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2019年3月 3日 (日)

心神喪失等の状態で重大な他害行為⇒医療及び観察等に関する法律による処遇と憲法14条、22条1項、31条(違反なし)

最高裁H29.12.18      
 
<事案>
統合失調症及び精神遅滞に罹患している対象者が、妄想状態の強い影響下で傷害事件⇒検察官から心神耗弱であるとして不起訴処分とされた上、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による入院等の決定を求める申立て⇒入院決定⇒抗告・棄却⇒再抗告
 
<争点>
医療観察法による処遇制度の合憲性 
 
<規定>
憲法 第14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
 
憲法 第22条
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
 
<判断・解説> 
●医療観察法の目的
①心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者は、①精神障害を有していることに加えて、②重大な他害行為を犯したという二重のハンディキャップを背負っており、このような者が有する精神障害は、一般的に手厚い専門的な医療の必要性が高い
再び精神障害のため重大な他害行為が行われることになれば、本人の社会復帰の大きな障害となることは明らか

そのような事態にならないよう必要な医療を確保することが、本人の円滑な社会復帰のために極めて重要⇒医療観察法による処遇制度
本決定:医療観察法の目的(1条1項)は正当
 
●医療観察法による処遇制度 
対象者に対する処遇として、
①医療を受けさせるために入院をさせる処遇(「入院処遇」)と
②入院によらない医療を受けさせる処遇(「通院処遇」)
裁判所が入院処遇又は通院処遇の決定をするための要件を定め(42条1項1号、2号)、入院処遇及び通院処遇に関する諸規定。

本決定:入院処遇又は通院処遇に関する諸規定を検討⇒
医療観察法の目的を達成するため必要かつ合理的なものであり、かつ、
処遇の要件も、その目的に即した合理的で相当なもの
と認められる。
 
●医療観察法の審判手続 
職権探知による審判手続を採用し、審判期日も非公開。
医療観察法の処分は、本来的な司法の分野ではなく、むしろ行政処分的な性格
その判断の中立公正性を保つため、裁判所の裁判によるこいととされた
~特殊な非訟手続
ということができる。

付添人制度を設け、付添人に意見陳述権や資料提出権、審判への出席権、記録等の閲覧権を認め、
入院又は通院に係る審判については、弁護士である付添人を必ず付けることとし、
審判期日の開催を原則として必要とし、
審判期日では、対象者に対し、供述を強いられることはないことを説明した上で、
対象者及び付添人から意見を聴かなければならない。

対象者及び付添人に抗告権、退院の許可又は処遇終了の申立権を認める規定を置く。

本決定:対象者に必要な医療を迅速に実施するとともに、対象者のプライバシーを確保し、円滑な社会復帰を図るため、適正かつ合理的な手続が設けられていると説示。
 
●合憲性判断 
憲法 第31条
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法31条については、人身の自由について基本原則を定めたものであり、手続要件と実体要件の双方について、適正な内容が法定されていることを要求

この規定は、本来刑罰を科する際の刑事手続に関する規定であるが、その保障は刑事手続以外の行政手続についても準用又は適用されるとする考え方が一般的。

判例:行政手続にも憲法31条による保障が及ぶ余地があることを認めている。(最高裁H4.7.1)
医療観察法による入通院処遇制度は、対象者の意思と無関係に一方的にその行動の自由等を制限・干渉する制度⇒憲法31条による法定手続保障の趣旨をできるだけ及ぼしていくことが相当
but
入通院処遇制度の特質に応じて必要とされる保障内容の修正・変容は、当然許容されるべき。

本決定:
医療観察法の目的の正当性、同法の規定する処遇及びその要件の必要性、合理性、相当性、手続保障の内容等
医療観察法による処遇制度は、憲法14条、22条1項に違反するものではなく、憲法31条の法意に反するものということもできない。

判例時報2390

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