支障を及ぼすおそれのある病気として、「意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん」(2号)を挙げている。
他方、認知症は、運転免許の欠格事由ではあるが、危険運転致死傷罪の対象となる病気からは除外されている。

道路交通法令において欠格事由となるのは、対象者が日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態にある場合(介護保険法5条の2参照)に限定されており、このような病気にり患している者が自動車を運転して人を死傷させた場合、危険運転致死傷罪の故意や責任能力を問えないのが通常と考えられた。 
 
<事案>
73歳の高齢の被告人が、被害者6名に自動車を衝突させて死傷させた。

検察官:被告人を自働車死傷法3条2項の危険運転致死傷法3条2項の危険運転致死傷罪で起訴し、本件犯行時にてんかんにり患しており、その影響により意識障害に陥っていたと主張。

弁護人:てんかんのり患を否認し、認知症を主張。 
 
<判断>
●I医師が被告人がてんかんにり患していたと鑑定した点
①I医師がてんかんや脳波を専門とする医師として、てんかんの診断に関する専門的な知見と豊富な臨床経験を有している
②被告人の過去の入通院先の診療録等を検討して、発作による一時的な病状の悪化と回復を繰り返していることを根拠に診断

信用性が高い。
 
●I医師が、被告人が、治療が必要な程度の認知症を有していたとは考えられないとした点 
①I医師は、刑事事件の鑑定の経験がなく、てんかんが事故に及ぼした影響の有無や程度の検討が求められていることを十分に理解しないまま鑑定を行っている
すなわち、被告人車両が歩道上に多数設置された車止めに衝突することなく相当の距離を走行したことを把握していないなど、鑑定の基礎となる資料に対する明らかな検討不足があり、そのために重要な事実関係に関し明らかな誤解に基づく判断をしている。
②I医師は、弁護人から歩道上での被告人の走行状態などに関する指摘を受けると、1点凝視の症状を伴うてんかん発作が生じていたとの証言を撤回し、被告人の覚醒レベルに変動があったとする説明⇒鑑定意見を支える最も重要な根拠となる症状がなかったことを認めたものであり、てんかん以外の疾患を原因とすることを除外できる根拠が示されているとは認め難い
③本件の4日前の脳波検査の結果も根拠but脳波検査の検討において重要となるなずの記録条件等を慎重に吟味した形跡がうかがえない
④被告人は、本件事故当日、妻に対して座椅子を買いに行くと述べていたのに、財布や携帯電話も自宅に置いたまま、事故現場まで約320キロの道のりを約7時間かけて走行しており、このような目的に合わない長距離時間の運転がてんかん発作による意識障害により生じたとみるには無理がある。

I医師の鑑定意見の信用性を否定し、
本件事故は、てんかんの発作により被告人の意識レベルの変動があったと考えなければ説明がつかないものではなく、
むしろ、被告人の認知機能の低下により本件事故が引き起こされた可能性も一概には否定できない。


危険運転致死傷罪の成立を否定し、予備的訴因である過失運転致死傷罪が成立するにとどまる。

判例時報2401

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2019年6月21日 (金)

主幹事証券会社の責任が問題となった事案

東京高裁H30.3.23      
 
<事案>
上場廃止した株式会社Aの株主Xらが、A社の役員、A株式会社の募集又は売出しに関与した元引受証券会社(主幹事証券会社はY)及び受託証券会社、売出しに係る株式の所有者、東京証券取引所及び日本取引所自主規制法人らに対し、
金商法21条1項1号・2号・4ごう、22条1項及び17条、会社法429条2項又は民法上の不法行為責任に基づき、株価下落等に係る損害賠償を求めた。 
 
<原判決>
元引受契約を締結した主幹事証券会社の金商法上の責任を肯定 
 
<判断>
主幹事証券会社の責任を否定 

金商法21条2項3号及び17条ただし書の「相当な注意」の意義について
①金商法21条1項4号の免責要件を、財務情報のうち、
(ア)「財務計算」に関する書類に関する部分(「財務計算部分」)の虚偽記載についてはそれを知らなかったこと
(イ)財務計算部分以外の部分の虚偽記載については「相当な注意」を用いたこととし、

金商法17条の免責要件を、すべての財務情報について「相当な注意」を用いたこととして、
③前記①(ア)によって、元引受証券会社が免責されることにより、積極的な調査をしない姿勢を招き、投資者保護の目的に欠けるとの懸念については、金商法17条の責任によって補完される。

有価証券届出書に記載された財務情報で監査証明を受けたもの(財務経産部分)に虚偽記載があった場合に、元引受証券会社はどのような調査を行っていれば「相当な注意」を用いたといえるかについて、
①元引受証券会社は、引受審査において、会計監査を経た財務情報(財務経産部分以外のものを含む。)の部分については、
公認会計士等による監査結果の信頼性に疑義を生じさせるような事情の有無を調査・確認し、このような事情が存在しないことが確認できた場合には、当該監査結果を信頼することが許され、
調査・確認の結果、公認会計士等による監査結果の信頼性に疑義を生じさせるような事情が判明した場合であっても、自ら財務情報の正確性について公認会計士等と同様に実証的な方法で調査する義務はなく、一般の元引受証券会社を基準として通常要求される注意を用いて調査結果に関する信頼性についての疑義が払拭されたと合理的に判断できるか否かを確認するために必要な追加調査を実施すれば足りる

Y社の審査担当者が、
①会計監査人が預金通帳の原本を確認したと認識していたこと
②第一投書受領前に国内及び海外の取引先を訪問して販売実績を確認していたこと、
③第二投書受領後にも会計監査人から意見を得ていたこと
等の事実

一般の元引受証券会社を規準として通常要求される注意を尽くしたか否かとの観点から、Y社が「相当な注意」を用いていたといえる。

金商法上の責任は否定される
 
<解説>
原審:財務計算部分についても、元引受証券会社は、無条件にその内容を信頼することが許されるのではなく、会計監査の結果の信頼性を疑わせる事情の有無についての審査義務を負うとする有力説の立場に依拠。
本判決:通説的な見解に立った。 

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2019年6月20日 (木)

(自賠法16条1項に基づく請求権の額+労働者災害補償保険法12条の4第1項により国に移転して行使される請求権の額)>自動車損害賠償責任保険の保険金額の場合の被害者の取り分。

最高裁H30.9.27        
 
<事案>
自動車同士の衝突事故により被害を受けたXが、加害車両を被保険自動車とする自動車損害賠償責任保険(「自賠責保険」)の保険会社Yに対し、自賠法16条1項に基づき、保険金額の限度における損害賠償額及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めた事案。 
自動車の運行によって生命または身体を害された者(「被害者」)の同条項に基づく損害賠償額の支払請求権(「直接請求権」)と政府が被害者に対し労災法に基づく給付(「労災保険給付」)を行ったことから同法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が競合する場合の相互の関係(争点①)及び
自賠法16条1項に基づく損害賠償額支払請求が履行遅滞となる時期(争点②)が争われた。
 
<事実>
Xは、平成25年9月8日、トラック乗務員として中型貨物自動車を運転中、運転者の前方不注視等の過失により反対車線から中央線を越えて侵入した加害車両と正面衝突⇒左肩腱板断裂等の障害を負い、左肩間接の機能障害等の後遺障害が残った。 
本件事故当時、加害車両についてYを保険会社とする自賠責保険の契約が締結。
政府は、平成27年2月までに、に対し、労災保険給付として、療養補償給付、休業補償給付及び障害補償給付を行った。
⇒本件事故に係るXのYに対する直接請求権が、労災法12条の4第1項により、前記の労災保険給付の価額の限度で国に移転。
Xが前記の労災保険給付を受けてもなお填補されない本件事故に係る損害額は、障害について303万5476円、後遺障害につき290万円。
本件事故に係る自賠責保険の保険金額は、傷害につき120万円、後遺障害につき224万円。
 
<判断>
●争点① 
交通事故の被害者が未填補損害について直接請求権を行使する場合は、
他方で労災法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行進され、被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても、
被害者は、国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で損害賠償の支払を受けることができる。 
 
●争点② 
自賠法16条の9第1項にいう「当該請求に係る自動車の運行による事故及び当該損害賠償額の確認をするために必要な期間」とは、保険会社において、被害者の損害賠償額の支払請求に係る事故及び当該損害賠償額の確認に要する調査をするために必要とされる合理的な期間をいい、
その期間については、自己または損害賠償額に関して保険会社が取得した資料の内容及びその取得時期、損害賠償についての争いの有無及びその内容、被害者と保険会社との間の交渉経過等の個々の事案における具体的事情を考慮して判断すべき

元判決中、344万円に対する訴状送達の日の翌日から本判決確定の日の前日までの遅延損害金の支払請求を棄却した部分を破棄し、同部分につき本件を原審に差し戻し。
 
<解説>
●争点①
被害者の直接請求権と社会保険者が代位取得した直接請求権が競合し、それらの合計額が自賠責保険金額を超える場合において、被害者が社会保険者に優先して自賠責保険金額の限度で損害賠償額の支払を受けることができるか?

最高裁H20.2.19:
市長が老人保健法に基づく医療の給付を行って直接請求権を代位取得し、これを行使した事案において、被害者優先説を採用

基本的に案分説をとっていた自賠責保険実務の運用は変更され、
老人保健法の事案のほか健康保険等の事案においても被害者優先説に従った取扱い。
but
労災保険の事案では、案分説に従った運用が維持。

A:案分説

①各直接請求権の同質性と平等分割の原則(民法427条)を根拠とする見解
②労災保険給付は損害填補を目的とする、あるいは損害填補に当たる給付が含まれる点で健康保険等の給付とは異なる

vs.
労災保険給付は損害填補を目的とするものではあるが所得保障的機能も有しており、一方、他の社会保険給付も損害額からの控除により損害填補の機能を果たしていることからすれば、損害填補の性格を強調して労災本件給付を他の社会保険給付と別異に取り扱う合理的な理由はない

B:被害者優先説(学説の多数派)

求償権の代位取得は被害者の二重利得の禁止及び加害者の免責阻止といった保険の技術的ないし政策的要請等から認められるものにすぎず、損害填補を目的とする被害者の直接請求権の行使を阻害してまで社会保険者が被害者と対等の地位に立つと解すべきでない
案分説に従うと、社会保険者と自賠責保険の保険会社のいずれに対し先に請求するかによって損害の填補額に不合理な差異が生じる

本判決は、
自賠法16条1項が被害者の直接請求権を認めた趣旨及び労災法12条の4第1項が求償権の代位取得を認めた趣旨に鑑み、被害者優先説を採用。
 
●争点② 
自賠法16条1項に基づく損害賠償支払債務は、期限の定めのない債務として、民法412条3項により保険会社が被害者から履行の請求を受けた時に履行遅滞となるというのが確立した判例理論。
but
平成20年商法改正により成立した保険法が損害保険の保険給付の履行期について21条で規定したのとの平仄を合せる形で、自賠法も損害賠償額支払債務の履行期について16条の9を新設。

本件では、経過するまでは保険会社が遅滞責任を負わないとされる同条1項にいう「事故及び当該損害賠償額の確認をするために必要な期間」の意義が問題。
同条項が倣った保険法21条2項を同条1項と対照してみると明らかなように、保険者が履行期に確認すべき事項は限定されており、保険者に立証責任のある免責事由等は確認がされていなくとも遅滞責任が生じる余地はある

保険者が保険給付を行なう期限を定めなかった以上、必要最低限の確認をするために必要な期間に限って遅滞責任を負わないこととするのが相当。

保険法  第二一条(保険給付の履行期)
保険給付を行う期限を定めた場合であっても、当該期限が、保険事故、てん補損害額、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが損害保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間を経過する日後の日であるときは、当該期間を経過する日をもって保険給付を行う期限とする。
2 保険給付を行う期限を定めなかったときは、保険者は、保険給付の請求があった後、当該請求に係る保険事故及びてん補損害額の確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わない。
3保険者が前二項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当たり、保険契約者又は被保険者が正当な理由なく当該調査を妨げ、又はこれに応じなかった場合には、保険者は、これにより保険給付を遅延した期間について、遅滞の責任を負わない。

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2019年6月19日 (水)

市立記念館条例を廃止する条例の制定行為の違法性

青森地裁H30.11.2      
 
<事案>
Y(青森県十和田市) が、地自法244条1項所定の公の施設として十和田市立新渡戸記念館(本件記念館)を設置し、十和田市立新渡戸記念館条例(本件記念館条例)において、その設置及び管理に関する事項を定めていたが、平成27年6月26日、本件記念館条例を廃止する条例(本件廃止条例)を制定

Xが、Yに対し、本件廃止条例制定行為が行訴法3条2項所定の処分に当たることを前提として、本件廃止条例制定行為の取消しを求めた
 
<経緯>
当初、本件廃止条例制定行為の処分性が否定され訴え却下
⇒控訴審で処分性が認められ、原判決取消しの上で第一審に差し戻された。 
 
<主張>
①本件廃止条例行為の前提となった本件耐震診断は不合理であり、処分の根拠とされた事実に誤りがある。
②仮にそうでないとしても、本件建物を本件記念館として使用する公益上の必要は消滅しておらず、Yの財政状況に問題がない⇒新たな建物を建築せずに本件記念館を廃止することは不合理であるとして、裁量権行使の逸脱又はその濫用がある。 
 
<判断>
主張①について:
不合理があるとはいえない。
主張②について:
不合理があるとはいえない。

本件記念館を廃止した場合にXが失う諸利益(Yによる本件資料の維持修理や本件資料に係る賃料等)については、本件各契約等において本件記念館が廃止され得ることを前提とする条項がある⇒将来本件記念館が廃止されてXが前記諸利益を失い得ることは当初から排除されていない
また、その具体的不利益も大きなものとはいえない。


本件廃止条例制定行為に係るYの裁量権行使に逸脱又はその濫用があるということはできない
 
<解説>
本判決:
公の施設の廃止が地方公共団体の裁量的判断に委ねられているとした上で、かかる裁量的判断も裁量権行使に逸脱又はその濫用がある場合には違法となる
公の施設を廃止する条例を制定する行為について、行訴法3条2項所定の処分としての違法性について判断した事例では、いずれも本判決と同様に、公の施設の廃止について地方公共団体の裁量を認め、裁量権の行使に逸脱又は濫用があるか否かによって違法性を判断。

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2019年6月18日 (火)

捜査でのビデオ撮影の可否が問題となった事案

刑事p103
①さいたま地裁H30.5.10
②大阪地裁H30.4.27      
 
<事案①>
被告人は暴力団組員。
覚せい剤取締法違反および窃盗の罪のほか、平成28年3月16日、同僚組員と共謀して、対立する暴力団組長の管理する自動車に放火した建造物等以外放火罪、及び、同暴力団本部事務所に放火しようとして火炎びんを投げ入れたものの階段の一部をくん焼させたにとどまる非現住建造物等放火未遂、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の罪で起訴された。

警察は、本件放火事件に先立ち、被告人とは別の、既に逮捕状がでていたAの逮捕に向けて、Aの所在確認及び行動パターンの把握のために、Aの立ち寄り先であった被告人方の近隣場所にビデオカメラを設置し、被告人方前の公道及び被告人方玄関を24時間連続で撮影
・・・放火現場から発見されたものと同じ赤色ガソリン携行缶を運搬する被告人の公道が撮影されていた。

検察官がそのビデオ撮影に関する証拠を本件放火事件の証拠として提出⇒弁護人は違法収集証拠として排除すべき旨を主張
 
<事案②>
被告人はQ2委員会(「Q派」)の活動家。
警察官は、被告人が偽名でホテルに宿泊したという旅館業法違反の建議で、被告人の居住状況を確認するために被告人が賃借するマンションの一室である301号室玄関ドア付近及び許容廊下を望遠にビデオカメラで撮影
同ビデオには301号室に出入する人物が写っており、検察官は、被告人において同人物が殺人犯として逃亡中の活動家Zであると認識していたとして被告人を犯人蔵匿罪で起訴し、ビデオ映像から採取した静止画像を同罪の非供述証拠として提出。

弁護人は、本件ビデオ撮影は強制処分に当たるので令状主義に違反するとして証拠排除すべき旨を主張。
 
<判断①> 
●ビデオ撮影の違法性 
本件撮影の「真の目的」がAの逮捕のためであったかについては疑問を提起しつつも、逮捕のためにAの所在や行動パターンを把握する目的で立ち寄り先である被告人方前のビデオ撮影をするという捜査上の必要性は肯定
but
本件ビデオ撮影の相当性につき、
平成28年初め以降、Aの被告人宅立寄りが確認されず継続撮影の必要性が低下した後も、約5か月間、漫然と撮影を継続していた点を「不適切」とし、
撮影後映像として保存されたものの中に被告人方玄関ドア内部の様子のほか、犯罪と無関係な人物等が含まれていたことなど⇒警察において捜査対象の事件との関連性を検討することなく漫然と映像を保存し続けていた点でプライバシーに対する配慮が不足していた

類似事案と比べて、本件ビデオ撮影はプライバシー侵害の程度が高かったと評価し、「任意捜査として相当と認められる範囲を逸脱した違法なもの」と結論
 
●証拠能力 
被告人自身の嫌疑ではない他者の逮捕目的でのビデオカメラの設置という本件の特殊性

警察において本件ビデオ撮影の必要性、緊急性、相当性を適切に検討せずに漫然と撮影を続けていた点で違法の程度は重大
②警察官らの態度は、プライバシーを軽視し遵法精神を大きく欠いていたうえ、裁判時においても本件撮影の問題点を理解していない
⇒将来の違法捜査抑止の観点からも証拠を排除する必要性が高い
本件ビデオ撮影による関係証拠の証拠能力を否定
 
<判断②>
●強制処分該当性 
ビデオ撮影の対象が301号室玄関ドア及びその付近の共用廊下にとどまっており、「通常、他人から容ぼう等を観察されること自体は受忍せざるを得ない場所」⇒プライバシーの保護の合理的期待が高い場所ではないとして、令状を必要とする強制処分には当たらない
 
●ビデオ撮影の違法性 
任意捜査としての違法性を検討し、

本件ビデオ撮影の必要性:
被告人に対する旅館業法違反の捜査の一環として、被告人の301号室における居住の有無及び実態を明らかにする必要があった⇒氏名不詳者の出入り状況を含めて被告人の居住実態を確認するために相当期間継続的にビデオ撮影する必要があった

本件ビデオ撮影の相当性:
①撮影態様が、プライバシー保護の合理的期待が高いとはいえない301号室玄関付近を撮影したにとどまる
撮影期間も3か月未満で当初の捜査目的と必要性に照らして不相当に長いとはいえない
⇒相当性も肯定
任意捜査としても適法
 
<解説>
●任意捜査としての許容性 
ア犯罪発生時ないしその直後の犯人特定及び証拠保全を目的とした撮影
イ将来の犯罪発生を想定した犯人特定及び証拠保全を目的とした撮影
犯罪発生後の犯人逮捕に向けた人物特定の証拠を作出するための撮影
エ特定の犯罪とは無関係に標的とされた人物の行動監視を目的とした行政警察活動としての撮影

今回は、ウ類型に属するものであるが、ビデオカメラによる長期間の継続的撮影の結果、その過程で得られた、当初の設置目的ではなかった別の犯罪事実に関する証拠を被告人に対する起訴事実の有罪証拠となしうるか?
従来ウ類型の判例では、ビデオカメラ設置時点での必要性の判断において、事案の重大性と撮影対象者が犯罪を行ったと疑うに足りる「相当な嫌疑」(東京地裁H1.3.15)ないし「合理的な嫌疑」(東京地裁H17.6.2)の存在が考慮要素。

①事件では、被告人に対する犯罪の「合理的な嫌疑」は存在せず、
②事件では、被告人に対する軽微な犯罪が捜査対象とされており重大な事案ではない。
but
長期間の継続撮影の結果得られた映像証拠が、後日判明した被告人に対する重大な犯罪(①事件では放火罪、②事件では逃亡殺人犯の蔵匿罪)の証拠となった⇒証拠能力が問題。
両判決の任意捜査としての枠組みは、いずれも捜査目的達成のための必要性と相当性の2要件について判断。
(最高裁H20.4.15を踏襲)

最高裁決定同様、緊急性については言及せず。

長期間の継続ビデオ撮影の必要性が認められる場合、もはや緊急性は独立の要件ではなく必要性の一事情として考慮されるにとどまると考えられる。 

◎ 両判決の結論の差 
①事件:
当初の捜査目的(別人の逮捕目的)を認めつつも、
本来的には第三者の地位にある被告人方の撮影であることにつき警察のプライバシー保護の配慮が乏しく、不必要に長期間のビデオ撮影を漫然と継続した点を重視⇒相当性を否定。
②事件:
当初の捜査目的(被告人の居住実態の確認)の必要性⇒ビデオ撮影の期間が不必要に長期とはいえないとして相当性を肯定。

両事件ともに警察のビデオカメラ設置の目的は警察官の説明どおりではなく、
①事件では暴力団、②事件では「Q3派」アジトの動向監視に真の目的があった可能性⇒被告人を撮影対象とするにつき具体的な犯罪との関連性が失われるので、撮影行為の必要性が否定され、各ビデオ撮影は任意捜査として違法とされた可能性。

●強制処分該当性に関する判示 
無令状による個人の容貌等の撮影には、憲法上の権利であるプライバシーの権利との抵触が問題。
最高裁をはじめとする従来の判例は、容貌等の撮影が任意処分か強制処分かについては明言していない
撮影行為の任意処分性を前提にその限界を画そうとしていると理解される。

判例時報2400

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2019年6月16日 (日)

有期労働契約を締結して郵便関連業務に従事していた人の就業規則の定め(65歳に達した日以後は更新しない)と労働契約法7条の合理的な労働条件等

最高裁H30.9.14      
 
<事案>
Y(日本郵便株式会社)との間で有期労働契約を締結して郵便関連業務に従事していたXらが、Yによる雇止めは無効と主張
Yに対し、
①労働契約上の地位の確認及び
②雇止め後の賃金の支払等
を求めた 
 
<事実>
郵政民営化前の郵政事業は、日本郵政公社(「旧公社」)が実施していたが、郵政民営化に伴い設立された承継会社(5社)が旧公社の業務等を承継し、旧公社は平成19年10月1日をもって解散。
Yは、承継会社のうち2社の合併により発足した会社。 
Yは、平成19年10月1日、期間雇用社員就業規則を制定。

本件規則10条2項(「本件上限条項」)は、「会社の都合による特別な場合のほかは、満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後、雇用契約を更新しない。」と規定。
旧公社は、平成19年9月、Xらの事業所を含む事業場において、労働組合等に対し、承継会社における就業規則(本件規則を含む。)の制定について意見を聴取する手続を行った。
本件規則は、同年10月1日から施行されたが、本件上限条項は、平成22年10月1日から適用⇒その後、労働組合の申し入れを受けて、その適用開始時期を更に6か月延期し、平成23年4月1日から適用。
旧公社の非常勤職員について、関係法令等には、非常勤職員が一定の年齢に達した場合に以後の任用を行わない旨の定めはなかった。
 
<原審>
●Yにおける期間雇用社員の更新手続は形骸化しており、XらとYとの間の労働契約は、実質的に無期労働契約と同視し得る状態になっていた⇒本件各雇止めは、解雇に関する法理の類推により無効になる。 

●本件上限条項に基づく更新拒否の適否の問題は、本件各雇止めが無効になるか否かとは別の契約終了事由に関する問題として捉えるべき。
本件上限条項の定める労働条件が労働契約の内容になっている⇒本件各雇止めは、本件上限条項により根拠付けられた適法なもの
⇒Xらの労働契約上の地位の確認及び本件各雇止め後の賃金の支払を求める請求をいずれも棄却。
旧公社の非常勤職員につき年齢による再任用の制限がないという労働条件が旧公社からYに引き継がれるとした上で、本件上限条項によって旧公社当時の労働条件を変更する合理性が認められる。
 
<判断>
原審の判断のうち、本件各雇止めが適法であるとした部分は結論において是認できる
その余の判断は是認することができない。 
 
郵便関連業務に従事する期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めは、次のア、イなど判示の事情の下においては、労基法7条にいう合理的な労働条件を定めるもの
ア:前記期間雇用社員の従事する業務は屋外業務、立った状態での作業、機動車の乗務、機械操作等であるところ、当該就業規則の定めは、高齢の期間雇用社員について、これらの業務に対する適性が加齢により逓減し得ることを前提に、その雇用管理の方法を定めたもの
イ:当該就業規則の定めの内容は高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に抵触するものではない

日本郵政公社の非常勤職員であった者が郵政民営化法に基づき設立されて同公社の業務等を承継した株式会社と有期労働契約を締結して期間雇用社員として勤務している場合において、
当該株式会社は、
①当該株式会社が同公社とは法的性格を異にしていること
②当該者が同公社の解散する前に同公社を退社していること
など判示の事情の下においては、
期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨をその設立時の就業規則に定めたことにより、同公社当時の労働条件を変更したものということはできない

①期間雇用社員に係る有期労働契約は、満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めが当該労働契約の内容になっていること
②期間雇用社員が雇止めの時点で満65歳に達していたことなど
判示の事情の下においては、当該時点において、実質的に期間の定めのない労働契約と同視し得る状態にあったということはできない
 
<解説>  
有期労働契約は、契約期間の満了により当然に終了するのが原則
but
判例法理上、
①有期労働契約があたかも無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、又は
②労働者において期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には、解雇権濫用法理が類推適用され、当該有期労働契約の雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときには
効力を否定すべきものとされていた。 

この判例法理(雇止め法理)は、労契法の平成24年改正において、
同法19条として明文化。
①実質無期契約タイプ(同法19条1号)
②期待保護タイプ(同条2号)
実質無期契約タイプに該当し得る客観的事情⇒労働者の雇用継続への期待(主観的事情)も合理的なものであると解される
⇒①に該当するにもかかわらず、②に該当しないといった事態を想定することは、通常困難。
 
●本件各雇止めは、本件上限規則によりされた⇒本件上限規則が本件各労度契約の内容となっていたか?が問題
 
◎就業規則の契約規律の有無:
①判例法理として、合理的な内容の就業規則は、当該条項に対する合意が認定できる場合でなくとも、契約内容となる効果が認められ(最高裁昭和43.12.25)
就業規則に法的規範としての拘束力が生ずるためには、その適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する(最高裁H15.10.10)
(「原始就業規則の合理性法理」)

労契法7条において明文化
◎ 就業規則が労働契約の締結後に労働者に不利益に変更された場合:
判例法理上、就業規則の変更によって労働条件を一方的に変更することは許されないのが原則
but
就業規則の不利益変更が合理的であれば、これに反対する労働者も拘束する。

就業規則の不利益変更の合理性:
①就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度
②使用者側の変更の必要性の内容・程度
変更後の就業規則の内容自体の相当性
④代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
労働組合等との交渉の経緯
⑥他の労働組合又は他の従業員の対応
⑦同種事項に関するわが国社会における一般的状況等
の7つの要素を総合考慮して判断(最高裁H9.2.28)
(「就業規則の合理的変更法理」)

労契法10条で明文化。
原始就業規則の合理性法理にいう「合理性」:
労働者が就業規則を前提として、これを受け入れて採用されたという状居の中、当該就業規則の定める労働条件の内容それ自体の合理性を問題とする。

就業規則の合理的変更法理にいう「合理性」:
従前の労働条件と比較した不利益を観念した上で、変更の全プロセスを対象として、諸事情を総合考慮して判断するもの。

前者の合理性の方が後者の合理性よりも広く認められる。
 

①旧公社の承継会社は、旧公社の事業を全て承継
②この事業承継は、郵政民営化という特殊な組織変動によるもの

旧公社の労働条件と被告の労働条件の関係は、事業承継の根拠である郵政民営化法に基づき検討すべき

同法は、当該職員の労働条件は別途明示することとしており(170条)、承継会社が旧公社の労働条件を当然に承継することとしているわけではない
同法は、承継会社が、旧公社の労働条件に配慮しながら、承継会社の労働条件を別途決定することを予定しているのであって(170条、173条)、承継会社が法的性格を異にする旧会社の労働条件を前提に、これを変更することを想定しているとは解し難い

最高裁H6.7.14:
非常勤の国家公務員である日々雇用職員を認容予定期間満了後に再任用しない措置につき国家賠償責任の成否が問題とされた事案において、
日々雇用職員につき解雇権濫用法理が類推適用されないことを前提として判断。
下級審裁判例も、旧公社の非常勤職員(期限付任用)に対する解雇権濫用法理の類推適用を否定。

旧公社の非常勤職員(日々雇用職員)であったX1らは、旧公社当時、雇止め法理の適用を受ける法的利益を有していたということはできず、本件上限条項によって当該利益を制約されるという関係にはそもそもなかった

本判決:
本件上限条項が旧公社当時の労働条件を変更するものではない旨を判断。
これを前提として、原始就業規則の合理性法理(労契法7条)に基づき、本件上限条項の契約規律効を検討。

●本判決は、Yが期間雇用社員の労働条件を定めるに当たり、旧公社当時の労働条件に配慮すべきであったとしても、本件上限条項の適用開始を猶予することにより相応の配慮をしたものとみることができるとしているが、この説示は、Yが郵政民営化に伴い設立されて、旧公社の人的・物的組織を全て承継したという本件事案の特殊性を踏まえてされたものであると解される。

国立病院等の独立行政法人化に伴い従前の労働条件が当然に承継されるわけではない⇒原始就業規則の合理性法理を適用すべきとしつつ、
従前の労働条件を十分に考慮して合理的な内容のものであることを要するとした裁判例(東京地裁H18.12.27)。

本件各有期労働契約は、本件上限条項の契約規律効により、客観的にみて、満65歳以降の契約更新はせず、期間満了により終了することが予定されていた

Xらと被告との間の各有期労働契約は、本件各雇止めの字手において、実質的に無期労働契約と同視し得る状態にあったということはできない。 

菅野:
雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されない場合として、「ある程度の更新はあるが、更新限度条項などから、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っているとも、雇用継続への合理的な期待があるとも認められず、解雇権濫用法理の類推適用が行われないタイプ」がある。

●原判決:
本件上限条項に基づく更新拒否の適否の問題は、本件各雇止めが無効になるか否かとは別の契約終了事由に関する問題として捉えるべきものであるとしている。
vs.
定年制は、雇用期間の定めがないからこそ、契約終了事由として位置づけられるのであって、本件各雇止めの理由(根拠・動機)を規定するにすぎない本件上限条項が本件各雇止めと別個独立の契約終了原因であるということはできない。 

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2019年6月13日 (木)

法人の善意・悪意の判断について

東京地裁H29.10.27      
 
<事案>
Y1株式会社から土地を買い受けた株式会社Xが、本件土地の地中にコンクリート等の障害物が存在していたと主張⇒Y1に対し、売主の瑕疵担保責任を追及し、障害物の除去費用1憶416万円等の損害賠償を請求。 
Xは、吸収分割によりY1の酒造事業に関する権利義務を承継た株式会社Y1に対し、吸収分割契約は双方代理により無効であり又は詐害行為に当たる等と主張

主位的に、同吸収分割契約のうち特定の不動産の分割承継に係る部分の詐害行為取消し及び同不動産についての所有権移転登記の抹消登記手続を求め、

予備的に、同吸収分割契約のうち資産承継に係る部分の詐害行為取消し並びに価格賠償、会社法22条1甲の商号続用責任及び法人格否認の法理に基づき、Y1と連携して1億416万円等の支払を求めた。
 
<規定>
民法 第五七二条 売主は、第五百六十条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

商法 第五二六条 〔買主による物の目的物の検査及び通知〕
2前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕か疵しがあること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が六箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。
3前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。
 
<争点>
XのY1に対する請求について、
X・Y1間の本件土地の売買契約(「本件売買契約」)には瑕疵担保免責特約が付されており、また、XがY1に対して本件地中障害物の存在を通知したのが本件売買契約から6か月を経過した後
法人であるY1が本件売買契約の際に本件地中障害物の存在を認識していたかどうか(悪意であったかどうか)が争点。
(民法572条、商法526条2項後段、3項) 
 
<判断> 
XのY2に対する請求は、いずれも理由がないとして棄却
Y1に対する請求(売主の瑕疵担保責任による損害賠償請求)は認容。 
 
<解説>
民法101条2項は、代理行為の効力がある事情を知っていたこと(悪意)によって影響を受けるべき場合に、その事実の有無を代理人について決するという原則(同条1項)の例外として、
特定の法律行為をすることを委託された代理人が本人の指図に従って代理行為をした場合は、本人は自ら知っていた事情について代理人がこれを知らなかったことを主張することができないと規定。

「本人の指図に従って」代理行為をしたというのは、当該行為をすることが本人の意思によって決定されていることを意味するのであって、それ以上に本人の指図を受けるという特別な事実が必要なわけではないと解されている(大判明41.6.10)。

学説:本人が問題の行為につき代理人をコントロールする可能性があれば、民法101条2項を(拡張)適用してよいとする見解が通説。
 
<判断>
法人の場合は、その善意・悪意は法人を代表又は代理した者について決せられるのが原則であることを示しつつ、
民法101条(1項及び2項)の趣旨は、結局、代理人による意思表示がされた場合の善意又は悪意は、意思表示の内容を決定した者について判断するとしたものと解される。

代表者・代理人のみならず、当該法律行為の意思決定に重要な影響を及ぼした者の主観的態様をも考慮するのが相当。 

本件においては、本件売買契約当時は売主の代表取締役を退任していたが、その前約60年間にわたって代表取締役を努め、経営に大きな影響力を有していたと認定された本件売買契約時の代表取締役の父親について、本件売買契約の意思決定に重要な影響を及ぼした者と評価し、
個人が当該地中障害物の存在を認識していたことを理由に売主である法人の悪意を認めた。

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2019年6月12日 (水)

市の非常勤職員と市長によるNPO法人に対する名誉毀損(否定)

津地裁H30.5.10      
 
<事案>
Yは、Xが専務理事などを努める特定非営利活動法人(「NPO法人」)に啓発冊子事業及び相談業務等を数年間委託。
Xが、そのような状況下で、
①Yの非常勤職員による虚偽の指示に従い、NPO法人について誤った決算報告書を作成し、
②Y市長が行った市議会での答弁の内容により名誉を毀損された
⇒これらの行為によって、Yからの受託事業が終了するなどして報酬を失い、精神的苦痛を被ったとして、国賠法1条1項による損害賠償として、得べかりし利益(受託事業等による報酬2年分)及び慰謝料並びに遅延損害金の支払を求めた。 
 
<争点>
①Yの非常勤職員による指示ないし説明に国賠法1条1項の違法性があるか
②Y市長の発言に国賠法1条1項の違法性があったか 
 
<判断>
●争点①について 
地方公共団体の相談業務の担当職員による助言と職務行為上の注意義務
助言、相談、h情報提供業務を担当する地方公共団体の職員は、・・・職務上の知見に基づき、可能な限り正確な情報を提供すべき義務を負う
but
条例等に関する事務と関連性が低い事柄について、当該職員が客観的に正確な情報を提供しなかったとしても、行政サービスとしての相談業務の性質が希薄である場合には、当該職員が、情報提供の内容について職務上の注意義務に違反したとは当然にはいえない。

地方公共団体の・・・相談業務の担当職員による助言が職務行為上の注意義務に反するものか否かは、助言の内容のみならず、その前提となる相談内容と条例やその運用に関する事務との関連性、相談者の地位、知見の有無、程度等を考慮して判断するのが相当。

Yの非常勤職員による助言は、決算報告書の支出額を予算時の支出額と同額にすることを示唆する等一部不適切ともいえる内容が含まれるものの、
本件における当該非常勤職員がNPO法人の理事の役職などを兼ねるという特殊な地位にあった上、説明内容もYの施策等との関連性が少ないNPO法人の理事会に提出する決算報告書に関わるもの

同職員による説明が職務行為上の注意義務違反を構成しない。
 
●争点②について
市長の議会での答弁について:
普通地方公共団体の長は、議長の審査上の必要がある場合、議会の求めに応じて、議案の説明等を行うために議会に出席すべき義務を負う(地自法121条)

普通地方公共団体の長が、議会における議員からの質疑に対して答弁するに際しては、住民相互間に種々の意見ないし利害の対立がある事項について言及することとなる⇒答弁内容は個別の住民の社会的評価に影響する可能性を包含

普通地方公共団体の長の議会での答弁における発言によって、結果的に個別の住民の社会的評価が低下したとしても、直ちに普通地方公共団体の長がその職務上の法的義務に違背するということはできない。

前述した観点に加え、個人の名誉の保護との調整にも鑑み、
市長が市議会での答弁において個人の社会的信用を低下させる発言を行う場合においては、
同発言の動機、目的、内容及び発言態様等を考慮し、当該市長が普通地方公共団体の長としての政治的判断を含む一定の裁量を逸脱したと言える場合国賠法1条1項にいう違法な行為があったとして、当該地方公共団体に国賠責任が肯定されるにとどまると解するのが相当。
Y市長の発言が、従前の業務委託契約につき、本件NPO法人の会計処理に問題があったとして、今後の契約を見直す必要があることに言及するものであって、市長の裁量には逸脱がない
 
<解説>
公務員による指示や説明の内容に関する国賠法上の違法の成否については、指示や説明を職務として求められる根拠法令等を検討し、具体的事案に即して注意義務の範囲を画する裁判例が大半。 
地方公共団体の長の市議会での発言に関する名誉毀損行為が職務上の注意義務違反に当たり、国賠法上の違法といえるかについて。

市議会での市長の答弁については、国会での演説、討論又は表決について院外で責任を問われないことが憲法上明らかである国会議員の言動(憲法51条)と同一に解することはできない
②他方で、地方議会における議案審査において、市長は、議案の趣旨や背景事情、行政としての今後の方針等を答弁により明らかにすることが求められている(地自法121条)

市議会での市長の答弁については、その性質上、一般的な名誉毀損の判断枠組みとは異なり、その職務上の必要性を加味した上で、国賠法上の違法性の有無について判断すべき。

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2019年6月11日 (火)

文部科学大臣の朝鮮中高級学校の高級部について、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則の指定をしないことと国賠請求

名古屋地裁H30.4.27      
 
<事案>
学校法人愛知朝鮮学園(「A学校法人」)は、その設置する愛知朝鮮中等学校の高級部(「B朝鮮高校」)について、
在学生を高等学校就学支援金の支給対象者とするために、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則1条1項2号ハ(「本件省令ハ」)による指定を受けるための申請⇒文部科学大臣から不指定処分

B朝鮮高校に在学していたXらが、
①本件指定処分、
②本件申請から本件不指定処分まで約2年3か月を要したこと
③本件省令ハを削除したことが、
Xらに対する関係で国賠法上違法であると主張し、
Y(国)に対して、慰謝料等を請求。
 
<問題>
文部科学大臣は、本件省令ハによる指定の基準等を定める規程(「本件規程」)を制定しており、
本件規程13条において、
「指定教育施設は、就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」旨を定めていた

本件ではYが、B朝鮮高校について、北朝鮮ないし朝鮮総連による「不当な支配」(教基法16条1項)が及んでいるおそれがあるため、本件規程13条の要件に適合せず、本件省令ハによる指定を受ける要件を満たさないと主張

B朝鮮高校の本件規程13条の要件適合性が問題となった。
 
<判断・解説>
●Xらの法律上保護される利益を侵害するような違法行為は認められない⇒Xらの請求を棄却。 
 
●支給対象校の指定要件適合性
 
本件規程の規定ぶり⇒本件規程13条に適合することが指定の実質的要件であり、教基法も同条にいう「法令」に含まれる。 

本件省令ハによる指定が受益処分に当たる
⇒通説に従い、同条の要件適合性の立証責任は申請者側が負う

具体的な審理の在り方として、
所轄庁による監督下において特段の指導や行政処分を受けたことがない旨を立証すれば、第1次的な立証責任を果たしたことなになる
②その場合、Yが本件規程13条の要件適合性を争うときには、Yにおいて、B朝鮮高校に関し、法令に基づく学校運営が適正に行われていないことを合理的に疑うべき事情があることを具体的根拠・資料に基づいて主張立証する必要がある。

学教法等の諸法令に基づく指導・処分等が行われていない限り、法令に基づく学校の運営は適正に行われていると事実上推認される
本件規程13条の要件適合性を否定する場合、法令に基づく学校の運営が行われていないとの疑いを抱いた事情が存在するはずであり、その判断過程は通常Yが最もよく認識している

B朝鮮高校に対する所轄庁からの指導・処分等は存在していない
but
①朝鮮総連のホームページでは、朝鮮総連の傘下団体が朝鮮学校の管理運営を行っていると記載されていたこと、
②A学校法人は、朝鮮総連の傘下団体名義で多額の借入債務を負担しているにもかかわらず、その詳細を全く把握しておらず、理事会・評議員会が自律的な意思決定を行っているとは考え難い
③朝鮮総連は朝鮮学校の教育内容に強い影響力を及ぼしており、その校長や教育に対し、北朝鮮の最高指導者を崇拝し、その考えや言葉を絶対視するような教育を行うべきことを繰り返し指導している

B朝鮮高校について、朝鮮総連ないしその傘下団体の介入により、教育本来の目的をゆがめるような不当な働きかけを受けている、すなわち、「不当な支配」に服していると合理的に疑わせる事情が存在したと認定。

外国人学校が本国又は在日民族団体と密接な関係を有することのみで「不当な支配」を認定することはできないものの、教基法16条1項の立法趣旨に照らせば、学校自身の自立性を害する態様で、中立かつ普遍不党性が確保されるべきである教育本来の目的をゆがめるような働き掛けが行われている場合には、「不当な支配」を認定し得るという理解を前提にしている。
 
●他事考慮
Xらは、本件不指定処分に当たり、文部科学大臣が政治外交上の考慮(他事考慮)をしたとして、本件不指定処分が違法であるとも主張。 

本判決:
本件不指定処分の背景に政治外交上の考慮も存在していたことを認定しつつ、
本件の事実関係の下においては、他事考慮によっては、本件不指定処分は違法とはならないと判示。

行政処分に当たり行政庁に裁量が認められるときに他事考慮が行われた場合であっても、行政処分の結論に影響を与えたと認められない限り、当該処分は違法とはならない(最高裁H18.11.2)ところ、
本件においては、本件規程13条の要件適合性が不指定処分の理由となっており、他事考慮の有無にかかわらず文部科学大臣は不指定処分をせざるを得なかった⇒他事考慮が本件不指定の結論に影響を与えないものと判断。
 
●手続的違法と国賠法上の違法 
本件不指定処分について、行手法が定める処分理由の提示が不十分であったとしつつ、Xらに対する関係で国賠法上の違法を基礎づけるものではない。

行手法の定める理由提示の趣旨が、行政庁の恣意抑制と申請者の不服申立てへの便宜付与にある(最高裁H23.6.7)
Xらは申請者であるA学校法人と別人格
手続的違法によりXらの本訴提起に特別な支障があったとは認められない
本件不指定処分に理由提示不十分の手続的違法が存在することによってXらの権利利益が侵害されたとは認められない。
 
●本件省令ハの削除の違法性 
Xらは、国賠請求の理由として本件省令ハを削除する省令改正の違法性も主張。
仮に本件省令ハが削除されていない場合であっても、Xらが就学支援金を受給できたとは考え難く、本件省令ハの削除によってXらの受給権やその期待権が侵害されたとは認められない
本件省令ハの削除がXらの人格権を侵害するものとも認められない

本件省令ハ削除の違法性を判断することなく、国賠請求を棄却
 
●民族教育と憲法・国際規約 
本判決:
民族教育を受ける機会を得ることはなどは、個人の人格的生存にとって必要不可欠なことといい得る⇒憲法13条、26条1項の趣旨に照らして尊重に値する。
but
就学支援金制度が国民の租税負担の下に行われるものであること
不指定処分の法的効果が就学支援金の受給資格が認められないというものにとどまり、民族教育を行なう自由自体を法的に規制するものではない

本件不指定処分等が憲法・国際条約に違反するとは認められない

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2019年6月10日 (月)

救急搬送時の検査義務違反が問われた事案。

東京高裁H30,.3.28      
 
<事案>
Aの相続人であるXは、Y1医師には救急搬送時に頭蓋内圧亢進症を疑って検査をすべき義務があるにもかかわらず、必要な検査をせずに退院指示をして、適切な治療を受ける機会を喪失させた過失がある⇒
Y1医師に対しては不法行為に基づき、
Y2市に対しては使用者責任又は債務不履行責任に基づき
連帯しての損害賠償を求めた。
 
<争点>
本件搬送時の検査義務違反の有無 
 
<原審>
Y1医師においてAに頭痛があるとの情報を得ていたものの、
①診察時には頭痛は消失しており、
②嘔吐についても頭蓋内圧亢進症の際の典型的なものとは異なる

その頭痛症状が一過性の片頭痛によるものと判断したことにつき医学的に不相当なものであったとはいえず、頭蓋内圧亢進症を疑い、CT検査を行うべきであったとは認められない。
 
<判断>
①本件搬送時、Aが既に頭蓋内圧亢進症を発症していたこと
②頭蓋内圧亢進症は、医学的知見によると、自覚的には頭痛、嘔吐及び視力障害が、他覚的にはには意識障害などがあり、嘔吐が終わらると頭痛は一時的に寛解し、また食べられるという特徴を有すること
③Y1医師は、収容要請において嘔吐、下痢、頭痛の症状があるとの情報を得ており、嘔吐、下痢の症状の後には通常は腹痛が見られるのに頭痛が発症していることにつき、疑問を抱き、頭痛の有無を聞いていること

頭痛と嘔吐の症状があり、かつ、嘔吐が終わると頭痛が寛解したことをもって、頭蓋内圧亢進症を疑うべきであった

Y1医師には、本件搬送時、Aの頭蓋内圧亢進症を疑って、CT検査等を実施すべき義務があったとし、その上で、同義務があったにもかかわらず、これを怠り、本件退院を支持し、かつ、Aの状態悪化に気づかず、本件退院指示を撤回しなかった過失がある。
 
<解説>
人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照らして、危険防止のために必要とされる最善の注意義務を要求される⇒結果発生を回避するために必要な情報を収集して適切な医療行為を行わなければならない(最高裁昭和36.2.16)。 

本判決において、Y1医師が、Aに頭痛があるとの情報を得て疑問を抱いていたにもかかわらず、その後検査を行うなどしなかった事実が、医学的知見に照らし、検査義務違反を認める鍵となった。

判例時報2400

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秘仏としていた本尊等を撮影した写真の使用・公開・販売等と宗教的人格権侵害等

徳島地裁H30.6.20      
 
<事案>
四国にある88か所の寺院に関する団体であるX1並びにそのうちの2つの寺院であるX2及びX3が、Yは、Xらの承諾を得ることなく撮影した本尊等の写真を用いた商品を販売した⇒宗教的人格権・氏名権侵害、不正競争法、債務不履行(撮影許可合意違反)又は不法行為に基づき、損害賠償、写真及び写真を用いた商品等の販売等の差止め及び廃棄を求めた事案。 
Yは、テレビ番組の制作に伴って、X1の協力を得て、X2、X3を含む各札所の本尊の写真撮影を行い、当該写真を用いた御影、書籍、掛け軸を販売したほか、当該写真について、常設展を含む展覧会を開催した。
 
<争点>
Yの行為が、
①X1との撮影許可合意に反するか
②Xらの宗教的人格権を侵害するか
③不正競争法2条1項1号及び2号の各要件をみたすか、
④Xらの氏名権を侵害するか
 
<判断>
争点①:
Yはテレビ局の従業員などではなく、YにおいてX1とテレビ局との合意に服する旨の特段の意思表示をしたことも認められない
⇒前記合意はYを拘束するとはいえない

争点②:
X1は、写真の被写体である各諸尊(像)の権利主体ではない⇒不法行為法上保護されるべき権利利益を有しない。
X2、X3については、Yが、X2及びX3の本尊を許諾なく撮影したと認定したうえ、かかるYの行為は、X2及びX3の宗教的人格権を侵害する

Yの行為の不法行為該当性を肯定し、Yが撮影した写真、当該写真のネガフィルム・電子データ及び当該写真を用いた御影・書籍・商品の廃棄を命じるとともに、当該写真の公開を禁じた。

争点③④:
Yが作成した御影等に記載されている「四国〇番」「〇〇寺」といった表示は、Yが作成した御影に用いられた仏像がどの札所の本尊等であるかを表示するものにすぎないから「商品等表示」には該当しない⇒氏名権を侵害するとは認められない。
 
<解説> 
●宗教的人格権について:
①宗教上の信念から絶対的無輸血の意思を有している患者に対し、医師が手術をするにあたって十分な説明をしなかったことから、人格権侵害を理由とする損害賠償を認めた事例(最高裁H12.2.29)
②静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益は、直ちに法的利益とは認められないとした事例(最高裁昭和63.6.1)。
③総理大臣の靖国神社参拝による不快の念なども、直ちに損害賠償の対象となる法的利益とはいえないとした事例(最高裁H18.6.23)

本件:
X2及びX3の本尊が秘仏で、原則として公開されることを予定されておらず、これが公開された際のX2及びX3の宗教的人格権の侵害の程度が大きい
Yは当該写真を用いた商品等の販売を行っており、X2及びX3の宗教的人格権の侵害が継続されるという事実

Yの行為がX2及びX3の宗教的人格権を侵害すると判断。
 
●争点③
本判決:
Yが作成した御影等に記載されている「四国〇番」「〇〇寺」といった表示は、当該寺院を指すものとして一般的に認識されているものの、
本来、御影は、参拝・納経の証として各札所で頒布等されているものであって、各札所以外の場所で販売されるものではなくYが作成・販売した商品の内容から、当該表示は、Yが作成した御影に用いられた仏像がどの札所の本尊等であるかを表示するものにすぎない⇒「商品等表示」には該当せず、氏名権を侵害するとは認められない

不正競争法にいう「不正競争」に該当するには、
Yが作成した御影に表示されたものがYの「商品等表示」に該当することが必要(同法2条1項1号、2号)。

「商品等表示」とは、
「商品の出所又は営業の主体を示す表示をいい、具体的には、人の業務に係る氏名、商号、商標(サービスマークを含む)等をいう」とされている。

●争点④ 
氏名権(名称権)が侵害された場合に、損害賠償を求めることができるほか、差止めや廃棄まで求めることができるとする例もある(参考:最高裁H18.1.20)が、
本判決は、Yが作成した御影等に表示された「四国〇番」「〇〇寺」という表示について、争点③と同様の理由で、氏名権侵害はないと判断。

判例時報2399

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2019年6月 8日 (土)

債権者一覧表への不記載で配当を受けられず⇒申立代理人・管財人の責任

金沢地裁H30.9.13      
 
<事案>
Xは、A社(破産会社)に対する売掛金債権(破産債権)を有していた株式会社。

破産会社が破産手続開始申立てに当たり破産債権者に提出した債権者一覧表にXが破産債権者として記載されず、破産裁判所から債権届出期間等の通知を受けることができなかったため、同破産手続において、債権届出をせず、配当を受けることができなかった。
⇒申立て代理人(Y2ら)と管財人(Y1)に対し、民法709条(併せて、選択的に、Y2につき民法715条1項本文、Y1につき破産法85条2項)に基づき、損害等の連帯支払を求めた。
 
<規定>
破産法 第八五条(破産管財人の注意義務)
破産管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。
2破産管財人が前項の注意を怠ったときは、その破産管財人は、利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する義務を負う。
 
<判断>
Y2ら(申立代理人)に対する請求を一部認容、Y1(管財人)に対する請求を棄却。 

破産会社の代理人弁護士であり、その旨表示して受任通知を送付したY2ら:
破産会社に対し委任契約上の善管注意義務を負うのみならず、
少なくとも、Xを含む受任通知を送付した個別の債権者との関係においても、信義則上、破産手続開始申立てに当たり、債権者一覧表に記載しないことについての正当な理由がある場合を除き、当該債権者を記載した債権者一覧表を破産裁判所に提出する義務を負う
but
Y2らは、破産会社を代理して破産裁判所に提出した債権者一覧表に正当な理由なくXを破産債権者として記載せず、その後もXが記載された債権者一覧表を追完しなかった
Xに対し共同不法行為責任を負う。

知れたる債権者に対する個別通知は破産管財人の職務とはされていないなど破産法の規定や運用

破産管財人は、破産債権者の調査については、原則として破産者(及びその代理人)に委ねれば足り、これを超えて、自ら積極的に各種資料を精査するなどして探索すべき法的義務を負わず、また、
Y1が、破産管財人として一般的に要求される平均的な注意義務を尽くしてその職務を遂行すればその過程において容易にXの破産債権の存在が判明したものとも認められない

Y1の善管注意義務違反及び不法行為を否定
 
<解説>
本判決では、Xにも過失があったとして、2割の過失相殺をした。
but
大阪高裁H18.7.5は、
破産裁判所書記官が債権者(原告)への通知を怠り原告が配当を受けられなかったことについての国賠請求事件において、過失相殺を否定。
(最高裁H18.1.19は、法令上債権者がとるべき措置が定められていない民事執行手続に関し、債権者の過失を否定) 

判例時報2399

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2019年6月 6日 (木)

公立小学校教諭によるわいせつ行為についての教育長・校長の責任

名古屋地裁岡崎支部H30.6.29      
 
<事案>
Xは、Yの設置及び管理する小学校の児童であったが、本件小学校内において、本件小学校の担当教諭であるEから強制わいせつ行為を受けた。 
Eは、前任校において、同校の女子生徒から、性的な接触を受けた旨の申立てをされ(「前件問題」)、休職していた
⇒前件問題が把握されていたにもかかわらず、適切な指導監督等が行われてなかった⇒
本件小学校の校長にはEに対する適切な指導監督を怠った過失又はXへの安全配慮義務違反があり、
Yの教育委員会の教育長(「本件教育長」)には本件小学校の校長に対する指導監督等を怠った過失又はXへの安全配慮義務違反がある
⇒Yに対し、選択的に、国賠法1条1項又は債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、Xが被った精神的苦痛について慰謝料600万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。
 
<争点>
本件教育長の過失又は義務違反の成否及び本件小学校の校長の過失又は義務違反の成否
 
<判断>
本件教育長及び本件小学校の校長に過失及び義務違反があるといえるためには、具体的状況下において、Eが児童に対して性的な行為に及ぶおそれがあることを具体的に予見することができたといえる必要。 

本件教育長長の過失及び義務違反:
①Yの教育委員会が、Eの前件問題について、Eが女子生徒と二人きりの状態で性的な意味をもつ行為に及んだことを認定できる状況であった
②前件問題後にEの問題性が解消されたと認めることはできない

本件教育長が代表するYの教育委員会は、Eが本件小学校に赴任する際に、Eが児童に対して性的な行為に及ぶおそれがあることを具体的に予見することができた

本件教育長には、Eが本件小学校に赴任する際に、本件小学校の校長に対して指導する義務を怠った過失及び安全配慮義務違反がある。

本件小学校の校長の過失及び義務違反:
①Eが本件小学校において女子児童との身体接触を行った旨の報告を複数回受けていたが、いずれも直ちに性的な身体的接触とはいえない態様であること、
②ことさら児童と二人きりになって行われたものではないこと、
③Eの前件問題について知らされていなかったこと

同校長は、本件わいせつ行為前に、Eが児童に対して性的な行為に及ぶおそれがあることを具体的に予見することができたとはいえない
⇒同校長の過失及び安全配慮義務を否定。
 
<解説>
いじめ等の学校事故に関する訴訟実務のいては、不作為の過失又は義務違反の成否が問題になった場合、過失又は義務違反があるというためには、具体的状況下において事故が発生する危険性を具体的に予見することが通常可能である必要があると解するのが一般的な傾向。 
Xの精神的苦痛の損害額が200万円とみとめられたうえで、担任教諭がXに対して本件わいせつ行為の示談金として300万円を支払ったことから、XのYに対する損害賠償請求権が弁済によって消滅⇒請求は棄却。

判例時報2399

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2019年6月 5日 (水)

Yのシステム開発・運用を行っていたAの業務委託先の従業員が個人情報を漏えい⇒安全管理措置についての義務のレベルが問題となった事案

千葉地裁H30.6.20      
 
<事案>
X(選定当事者)が通信教育等を目的とする会社であるYに対し、
Yのシステムの開発及び運用を行っていた会社であるAの業務委託先の従業員ZがX及び選定者ら(Xら)に係る個人情報を漏えいしたこと(本件事故)
Yには、Aの情報セキュリティシステムの確認等を行う義務があったにもかかわらず、これらを怠り、本件事故を発生させたこと
が不法行為に当たる
不法行為(①については民法715条、②については同法709条)に基づき、Xらに対する慰謝料等の支払を求めた事案。 
 
<判断>
MTPスマートフォンへのデータの書き出しを防止するには、従来のスマートフォンとは異なる対策を講じる必要があるということは、本件事故当時、一般的には認識されていなかった。 

Yは、Aにおいて、正規のアクセス権限を有していた者が、その所有するスマートフォンをクライアントパソコンにUSBケーブルで接続することによりクライアントパソコンからスマートフォンにデータを転送する方法によって、個人情報を不正に取得することを予見することはできなかった。
but
Aにおいて、正規のアクセス権限を有していた者が、本件データベースから個人情報を大量に取得し、それを何らかの方法で外部へ持ち出し、漏えいする可能性があること自体については予見可能であった。

●Aにおいてクライアントパソコンと本件データベースとの間の通信がアラートシステムの対象とされていなかったことが結果回避義務違反に当たるとの主張に対し: 

個人情報保護法についての経済産業分野を対象とするガイドライン(「甲ガイドライン」)の示す措置が本件事故当時に一般的な企業に求められていた水準となり得る
but
Yは、甲ガイドラインの規定に照らし、個人データを取り扱う情報システムの監視を行う義務を負うにとどまり、かかる監視のため、具体的にいかなる措置を採るかについては、Yの合理的裁量に委ねられている

①アラートシステムを採用している企業が少数
②本件事故後に改訂された甲ガイドラインも、アラートシステムを講じることが望ましいとは規定していない

本件データベースをアラートシステムの対象としていなかったことは裁量権の逸脱濫用に当たらない

●MTPスマートフォンが本件書き出し制御システムの対象外となっていたことについて:
Yは、甲ガイドラインの規定に照らし、個人データへのアクセスを制御する義務を負うにとどまり、その具体的な措置の内容はYの合理的な裁量に委ねられている

①本件事故当時、書き出し制御システムを採用してない企業が過半
②MTPスマートフォンへのデータの書き出しを防止するには、従来のスマートフォンとは異なる対策を講じる必要があるということが、一般的に認識されていなかった
③本件事故後に改訂された甲ガイドラインも、書き出し制御システムについて、特定の業務上の用途にしか使用されない端末に限定して、講じることが「望ましい」事項として規定しているにすぎない

YがMTPスマートフォンを対象とする書き出し制御システムを採用していなかったことは裁量権の逸脱濫用に当たらない
 
結論において、Yの結果回避義務違反を否定
 
<解説>
ソフト開発は日進月歩⇒個人データの安全管理措置がある時点では有効に機能していたとしても、その後の新たない技術等の開発によって容易に機能しなくなることについては、予見可能性がないとはいえない。
but
それまでに想定されていなかった新たに開発されが技術や態様によって情報漏えいが行われたという結果について直ちに個人情報取扱事業者に過失があったとすることも個人情報取扱事業者に無理を強いることになる。

個人情報取扱い事業者が個人情報の漏えい等の結果を回避するためにどこまでの安全管理措置を講じる義務を負うかという点については、
その時点におけるソフト等の開発の程度、個人情報の不正取得をした者の立場や不正取得の態様等から想定される一定の水準がある

本判決:
そうした基準事故時における通常の企業に要求された一般的水準に求め、
甲ガイドラインに定められた具体的な指針や個人データを取り扱う情報システムの監視を実践するために講じることが望まれる例示された手法
新たな情報漏えいを防止することができる安全管理措置を採用している企業がどの程度あったのかという事情を考慮し、
どのような安全管理措置を選択するかについては当該企業の裁量を認め、
そのうえで、当該企業の選択した安全管理措置が通常の企業に要求された一般的水準に達していたと認められる場合には、裁量権の逸脱、濫用には当たらず、結果回避義務には違反しないとの判断を行った。

東京地裁H30.6.20:
MTPスマートフォンをパソコンのUSBポートに接続することにより個人情報を不正に取得される可能性を認識し得た⇒本件事故の予見可能性を認めた上で、MTPスマートフォンに対する書き出し制御システムに対応したセキュリティソフトウェアへの変更を指示しなかったことが過失に当たると判断。

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2019年6月 4日 (火)

債務不存在確認の訴えに対する当該債務の履行を求める反訴と確認の利益

東京地裁H30.1.19      
 
<事案>
Xが、Yに対し、X運転の普通乗用自動車がY運転の普通自動二輪車に追突した事故(「本件事故」)によりYに生じた損害について、損害賠償義務が発生したことを自認した上で、既払であり、時効消滅しているとして、その債務が存在しないことを債務不存在確認を求める訴え

Yは、本件事故による傷害(脳脊髄液減少症)については治療係属中であって、損害額を確定することはできないと主張して争うとともに、
本件事故による損害賠償の一部請求として5495万1116円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める反訴請求を提起。 
 
<判断>
診療録、検査結果みて、本件事故に近接した時期に脳脊髄液の漏出ないし低髄液圧に至ったことをうかがわせるに足りるものはない⇒Yが脳脊髄液減少症に罹患したことを否定。
症状固定時期を平成17年3月3日、Yの被った損害を108万円余と認定し、Yには既に166万円余が支払われている⇒Yの反訴請求には理由がない。
Xの本訴請求については、Yの反訴請求にかかる債務不存在確認を求める部分については確認の利益を欠く⇒訴えを却下。
その余の部分については理由がある⇒債務不存在確認を認める。
 
<解説>
債務不存在確認請求の本訴に対し、給付請求の反訴請求が提起⇒本訴請求は確認の利益がなくなる。(最高裁H16.3.25)

本判決は、残部についての損害賠償請求については依然として確認の利益があるものとして、その部分についてはXの請求を認容。
Yが今後残部について損害賠償請求した場合、前訴判決の既判力は生じない可能性が高い(最高裁昭和37.8.10)が、
このような場合、最高裁H10.6.12が、明示的な一部請求であっても、その審理は債権額全額の存否にわたる以上、前訴で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されないとしているのが参考になる。 

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