少年を第一種少年院に送致した決定が相当とされた事案。
東京高裁H29.12.21
<事案>
少年が、元同級生の被害者を脅迫して現金合計2万1500円を脅し取ったという恐喝保護事件⇒第一種少年院送致
<原決定>
①本件非行自体から少年の共感性の乏しさ、自己中心性が指摘できる
②その問題性は少年の成育歴や家庭環境に根差す根深いもの
③本件非行に至るまでの少年の家庭内での行状等
⇒これまでに家庭内にとどまっていた少年の問題性が家庭外に発現したもので、強力な指導が必要。
④少年の保護環境について、両親の教育力や祖父母の監護に期待することもできない
⇒
少年の更生のためには、少年を第一種少年院に送致することが相当。
<主張>
①本件の被害金額は少額であり、示談が成立
②少年の問題性が発現したのは本件非行だけであり、矯正教育を要するほど根深いものかどうか慎重に判断する必要
③両親は、現に弟を監護養育している祖父母のもとで少年を生活させることを考えており、その監護養育には十分期待できる
④少年には保護処分歴がなく、ひとまず社会内での更生が可能かどうか見極めるべき
<判断>
①について:
恐喝できそうな相手として被害者に目をつけ、被害者がやくざである先輩の財布をなくしたかのような状況を偽装作出し、その恐怖心をあおって執拗に数十万円もの金員を要求したという経緯等
⇒被害者の心情をまったく無視した支配的な態度が顕著で、本件非行自体から少年の共感性の乏しさ、自己中心性の大きさが見て取れる。
被害金額は少額とはいえない。
本件非行の悪質さ⇒示談成立の点を処遇決定に際して考慮するにも限界がある。
②について:
父親の暴力を避けるために母親が少年を連れて自宅を離れることが多かったという家庭環境の中で、少年が鬱憤の解消方法として暴力的な姿勢を身に付けるなどし、家庭内で支配的に振る舞うことにより分相応な大金を得る経験を重ねた上、支配的な態度を外部に向けるようになり、本件非行に至った
~
少年の問題性は成育歴や家庭環境に根差した根深いもの
③について:
不登校に陥って祖父母のもとで生活するようになったという弟の監護養育状況と少年の更生に必要な看護体勢を同列に扱うことはできない。
④について:
少年に保護処分歴がないことを踏まえても、
前記の事情
⇒第一種少年院に送致した原決定の処分は相当。
判例時報2395
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