地方議会の議員に対する出席停止処分が司法審査の対象となる場合
仙台高裁H30.8.29
<事案>
Y(宮城県岩沼市)の市議会が、同市議会議員であるXの議会運営委員会における発言を理由として、23日間の出席停止処分
⇒Xが、本件処分の違憲、違法を主張して、Yに対し、その取消しを求めるとともに、地自法203条及びYの条例に基づき、本件処分によって減額された議員報酬及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。
<規定>
憲法 第93条〔地方公共団体の機関とその直接選挙〕
地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
<判断>
①地方議会は、憲法93条1項によりその設置が定められるなど自律的な法規範をもつ団体⇒そこにおける法律上の係争については、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、その自主性、自律的な解決に委ねるのを適当とし、裁判所の司法判断の対象とはならない。(最高裁昭和35.10.19)
②出席停止は、議会への出席を一定期間停止されるだけであって、議員としての活動そのものが制限されたり身分を奪われたりするものではない⇒原則として、その適法性は一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる。
but
・・・これを担う議員の活動を実行あるものとするため、地自法は、地方公共団体はその議会の議員に対して議員報酬を支給しなければならないこととしている
⇒
議員は、少なくとも、議会の違法な手続によっては減額されることのない報酬請求権を有しているというべきであって、出席停止といえども、それにより議員報酬の減額につながるような場合には、その懲罰の適否の問題は、憲法及び法律が想定する一般市民法秩序と直接の関係を有するものとして裁判所の司法審査の対象となる。
本件条例によって、Y市議会議員の報酬は月額36万3000円とされ、出席停止の懲罰を受けた議員に係る議員報酬は、その出席停止の日数分に相当する額が減額
⇒裁判所の司法審査の対象となる。
<解説>
判例:
地方議会の議員に対する懲罰決議のうち、除名は議員の身分の喪失に関する重大事項であるため司法審査の対象となる(最高裁昭和35.3.9)
but
出席停止は内部規律の問題として自律的措置に委ねるべきであって司法審査の対象外(最高裁昭和35.10.19)
本判決:
原則として、出席停止の適法性は一般市民秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる
but
出席停止が議員報酬の減額につながるような場合には、その懲罰の適否の問題は、一般市民法秩序と直接の関係を有するものとして裁判所の司法審査の対象となる
⇒議員報酬の減額につながった本件処分の適法性は司法審査の対象となる。
判例時報2395
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