再審決定⇒特別抗告⇒刑訴法435条6号の解釈適用を誤った違法がある
最高裁H29.12.25
<事案>
請求人が、共犯者A及びBと共謀の上、滞納処分の執行を免れるため、Aが実質経営する風俗店の営業をBに譲渡したかのように装って財産を隠ぺいしたという国税徴収法違反被告事件についての再審請求事件
Aの陳述書(請求人が財産の隠ぺいに関与していたとの確定審の公判供述は虚偽であり、真実は、請求人は財産の隠ぺいには関与していないとの内容(「Aの新供述」))等の新証拠11点を提出⇒これらが「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」(刑訴法435条6号)に当たるとして、再審を請求。
<原々審>
再審請求を棄却
⇒即時抗告
<原審>
事実の取調べとしてAの証人尋問を実施し、
Aの新供述等の新証拠を踏まえると、Aの公判供述及びBの捜査段階供述の信用性に大きな疑問が生じ、請求人の共謀を認定することに合理的な疑いが残る。⇒Aの新供述等の新証拠は、刑訴法435条6号所定の請求人に対し無罪を言い渡すべき新規かつ明白な証拠に当たる⇒原々決定を取り消し、再審を開始する旨の決定。
⇒検察官が特別抗告
<判断>
確定審における審理経緯に照らすと、Aの新供述が請求人に対し無罪を言い渡すべき明らかな証拠といえるかどうかを判断するに当たっては、供述を変更するに至った経緯・過程を含め、その内容が、Aの公判供述の信用性を動揺させるに足りる事情を供述するものであるかについて、
原審で行われた証人尋問におけるAの供述も踏まえた上で、慎重に吟味する必要がある。
Aの新供述につき具体的に検討を加え、刑訴法435条6号該当性を認めた原決定には、同号の解釈適用を誤った違法がある。
<解説>
確定審における証人の供述は、証人尋問や当事者の主張を踏まえて、その信用性についての検討・判断がなされてきている。
⇒そのような証人の供述と異なる内容の供述が新証拠として提出された場合、それが刑訴法435条6号の新証拠に当たるかについては、確定審で虚偽供述をした理由、供述を変更するに至った経緯を含め、供述内容の合理性、真摯性等について慎重に判断する必要がある。
再審請求審では、新供述が、陳述書や供述書など書面の形式で提供される⇒当該供述者に対する証人尋問(事実取調べ)の実施を検討すべき場合もある。
判例時報2390
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