児童自立支援施設に入所中の少年についての強制的措置許可申請が許可された事案
東京家裁H30.4.24
<事案>
児福法27条1項3号に基づき児童自立支援施設に入所中である少年について、強制的措置許可申請がなされ、それが許可された事案。
<解説>
児童自立支援施設は、不良行為をなし又はなすおそれのある児童及び環境上の理由により生活指導等を要する児童につき、個々に必要な指導を行い、その自立を支援すること等を目的とした児童福祉施設(児童福祉法44条、7条1項)
⇒
そこでの処遇は、任意・開放的に行われ、児童への強制力の行使はできないのが原則。
but
児童によっては、任意・開放的な処遇方法では児童自立支援の目的を達することができず、その行動の自由を制限・剥奪する強制的措置を必要とする場合も考えられる。
そのような場合は、児童相談所長等は、事件を家庭裁判所に送致しなければならなず(少年法6条の7第2項、児福法27条の3)、家庭裁判所は、期限を付して、少年に対してとるべき措置を指示して、事件を児童相談所長等に送致することができる(少年法18条2項)
~
この手続の法的性質は、
事件の支配・処理を家庭裁判所に移す意味を持つ通常の「送致」とは異なり、強制的措置の許可の申請(最高裁昭和40.6.21)
<判断>
①少年が粗暴行為や無断外出等を繰り返すことが強く懸念される状況に至っている
②それは、少年の資質や特性等に起因しており、少年の自立制御が困難な類のもの
③少年の母が少年の不安定さに対応しきれない様子をみせている
④少年の観護措置中の行動の様子
⇒
少年が粗暴行為や無断外出を繰り返すおそれが十分に高く、そうなった場合の少年の心情安定や安全確保のために強制措置が必要。
強制的措置をとることができる日数:
問題行動のおそれの高さ⇒向こう1年6か月の間に90日間の強制的措置を認めることはやむを得ない。
<解説>
●上記①について:
少年が従前と同様に感情的な粗暴行為や無断外出等を繰り返す懸念があることを、強制的措置許可の根拠の中心としている。
粗暴行為や無断外出のおそれがある少年には、強制措置が必要となり得る。
●上記②について:
社会調査の結果を踏まえ、前記問題行動を繰り返す原因を明らかにしている。
強制的措置の許可の申請の性質を持つ本手続において、観護措置をとることができるか?
認める見解が一般
←
①本手続が少年保護事件に準じて取り扱われるものであること
②少年法17条1項の文理
本件でも、観護措置がとられた。
●前記②③
⇒少年の粗暴故意や無断外出に対応するための手段として強制的措置が真にやむを得ない。
●問題行動を起こした少年に対する強制的措置の期間が、原則として、1回につき3週間以内とされている。
判例時報2397
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