固定資産課税台帳に登録された土地の価格と当該土地に接する街路の性質についての市長の判定の意味
最高裁H30.7.17
<事案>
京都市所在の四筆の土地につき、これに接する街路が建基法42条1項3号所定の道路に該当することを前提として決定された平成21年度の価格の適否が争われた事案。
建基法43条1項本文は、建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないとする接道義務を定めており、同法42条が道路の定義を定めているところ、
本件街路が3号道路に該当するためには、
本件街路が所在する区域について同法第3章の規定が適用されるに至った昭和25年11月23日時点で、本件街路が幅員4m以上の道として存在したことが必要。
京都市では、ある道が建基法上の道路に該当するか否かについて判定の依頼があったときは、これを調査した上で、市長が判定をする扱い。
京都市長は、平成18年11月8日、本件街路が3号道路に該当する旨の判定。
<主張>
Y(京都市):
本件街路が3号道路の要件を客観的に満たしている。
本件道路判定は行政処分に当たり、これについて取消訴訟を提起せずにその適否を争うことはできない。
<判断>
道路判定は行政処分に当たらない。
建築確認に際し、建築主事等が道路判定と異なる判断をすることは妨げられず、本件街路が3号道路となる要件を客観的に満たさない場合には、本件道路判定がされていても、建築主事等は、本件各土地が3号道路に接していることを前提とした建築確認をすることはできない。
⇒原判決を破棄し、本件を原審に差し戻し。
<解説>
●評価基準における街路の42条道路該当性の位置付け
評価基準の定める市街地宅地評価法においては、土地の接する街路が42条道路に該当するかどうかなどについて考慮すべきものとする明示的な定めはない。
but
①接道義務を満たさない土地については、原則として同土地上に建築物を建築することにつき建築確認を受けることができず、これを受けるためには、接道義務を満たすような措置を講じたり、特定行政庁の許可を受けたりする必要。
②このような利用上の制約があることが、当該土地の減価要因とすることは明らか。
本判決:
①評価基準が、市街地宅地評価法にいて、その他の街路の路線価を付設するに当たり「街路の状況」等について総合的に考慮すべきものとしている
②画地計算法として無道路地等に関する評点算出法を定めている
⇒
評価基準が土地の価額の算出に当たり当該土地が42条道路に接しているかどうかなどについて考慮すべきものとしている。
●道路判定の処分性
道路判定が行政処分⇒道路判定が取り消され、あるいはこれが当然に無効でない限り、その効果を争うことができず、また、固定資産評価や建築確認に際しては、道路判定の判断内容を前提としてこれを行うべきこととなる。
but
①建基法42条1項3号は、同号所定の要件を満たす道について、同号の規定により直接に同法上の道路とする趣旨であって、ほかに特定行政庁の指定処分等何らの手続を要しない
②道路判定は、同号所定の要件を満たす道について新たに同法上の道路とする効果を有するものではない⇒これによって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を画定するものとはいえない
③建基法やその関連法令等に3号道路の「判定」について定めた規定はなく、市町村長等がその判定をする権限を有するとの法令上の根拠もない
⇒
道路判定は行政処分に当たらない
判例時報2391
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