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2019年2月 7日 (木)

東京都建築安全条例32条6号に違反するとされた事案

東京地裁H30.5.24      
 
<事案>
Xらが建築主となって建築する共同住宅(「本件マンション」)の建築計画について、指定確認検査機関であるAが建基法6条1項前段に定める建築確認処分及び同項後段に定める建築計画変更確認処分

Z2(被告参加人)を含む本件マンションの周辺住民らが本件処分の取消しを求めて審査請求

東京都建築審査会(裁決行政庁)は、本件マンションの建築計画には条例違反の違法があるなどとして、前記審査請求を認容し、本件処分を取り消す旨の裁決。

建築主であるXらが、Y(東京都)を相手に、本件裁決の取り消しを求める事案。
 
<争点>
本件マンションの建築計画の東京都建築安全条例(「都条例」)32条6号違反等に関する本件裁決の判断の誤りの有無等。 
 
<判断>
南側道路出入口が「直接知情へ通ずる出入口」(施行令13条1号)に当たるとした上で、
①南側道路出入口が、本件建築物一の南棟2階とほぼ同じ高さに設けられているのに対し、本件駐車場は、南棟1階とほぼ同一水面上にある北棟1階に設けられており、南棟2階とほぼ同一水面上である北棟2階にはゲストルーム等が設けられている
②本件駐車場の床面(スロープが設けられていない部分)と南側道路出入口の床面との高低差は、約2.5メートルであり、これは、本件駐車場の床面から天井面までの高さにほぼ相当するという形状

本件駐車場は、南側道路出入口のある階、すなわち「直接地上へ通ずる出入口のある階」に設けられているとは認められないとして、「避難階」に設けられているとはいえない。

①都条例32条6号の「避難階段」は施行令ににいう「避難階段」と同義であって、施行令123条の定める避難階段の構造を有するものをいうと解するのが相当⇒避難階段A及びBは都条例32条6号所定の避難階段に当たらない。

②都条例32条6号所定の避難階段は、当該「建築物の部分」(都条例31条)に設けられなければならないところ、ある階段が自動車車庫等の部分に設けられているといえるか否かは、当該階段と自動車車庫等の用途に供する部分との位置関係を考慮するのみならず、都条例32条6号等の趣旨をも考慮して判断するのが相当。
本件駐車場は北棟に設けられているのに対し、避難階段Cは東棟に設けられている⇒避難階段Cが、本件駐車場から避難しようとする者のための避難施設であるといえないことは客観的に明らか。
本件駐車場から避難階段Cまで円滑に移動することができないおそれがあり、避難階段Cが本件駐車場との関係で都条例32条6号所定の避難階段に当たると解すると、都条例の規定の趣旨に沿わないものとなる。

避難階段Cについても都条例32条6号所定の避難階段に当たらない。

Xらの請求を棄却。
 
<解説>
本件マンションのように建築物内部に自動車車庫が設けられているマンションは珍しいものではなく、自動車車庫について建基法及び施行令に避難施設に関する定めはないところ、特殊建築物である自動車車庫の規模等に応じ、条例で直通階段の設置等の制限(建基法40条)を附加する例がみられ、
条例の解釈において、建基法や施行令との関係が問題となり得る。 

判例時報2388

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