長期無断外泊による遵守事項違反を理由とする更生保護法67受2項に基づく施設送致申請⇒第一種少年院送致とした事案
大阪家裁堺支部
H30.5.10
<事案>
更生保護法67条2項に基づく施設送致申請につき、家庭裁判所が、保護観察の継続によっては本人の改善及び更生を図ることができないかどうかを見極めるため本人を試験観察(身柄付き補導委託)に付した上、試験観察中の行状も考慮すると保護観察の継続によっては改善更生を図ることができない
⇒前記申請を認容し、本人を第一種少年院に送致する旨の決定。
<解説>
施設送致申請:
家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年(本人)が、
①保護観察所長から遵守事項を遵守するよう警告を発せられたにもかかわらず、なお遵守事項を遵守せず、
②その程度が重いときに、
保護観察所長が、家庭裁判所に対し、本人を施設に送致する決定をするよう求める申請(更生法67条2項)。
この申請を受けた家庭裁判所が少年法26条の4第1項により施設送致決定をするには、
前記①②が認められることに加え、
③保護観察の処分によっては本人の改善及び更生を図ることができないと認められることが必要。
<決定>
遵守事項違反の内容は犯罪行為ではないものの、遵守事項違反が警告を受けてから間もない時期であることや、遵守事項違反の理由が友人と遊びたいなどとの安易な理由であるこ、遵守事項違反が反復・継続されていること、無断外泊等が継続していた時期に無免許運転をしていること等の事情⇒遵守事項違反の程度が重い(前記②)。
試験観察中の少年の行状も踏まえると少年の問題性は根深く、保護者の監護能力にも多くは期待できない⇒保護観察によっては本人の改善更生を図ることができない(前記③)。
⇒
第一種少年院送致の決定
<解説>
本件では、終局決定に至る前に、「社会内処遇で改善更生を図ることができかを見定めるため」として、試験観察決定(身柄付き補導委託。少年法25条)がなされており、前記③の要件の判断のために試験観察決定が活用されている。
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①本人に無断外泊等の継続は見られるものの際立った犯罪行為まではなかった
②観護措置中の本人の反省状況等も踏まえ、慎重な判断を行う
判例時報2397
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