大阪の外国人を対象とする準学校法人への補助金の不交付の適法性
大阪高裁H30.3.20
<事案>
控訴人(一審原告)は、学教法134条1項に定める外国人を対象とした各種学校を設置運営する準学校法人。
被控訴人大阪府に対して、本件23年度大阪府補助金8080万円の交付申請をし、被控訴人大阪市に対して、本件23年度大阪市補助金2650万円の交付申請⇒大阪府知事及び大阪市長によりいずれも不交付とする旨の決定。
控訴人が、本件各不交付がいずれも違法であるなどとして、
(1)被控訴人大阪府に対し、
一次的に本件大阪府不交付の取消しと本件23年度大阪府補助金の交付決定の義務付けを求め
二次的に控訴人の本件大阪府交付申請に対する被控訴人大阪府による承諾の意思表示を求め、
三次的に大阪府要綱に基づき控訴人が本件23年度大阪府補助金の交付を受けられる地位にあることの確認を求め、
四次的に本件大阪府不交付により控訴人に本件23年度大阪府補助金相当額8080万円の損害が生じたとして国賠法1条1項に基づく損害賠償請求として同額及び遅延損害金の支払を求めるとともに、
その余の国家賠償請求として、風評被害等の損害330万円(弁護士費用30万円を含む。)とこれに対する遅延損害金並びに本件23年度大阪府補助金8080万円の支払の遅延により生じた損害金の支払を求め
(2)被控訴人大阪市に対し、
一次的に本件大阪市不交付の取消しと本件23年度大阪市補助金の交付決定の義務付けを求め
二次的に控訴人の本件大阪市交付申請に対する被控訴人大阪市による承諾の意思表示を求め、
三次的に大阪市要綱に基づき控訴人が本件23年度大阪市補助金の交付を受けられる地位にあることの確認を求め、
四次的に本件大阪市不交付により控訴人に本件23年度大阪市補助金相当額2650万円の損害が生じたとして国賠法1条1項に基づく損害賠償請求として同額及び遅延損害金の支払を求めるとともに、
その余の国家賠償請求として、風評被害等の損害330万円(弁護士費用30万円を含む。)とこれに対する遅延損害金並びに本件23年度大阪市補助金2650万円の支払の遅延により生じた損害金の支払を求めた。
<争点>
本案前について:
本件大阪府不交付及び大阪市不交付の各処分性と本件大阪市確認請求に係る確認の利益
本案について:
大阪府・大阪市各要綱交付対象要件の充足性と手続的違法、被控訴人らの承諾義務、国賠法上の違法及び故意過失と損害額など。
<判断>
本件各不交付及び本件各補助金の交付決定の処分性をいずれも否定。
本件大阪市確認請求に係る確認の利益はこれを認めた。
本案の争点である被控訴人大阪府が、大阪府要綱において定める補助金の交付対象要件について改正し、各種学校を設置する準学校法人である控訴人が「特定の政治団体が主催する行事に、学校の教育活動として参加していないこと」(特定の政治団体と一線を画すること)の要件を充足しないことを理由として、前記補助金を不交付としたことは、
いずれも憲法13条、14条、23条、26条、人権A規約2条、13条、人権B規約26条、人種差別撤廃条約、児童権利条約3条、教基法16条1項、14条2項、私立学校法1条に違反するものではなく、
裁量の逸脱・濫用はないし、交付対象要件の適用にも誤りはないと判断
⇒
その余の請求をいずれも棄却すべき。
要は、
①憲法、人権規約、条約等は、本件大阪府補助金の交付を受ける具体的な権利、利益を基礎づけるものではない、
②大阪府要綱に定める本件大阪府補助金の交付の法的性質は贈与であって、被控訴人大阪府は、贈与を受けることができる資格をいかに定めるかについて教育の振興という行政目的の実現のため一定の裁量を有する、
③本件大阪府補助金は、学校法人が設置する外国人学校においては学教法1条(学校の範囲)に準じた教育活動が行われているため、1条校に準じて助成の措置を行う必要があるとの考えから定められた大阪府要領に基づく、
④大阪府要領の改正はこれらの経緯を明確にしたもので、補助金の交付対象要件は、私立学校としての公共性や本件大阪府補助金の経緯等に沿うものとして前記裁量の範囲内にある、
⑤本件大阪府不交付は、前記の要件(特定の政治団体と一線を画すること)に該当しないことを理由とするが、私立学校において一条校に準じた教育活動が行われているというためには、一定程度の政治的中立性が確保されていることが必要であり、大阪府要綱に前記の要件を付加することには相応の合理性がある、
⑥大阪府要綱は、「特定の政治団体」について、公安調査庁が公表する直近の「内外情勢の回顧と展望」において調査等の対象となっている団体(ただし、政治資金規正法3条2項に規定する政党を除く。)と定義しているが、このような団体が主催する行事に学校の教育活動として参加している学校法人に対し、本件大阪府補助金を交付することを許容するか否かは、被控訴人大阪府の裁量に属する⇒このような要件を設けることに裁量の逸脱又は濫用があるとはいえないし、交付対象要件の適用にも誤りはない。
判例時報2390
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