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2019年1月 3日 (木)

児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」の意義等

最高裁H28.6.21      
 
<事案>
高校の常勤講師の被告人(当時28歳)が、同校生徒の被害児童(当時16歳)に対し、2度にわたり自己を相手に性交させたという児童福祉法違反の事案。 
 
<主張>
弁護人:
①被告人は同児童と交際していた⇒本件各性交は児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」に当たらない
②被告人が同児童に事実上の影響力を及ぼして働きかけていない⇒同号にいう「淫行させる行為」はしていない
③同号の構成要件が不明確であるから、同号は憲法31条に違反する 
 
<判断>
被告人に同号違反の成立を認めた原判決の判断を結論において是認して上告を棄却。 
 
<規定>
児童福祉法 第1条〔児童福祉の理念〕
すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
②すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。

児童福祉法 第34条〔禁止行為〕
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫行をさせる行為

児童福祉法 第60条
第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 
<判断・解説> 
●「淫行」の意義
A:性道徳上非難に値する性交又はこれに準ずべき性交類似行為
vs.
「性道徳」として想起されるところには、かなりの広がりがある上、その判断は、それぞれの人が抱く価値感によって差が生じかねない。

本決定:
児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは、同法の趣旨(同条1条)に照らし、児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当。

①児童福祉法の趣旨に照らし、端的に、「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれ」があるかどうかによって、決せられるべき事柄。
児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあるかどうかは、一般人であれば共通のイメージを抱くことができき、明確な解釈基準になり得る。
 
●「させる行為」の解釈 
本決定:
同号にいう「させる行為」とは、直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいう。

昭和40年判例の、「させる行為」該当性について、
①「事実上の影響力」を児童に及ぼしているか
②児童が淫行をすrことを助長し促進する「行為であるか、
の2つの観点から判断する解釈を踏襲。

「させる行為」に該当するかどうかについては、
行為者と児童の関係、助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯、児童の年齢、その他当該児童の置かれていた具体的状況も総合考慮して判断するのが相当」

「淫行させる行為」が、立法当初の解釈に比べて相当に広範囲なものを含む解釈が定着している中で、本号による重い処罰にふさわしい行為に限定されていなければならないとの要請も充たしつつ、
児童保護の観点からも適切な処罰範囲を画するために、本罪に該当するとされた裁判例の集積を踏まえ、「させる行為」を判断する際の具体的考慮要素を明示して判断方法を明らかにすることにより、
処罰範囲の明確化を図ろうとした。

本決定

「させる行為」に当たるかどうかを評価するに際しては、
当該児童に及んでいる「事実上の影響力」の程度を踏まえた上で、
「させる行為」と評価できるような「助長・促進行為」があるかどうかを、
当該児童が淫行に及んだ具体的状況に照らして個別に検討していくことになる。
 
●本決定:
本件各性交が、被害児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなものを相手とする性交であること、
②被告人と同児童との関係について、被告人が同児童(当時16歳)の通う高等学校の常勤講師であったこと、
被告人の具体的行為として、校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し、ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んだこと

本件においては、協力といえるような助長・促進行為はないものの、高校講師である被告人が被害児童に及ぼした「事実上の影響力」を踏まえれば、本件各性交をした行為が、「児童に淫行をさせる行為」に当たると判断。 

判例時報2384

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