児童自立支援施設で、(追加的)強制的措置許可申請が許可されなかった事案
東京家裁H30.2.2
<事案>
ぐ犯による保護処分として児童自立支援施設に送致されるとともに、1年半の間に通算30日を限度として強制措置をとることができる旨の決定を受けた少年について、その強制措置をとり得る大枠の期間(「大枠期間」)内に再度の強制的措置許可申請(「再申請」)がなされたが、それが不許可となった事案。
<解説>
●児童自立支援施設は、不良行為をなし又はなすおそれのある児童及び環境上の理由により生活指導等を要する児童につき、個々に必要な指導を行い、その自立を支援すること等を目的とした児童福祉施設(児福法44条、7条1項)⇒そこでの処遇は、任意・開放的に行われ、児童への強制力の行使はできないのが原則。
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児童に逃走癖が強かったり、児童が心理的・行動的に不安定で自傷他害のおそれがあったりして、任意・開放的な処遇方法では児童自立支援の目的を達することがでいないときには、児童の行動の自由を制限・剥奪する強制的措置を必要とする場合も考えられる。
そのような場合には、児童相談所長等は、事件を家裁に送致しなければならなず(少年法6条の7第2項、児福法27条の3)、家裁は、期限を付して、少年に対してとるべき措置を指示して、事件を児童相談所長等に送致することができる(少年法18条2項)。
~
事件の支配・処理を家庭裁判所に移す意味を持つ通常の「送致」とは異なり、強制的措置の許可の申請(最高裁昭和40.6.21)
●大枠期間内の再申請の可否
①強制的措置の必要性と程度の予測は不確定な要素が多く困難であり、変転する少年の処遇の過程で適時適確に再申請をして福祉的措置を継続することが少年の福祉に合致する場合もある
②再申請を認めても、許可の必要性は裁判所が判断⇒濫用的な強制的措置が抑止される制度的保障がある
③同効力のある事案とない事案を区別することが困難
⇒
前件決定の主文中大枠期間を設定した部分に同期間内の再申請禁止の効力を認めない見解が一般的。
実務:
大枠期間内の再申請自体は許容した上で、これを許可する必要があるか否かについては、濫用的な強制的措置が抑止されるように慎重に判断するとの姿勢。
<経緯>
少年には、新入時の検査や動機付けを目的とした強制的措置が14日間にわたってとられており、少年に強制的措置をとることができる日数は、専らそのために減ることとなった。
強制的措置が実施されている国立の児童自立支援施設においては、新入児童に対し、このような趣旨での強制的措置を、ほぼ一律にとる運用がなされている。
<判断>
本件再申請に対し、不許可。
←
①施設における少年への処遇の状況や今後の処置の見通しも勘案すると、少年の在所中に強制的措置が必要となる可能性は低い。
②仮に今後少年に強制的措置が必要になっても、まずは既に許可された期間(残日数の16日間)内の措置で対処し、それでは不十分と見込まれる具体的状況が生じてから再申請する余地もある。
判例時報2390
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