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2019年3月29日 (金)

刑の一部執行猶予についての判断

東京高裁
①H29.7.18
②H29.12.20

 

■①事件
覚せい剤の自己使用と単純所持の事案。
被告人は、累犯関係にある前科3犯を有し、最終刑の執行終了後わずか8か月足らずで本件各犯行

<原審>
刑の一部執行猶予の可否について何ら説示することなく、被告人を懲役2年4月の全部実刑に。

 

<判断>
被告人を懲役2年4月に処した原判決の量刑自体が重すぎて不当であるとはいえない
but
①被告人が、うつ病と診断され、障害等級1級の認定を受けており、統合失調症との診断も受けている
②本件覚せい剤の使用についえtも精神症状の影響がうかがわれる

被告人の覚せい剤への依存を改善し、再犯を防止するためには、その生活全般について必要な支援を受けさせて、生活と精神症状を安定させる必要がある。
刑事施設に引き続き、社会内において、更生保護機関の支援と監督を受けながら、覚せい剤への依存を改善するための処遇を行うことが必要不可欠であると認められる。

刑の一部の執行を猶予することが相当であって、原判決の量刑は、刑の一部の執行を猶予しなかった点で裁量を誤った⇒量刑不当で原判決を破棄。

■②事件
覚せい剤の自己使用と共同所持の事案。
覚せい剤取締法違反等の罪て執行猶予付きの有罪判決を受けてから約2か月で本件各犯行

<原審>
①被告人の姉の監護能力は十分なものといえない
②他に被告人の監護者として適切な者も見当たらない
③被告人のこれまでの生活状況等

被告人に対して実効性のある社会内処遇が適切に実施できるといえるのか疑問⇒
刑の一部執行猶予を付することなく、懲役1年4月の全部実刑

<判断>
懲役1年4月に処したのは相当
but
被告人の姉の監督能力が低いとはいえず、一定程度期待することができる今後の被告人の生活状況に関して特に更生を妨げるような事情は認められない被告人の更生意欲が乏しいともいえない ④被告人の日本語能力を前提にしても実施できる範囲で教育課程を実施することは可能と考えられ、簡易薬物検出検査と併せ同プログラムを受ける機会を与えることが、被告人の再犯防止に必要かつ相当

刑の一部執行猶予の必要性及び相当性の評価を誤った原判決は破棄を免れない

<解説>
刑の一部執行猶予の制度:
「実刑の特別予防の観点からのヴァリエーション」であり、
その適用の可否は、
懲役または禁錮3年以下の実刑相当性を前提に、
再犯防止のための必要性・相当性の要件について、
再犯のおそれ
社会内処遇の有用性
社会内処遇の実効性 という3つのステップによって判断。

 

薬物法による刑の一部執行猶予は、保護観察を付すことが必要的(薬物法4条1項)。

 

刑法による刑の一部執行猶予は、保護観察は任意的(刑法27条の3第1項)が、一部執行猶予の判断の第2ステップにおいて想定した処遇の多くが保護観察を実施することを前提とするものと考えられる⇒保護観察を付することとなることが多い。
but
①重度の精神障碍者又は重度の知的障害者
②日本語を理解できない者などは、
保護観察の実効性という観点から、保護観察所における専門的処遇プログラムから除外されている。

 

判例時報2392

 

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